ナタリー PowerPush - 勝手にしやがれ
結成15周年ベストアルバム 武藤&飯島が語る軌跡
「ああ、これでも勝手にしやがれなんだ」
──シングルカット「U-K」にしても、元々はCM音楽として依頼が来たものを、そのお題に対してどうやって返していくかっていう作品でしたしね。そういう瞬発力みたいなものは、長年やってきたバンドならではのチームワークがあってこそできるものだと思いますしね。
武藤 「U-K」を作る時も、CMの制作スタッフがいいって言った15秒枠のフレーズを、レコード会社は「せっかくCMで使われるんだからひとつの曲にしてシングルカットしたい」っていう。でも、俺たちがいいって言ったんじゃなくて、CM制作スタッフがいいって言ったものを、なんで俺たちの作品として出すんだって、最初はスタッフとも相当揉めたんだよね(笑)。最初は腑に落ちないところもありながら作業を始めたんだけど、心を落ち着けて取り組んでいくにつれ、「ああ、これでも勝手にしやがれなんだ」って。じゃあ、俺たちが考え抜いたものじゃなくても、勝手にしやがれっていう何かあるんだなってわかってきたんだよね。そう思ったら、どうイジられてもいいですよ、みたいな寛大さが生まれてきた。
──「U-K」は、バンドのフレキシブルさを再発見させたものでもあったわけですよね。そう思うと2004年からの数年間はある意味激動な感じですよね。
武藤 そこでトライしたのもあるし、トライしたことで評価もいただいて、どんどん仕事もいただけるようになった時期でもあったんで、「U-K」って曲を作ることでそれを寛大に受け入れられるようになって、勝手にしやがれってバンドも成長したなって思いますね。コラボにしたって、結局、相手のアーティストも出方を気にするわけだから、逆に勝手にしやがれが何でも対応できるようにしておかないと、参加したはいいけど相手らしさがなくなっちゃって、いい仕事じゃなかったと思われちゃうのもイヤだし。相手のいいところも活かしながら、でも活かしすぎて勝手にしやがれらしさがなくなってしまうのも怖いっていう。そのバランスとかやり方は、「U-K」を制作する過程があったからこそうまくいくようになったんだなって思いますね。
俺は曲全てに責任を取ってる
──10周年だった2007年には「インスタント・セッション」というライブ会場限定音源を発表して。レーベル移籍する合間の節目の時期に、原点に立ち戻るようなリリースが重なったのも興味深いんですが。
武藤 レーベル移籍の時期っていうのもあるけど、カバーアルバムを発売しながら、映画「たみおのしあわせ」のサントラを作ってた真っ最中だったかな。その制作でスタジオを押さえてたのもあって、スタッフが帰った後に「1時間だけいいですか?」って自分たちの曲もババーッて録っちゃって(笑)。そのデータさえ残しておけば、どうにでもなる!ってね。
──「インスタント・セッション」で一発録音にこだわってたのは、時間がないからだったんですね(笑)。
武藤 そうそう。「終電までに仮ミックスしといて」みたいな話して(笑)。
──その翌年の2008年に、EPICからtearbridge recordsへ移籍して、アルバム「ゼン・サマー・ケイム」と「マイ・ライフ」がリリースされました。
武藤 映画「たみおのしあわせ」の音楽をプロデュースしてできた作品「ゼン・サマー・ケイム」と、オリジナルアルバム「マイ・ライフ」があったんだけど、それは前のレーベルと契約している間に作業に入ってたから。マネージメントと相談して移籍しようって決まったのは、そのアルバムを録音し終わった後だったんですよね。次のレーベルに移籍したときには、映画のサントラとオリジナルアルバムが準備できてた。だから、レーベルが変わったからって、特に何かが変わったわけでもなく。それがウチらしいといえばウチらしいのかもしれないけど。もともとバンドとしてやりたいものがあって、こうやって見せたいってイメージやプランがあって、そこにご協力願えるところに、その都度、自分たちのペースでお願いしてきたっていうことでしかないんですよね。
──メジャーで出すかインディーで出すかっていう意味も、15年前と今では意味合いも違ってきてますよね。
武藤 そうですね。15年前とかもう少し前の時代かな、インディーの捉えられ方とメジャーの捉えられ方って違う時代があって。例えばインディーで出してたものを、メジャーに移ったときにもう一度焼き直して出すようなバンドも多かった。俺は勝手にしやがれを始めるときに、最初からそういうことをしたくなかったんですよね。予算があろうがなかろうが、この曲はこの曲で一生懸命作って、レーベルが変わろうがなんだろうが勝手にしやがれとしては1stはこれ、2ndはこれって歴史として刻めばいいじゃんってね。俺は、曲全てに責任を取ってるから。
収録曲
DISC1
- フィラメント
- 円軌道の外
- ブラック・マリヤ
- ヴァニタス
- 哀しみのクラウン
- U-K
- ブコウスキーの夢
- イズ・ユー・イズ・オア・イズ・ユー・エイント・マイ・ベイビー?
- ハウリング・ウインド(インスタント・セッション/武藤Vo.)
- オーヴェール・ブルー
- エル・ソル
- ロミオ
- 黒い瞳
- マ・ジョリー
- ラスト・ダンス
- ケーキーズのテーマ
- ラグタイム
- ゼン・サマー・ケイム
DISC2
- バーフライズ・ストンプ(+THE ZOOT16)
- ロミオ(+チバユウスケ)
- 撃沈魚雷
- 詩人の血
- U-K-2
- ヴェルモット・フラワーズ(+エゴ・ラッピン)
- グッドバイ・ポーク・パイ・ハット
- ブラック・エメラルド(未発表)
- ペイン(インスタント・セッション)
- チェリー・ザ・ダストマン(+オダギリ ジョー)
- ご・め・ん・だ・ぜ
- U-K-3
- ユード・ビ・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ(+中島美嘉)
- ドライ・ボーン・ブルーズ(インスタント・セッション)
- マスカレード(+THE ZOOT16)
- アーバン・カウボーイ(+オダギリ ジョー)
- スーパーヒーロー
- アシェズ・トゥ・アシェズ(未発表)
LIVE INFORMATION
勝手にしやがれpresents 7 o'clock jump ~15th 勝手誕生祭~
- 2012年7月13日(金)東京都 代官山UNIT
OPEN 18:00 / START 18:30
<出演者>
勝手にしやがれ
ゲスト:SOIL & "PIMP" SESSIONS / OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND
勝手にしやがれ(かってにしやがれ)
武藤昭平(Dr, Vo)、田中和(Tp)、福島忍(Tb)、浦野正樹(B)、田浦健(T.Sax) 、飯島誓(B.Sax) 、斉藤淳一郎(Piano)によるジャズパンクバンド。1997年に結成し、2001年に1stアルバム「WILD ROOM」をリリースする。パンクやスウィングジャズなどの要素を含む独特な音楽性で注目を集め、2004年にはアルバム「フィンセント・ブルー」でメジャーデビューを果たす。2006年には、THE ZOOT 16、EGO-WRAPPIN'、オダギリジョーらとコラボレーションを展開し注目を集めた。結成15周年の2012年1月、約3年ぶりとなるオリジナルフルアルバム「メロディ」とインディーズ時代のベストアルバム「シルバー&ゴールド ~シルバー 1997-2003」をリリース。6月にはメジャーレーベルでの楽曲を集めたベストアルバム「シルバー&ゴールド ~ゴールド 2004-2010」を発売した。