ナタリー PowerPush - 片平里菜
王道J-POP「女の子は泣かない」で新たな地平を切り開く
今回のシングルは女性に焦点を当てた作品が多い
──「女の子は泣かない」がJ-POP的だとすると、カップリングの「Hey boy!」と「ironic」はすごく洋楽的エッセンスの強いアレンジですよね。「Hey boy!」もすでに弾き語りライブでは定番化していますが、新たなアレンジが加わったことで新鮮に感じました。
「Hey boy!」のアレンジは「Come Back Home」(「夏の夜」カップリング曲)をアレンジしてくださった方にお願いしたんですけど、バンドサウンドを軸にしたギターロックにいろいろ遊びを加えて、10代の子たちに刺さるようなものにしたくて。もともとふざけて書いた曲でもあったので、こういう遊び心のあるアレンジになって私もすごく気に入ってます。
──歌詞に関しても、「女の子は泣かない」のあとに「Hey boy!」を聴くと、男性としてはドキッとするというか。
(男性を)やっつけちゃえ!って(笑)。
──あはは(笑)。そういう部分からも、前作とはまた違った個性が出てますね。
そうですね。前作は広い意味での“人間”っていうテーマでしたけど、今回のシングルはもっと女性に焦点を当てた作品が多いかなと思いました。
──確かに。だからこそ「女の子は泣かない」と「Hey boy!」は前作とは違った層にアピールする曲になるかもしれませんね。その曲とは違って、3曲目の「ironic」は、歌詞の世界観的には前作寄りかなと思うんですが。
書いた時期も2年前で、10代の頃に感じていたことがつづられているので「夏の夜」に近いのかも。視野が狭くって暗闇の中にいる感じの歌詞なので、「女の子は泣かない」みたいな曲が書けるようになってから「ironic」を聴くと、感慨深いものがありますね。
──そのときの年齢じゃないと書けないことが凝縮されてるんでしょうね。今同じようなことを書こうと思っても、「ironic」のようにはならないかもしれないし。
ならないでしょうね。書けないと思う。「ironic」の歌詞って今になってみると「これ、何を伝えたいのかな? どういう意味かな?」と思う部分もあって、ちょっと書き直そうかと思ってたんですけど、いざ書き直そうと思ったら全然書けなくて。10代の頃の自分が歌ってる曲に対して21歳の私が何か訂正してしまったら、何かもったいない気がしたんです。だったら2年前に書いた、そのときのリアルを残したほうがいいかなと思って、そのままの形で発表することにしました。
「ironic」のあとにはほっこりした曲を入れたかった
──そしてシングルには最後に「ぺんぺん草」という弾き語りナンバーが収録されています。今回の4曲の中で唯一ライブで聴いたことがなかった曲なんですが、シンプルな曲調と歌詞の韻の踏み方がすごくいいなと思いました。
この曲は去年の春、弾き語りツアーから帰ってきた頃に書きました(参照:片平里菜、地元福島でアットホームなツアーファイナル実現)。夕方、家でボーッとしてるときに母親が外からぺんぺん草を摘んできて、「お母さん、ぺんぺん草好きなんだよね。今度『ぺんぺん草』っていう曲作ってみたら?」「うん。そうだね」っていう会話をしたんです。まあそのときはそれで終わったんですけど、あとで曲作りをしてるときにその会話を思い出して、とりあえずぺんぺん草を題材に1曲作ってみようかなと思って。でもいざ作ってみると母親のイメージが強すぎて、ぺんぺん草というか母親の曲になってしまったんです。できた曲を聴かせたら恥ずかしくなったみたいで「誰にも聴かさないで!」って言ってました(笑)。
──それが皮肉なことにCDとして全国リリースされることになってしまったと(笑)。今回の4曲の中では、日常生活の些細なことを切り取った歌詞がすごく新鮮なんですよね。
ああ、確かに。ほかの3曲とは違いますね。
──自分のことや同年代の女子みたいに誰かのことを歌っているというよりも、日常の出来事を淡々とつづっているというか。最後にこの曲が入ることで、シングルの構成がギュッと引き締まったと思います。
「ironic」のあとにどんな曲を入れようと考えたときに、ちょっとほっこりした曲を入れたいなと思って。いろいろある曲の中から「ぺんぺん草」が一番収まりがよかったんです。
メロディと歌詞が芯にあれば、何をしてもブレない自信がある
──それにしても1stシングル同様、2ndシングルもバラエティに富んだ内容になりましたね。
今作の制作では「ironic」と「女の子は泣かない」が同じCDに入っていたら面白いねっていう話をずっとしていて。私はどんなジャンルでも好きだから、今はいろんなタイプの曲を試してみたいんです。いろいろ試して、どんどん自分の中で消化したい。まだ世に出していないいろんなタイプの曲があるので、出し惜しみせずに早く出していきたいんです。
──ライブでもまだ披露してない曲がたくさんあるってことですもんね。今後どういう曲が発表されるのかというワクワク感もあるし、型にはまらないのが片平里菜らしさになるのかもしれませんね。
そうなのかなあ……いろんなことを試して、結果を出していけたらなと思うんです。とりあえず自分の作ったメロディと歌詞が芯にあれば、何をしてもブレない自信があるので、いろんなことしたいし試したい。
──そして1月末からは全国3都市で初のワンマンツアーが行われます。
まだシングル2枚しか出していないので、本当にファンの方が聴いたことない曲ばっかりのライブになるし、いろんな面を見せられるライブになるかな。観たことによって、さらにこの先が楽しみになってくれたらいいなと思います。
収録曲
- 女の子は泣かない
- Hey boy!
- ironic
- ぺんぺん草
ライブ情報
片平里菜 1stワンマンツアー2014
“女の子は泣け、笑え、叫べ”
- 2014年1月31日(金)東京都 WWW
- 2014年2月8日(土)大阪府 knave ※ソールドアウト
- 2014年2月9日(日)福島県 Live Space C-moon ※ソールドアウト
片平里菜(かたひらりな)
1992年5月12日生まれ、福島出身・在住のシンガーソングライター。2011年9月、「閃光ライオット2011」で1万組の中から審査員特別賞を受賞する。翌2012年にはソニーWALKMAN「Play You. Label」第1弾アーティストに抜擢され、山田貴洋(ASIAN KUNG-FU GENERATION)プロデュースのもと楽曲制作。7月にはメジャーデビュー前にもかかわらず「NANO-MUGEN FES.2012」に出演し、話題を集めた。2013年1月にアジカン山田プロデュースによる楽曲「始まりに」を配信リリース。同年4月には20公演にわたる初の全国弾き語りツアー「片平里菜 飾らない笑顔で 弾き語りツアー2013」も敢行した。5月にはギブソン社傘下のギターブランド・エピフォンが片平を日本人女性初のエピフォンアーティストとして公認したことも発表され、大きな反響を呼んだ。そして8月7日、ポニーキャニオンからシングル「夏の夜」でメジャーデビュー。また7~9月には「SUMMER SONIC 2013」「SunSet Live」「JOIN ALIVE」「New Acoustic Camp」「風とロック芋煮会」など、全国各地の大型フェスへの出演も果たした。2014年1月15日には2ndシングル「女の子は泣かない」をリリースし、同月末からは初のワンマンツアー「片平里菜 1stワンマンツアー2014 “女の子は泣け、笑え、叫べ”」を東京、大阪、福島で行う。