ナタリー PowerPush - 勝手にしやがれ
結成15周年ベストアルバム 武藤&飯島が語る軌跡
温めてきたものをバンドで具現化する
──コラボつながりで言うと、カバーアルバム「レッツ・ゲスト・ロスト」にも収録されていた、中島美嘉さんとの共演曲もありました。
武藤 「You'd Be So Nice to Come Home To」っていう、今でも大好きなジャズスタンダードをカバーしたんだけど、その曲は俺が19とか20歳のときに阿川泰子さんがCMで歌ってたので初めて知ったんだよね。その頃パンクバンドやってたから、ジャズに対してのコンプレックスがあったんだよね。で、当時住んでたところの近所にジャズバーみたいな店があって、そこでヘレン・メリルの「You'd Be So Nice to Come Home To」を流してて、「これ、誰っすか?」って訊いたら、「ヘレン・メリルっていう人がクリフォード・ブラウンと一緒にやってるアルバム(「ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン」)だよ」って教えてくれて、あの青いアルバムジャケットを見せてくれて。「これって普通にレコード屋で売ってますかね?」って訊いたら、「よかったらウチに何枚かあるから売ってあげましょうか?」って言ってくれて、1500円で売ってくれたんだよね。それが俺が初めてモダンジャズで買ったレコードだった。
──思い出の曲ですね。
武藤 それで「You'd Be So Nice to Come Home To」をカッコいいなあってさんざん聴き倒して。でも、あれってドラムがブラシでプレイしてるから、ノリもあるんだけどロックをやってる俺としては、熱くなるものがちょっと違うから、これをドラムをビシバシ叩いて攻めて、歌がこのまま乗っかったらカッコいいよなって、当時から思ってて。その後、勝手にしやがれでカバーアルバムを作ろうって話になったときに、もし女性ボーカルを迎えてできるなら、「You'd Be So~」をやりたいって、そのときのアイデアがあって。勝手にしやがれでは、まだ1回もやってなかったし、今こそ、パンチの効いたドラムでやったらカッコいいから!って思って。
──勝手にしやがれの原型となるイメージは、その頃からすでにあったんですね! ヘレン・メリルのアルバムのジャケットもブルーで、勝手にしやがれのブルーシリーズ(アルバム「フィンセント・ブルー」「シュール・ブルー」)にもつながる。
武藤 多分、バンドの原型のイメージは昔から変わってないんだろうなっていう。別なバンドに参加しながらも、俺がバンドやるんだったらこういうバンドがいいなって思ってて。それを温めてきて、いよいよ勝手にしやがれとして体現してるから、ブレないっていうのはそういうところなのかもしれないですね。
雑食でいい、その代わり統一感を
──アルバム「レッツ・ゲット・ロスト」までがEPIC時代の作品ですが、勝手にしやがれにとってどんな時期だったように思いますか?
飯島 ずっと7人でやってきて、2004年からまわりのスタッフも増えて、精神的にも大人になったというか、いろんな人の意見を聞けるようになった。そういう大事な時期だったんだなって改めて思いますね。
武藤 うん、今の勝手にしやがれを決定づけた時期ですよね。インディー時代に出た「デカダンス・ピエロ」ってアルバムに向かうまでの間にもちゃんとできてたんだけど、あのアルバムが一般的に受け入れられた後のプレッシャーもあったから、それを超えるアルバムを作っていかなきゃなって思いで、ブルーシリーズを作って。いいカタチで評価をもらえるようになってきたから、仕事がどんどん増えて、企画を持ちかけられるようにもなったんだよね。それを臨機応変に対応していくときに、それまではアタマの中で考えてた完璧な作品を作りたいって感じだったのが、実行するのが難しくなってくる。ある意味開き直ってそれをうまくまとめたのが「ブラック・マジック・ヴードゥー・カフェ」ってアルバムだった。もう雑食でいい、その代わりどうやって統一感を持たせるか?っていう。勝手にしやがれってバンドが本当にジャンルに縛られてないんだっていうのを、あのアルバムで出すことができた。だから、やろうと思えばコンセプトアルバムも作れて、やろうと思えばノープランでもいいものも作れるっていう(笑)。それを一番やった時期だった。
収録曲
DISC1
- フィラメント
- 円軌道の外
- ブラック・マリヤ
- ヴァニタス
- 哀しみのクラウン
- U-K
- ブコウスキーの夢
- イズ・ユー・イズ・オア・イズ・ユー・エイント・マイ・ベイビー?
- ハウリング・ウインド(インスタント・セッション/武藤Vo.)
- オーヴェール・ブルー
- エル・ソル
- ロミオ
- 黒い瞳
- マ・ジョリー
- ラスト・ダンス
- ケーキーズのテーマ
- ラグタイム
- ゼン・サマー・ケイム
DISC2
- バーフライズ・ストンプ(+THE ZOOT16)
- ロミオ(+チバユウスケ)
- 撃沈魚雷
- 詩人の血
- U-K-2
- ヴェルモット・フラワーズ(+エゴ・ラッピン)
- グッドバイ・ポーク・パイ・ハット
- ブラック・エメラルド(未発表)
- ペイン(インスタント・セッション)
- チェリー・ザ・ダストマン(+オダギリ ジョー)
- ご・め・ん・だ・ぜ
- U-K-3
- ユード・ビ・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ(+中島美嘉)
- ドライ・ボーン・ブルーズ(インスタント・セッション)
- マスカレード(+THE ZOOT16)
- アーバン・カウボーイ(+オダギリ ジョー)
- スーパーヒーロー
- アシェズ・トゥ・アシェズ(未発表)
LIVE INFORMATION
勝手にしやがれpresents 7 o'clock jump ~15th 勝手誕生祭~
- 2012年7月13日(金)東京都 代官山UNIT
OPEN 18:00 / START 18:30
<出演者>
勝手にしやがれ
ゲスト:SOIL & "PIMP" SESSIONS / OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND
勝手にしやがれ(かってにしやがれ)
武藤昭平(Dr, Vo)、田中和(Tp)、福島忍(Tb)、浦野正樹(B)、田浦健(T.Sax) 、飯島誓(B.Sax) 、斉藤淳一郎(Piano)によるジャズパンクバンド。1997年に結成し、2001年に1stアルバム「WILD ROOM」をリリースする。パンクやスウィングジャズなどの要素を含む独特な音楽性で注目を集め、2004年にはアルバム「フィンセント・ブルー」でメジャーデビューを果たす。2006年には、THE ZOOT 16、EGO-WRAPPIN'、オダギリジョーらとコラボレーションを展開し注目を集めた。結成15周年の2012年1月、約3年ぶりとなるオリジナルフルアルバム「メロディ」とインディーズ時代のベストアルバム「シルバー&ゴールド ~シルバー 1997-2003」をリリース。6月にはメジャーレーベルでの楽曲を集めたベストアルバム「シルバー&ゴールド ~ゴールド 2004-2010」を発売した。