ナタリー PowerPush - 片平里菜

「これから戦っていかなきゃ」メジャーデビューに対する覚悟明かす

福島在住の女性シンガーソングライター・片平里菜が、待望のメジャーデビューシングル「夏の夜」をリリースした。2011年に開催された「閃光ライオット 2011」をきっかけに、着実にステップアップを続けてきた彼女。ついに発表される1stシングルには、デビューのきっかけになった表題曲のほか、ライブの定番曲「baby」「Come Back Home」や、配信シングル「始まりに」の弾き語りバージョンとバラエティに富んだ4曲が収録されている。

今年2月の特集(参照:片平里菜 デビューまでの足跡をたどるインタビュー&年表)に続く今回のインタビューでは、ファンにメジャーデビューを報告した今年2月の「閃光ライオット感謝祭」から今日までを振り返りつつ、デビューシングルの聴きどころを語ってもらった。さらに山田貴洋(ASIAN KUNG-FU GENERATION)やホリエアツシ(ストレイテナー)など、片平と交流を持つアーティストたちからのコメントも掲載。先輩アーティストたちが認める彼女の魅力を、このテキストから感じてほしい。

取材・文 / 西廣智一 インタビュー撮影 / 佐藤類

「CDはいつ出すんですか?」っていう声が一番多くて

片平里菜

──まずは2月10日の「閃光ライオット感謝祭」から振り返ってみましょう。このイベントでメジャーデビューを発表しましたが、お客さんがすごく喜んでいたのが印象的でした(参照:閃光ライオット出身、片平里菜がメジャーデビュー)。

あの日のライブは確かひさしぶりのバンド編成でのライブで、しかもデビュー発表に向けてすごい練習もしてたんです。当日はライブを楽しもうっていう気持ちもあったけど、お客さんがデビュー発表を聞いたときにどんな反応をしてくれるかっていうのが、ちょっと想像できなくって。ドキドキでしたね。

──それ以前もお客さんからデビューについて聞かれることはありましたか?

「いつデビューするんですか?」っていうのはもちろんですけど、「CDはいつ出すんですか?」っていう声が一番多くて。ライブのたびにお客さんから「物販にCDはないんですか?」って言われることは多かったですね。

──それってライブを観て片平さんの曲を気に入って、純粋にCDが欲しいと思ってくれたってことですもんね。

確かに。そう思ってもらえるのってかなりうれしいです。

──で、そのライブでの片平さんのコメントなんですが……。

何をしゃべったか全然覚えてないなあ。

──「うれしいだけではなく、『これから戦っていかなきゃ』っていう気持ちも強く感じてます」ということでした。どんどん前に進んで、いろんな困難と立ち向かっていかなくちゃっていう気持ちは、以前から持っていたものなんですか?

そうですね。デビューを発表する前からずっと思ってたことで、その気持ちは今も変わらないです。

もっといろんな人に聴いてもらいたくてネットで公開

──メジャーデビュー発表から1カ月後の3月11日、YouTubeにライブの定番曲「amazing sky」の弾き語り動画がアップされました(参照:片平里菜「心に寄り添える歌になりますように」動画公開)。東日本大震災から2年経った日に、この動画を公開しようと思ったのはなぜですか?

「amazing sky」は高校3年生の頃にはできていた曲なんですけど、そのときは歌詞が今とはちょっと違ってたんです。もともと歌ってる内容が震災以降の生活に通ずるところはあったんですけど、震災が起きてから自分自身の考え方も変わってきたので、そこで歌詞を少し変えたくなって。メッセージをより明確にしたのが今の歌詞なんです。

──そういう経緯があったんですね。

はい。ライブでもずっと最後に歌ってきたし、それだけ思い入れの強い曲なので、もっといろんな人に聴いてもらいたいと思ってたんです。それでネットならいろんな人の目や耳に止まるし、ライブに来られない人にも聴いてもらえるし。この曲に込めた思いだけでも届けられたらいいなと思って公開させてもらいました。

全国ツアーは「普通に旅がしたいと思ってた」

──そして4月1日から全国弾き語りツアー「片平里菜 飾らない笑顔で 弾き語りツアー2013」を、1カ月間にわたり行いました。全20公演のブッキングも自分で行ったそうですが?

そうですね(笑)。地元のライブハウスでは当たり前のようにやってきたことなので、同じ感覚でやってました。

──それまでも東北や東京ではライブを行ってましたけど、このツアーは初めて行く場所が多かったんじゃないですか?

けっこう多かったですね。

──それに対して怖いとは思わなかった?

ちょっと怖かったですよ。本当にイメージできなかったし。海外に行くみたいな感じでしたからね。

──しかも1人で、車を運転しての移動だったんですよね?

そうです。普通に旅がしたいと思ってたんですけど、その延長線上で弾き語りで歌えたらいいなと思って(笑)。いろいろ進めていったら、こんなに本格的になってしまったんです。でもすごく意味のある旅になりましたね。

──ツアー中、何か印象に残ってるエピソードはありますか?

片平里菜

もう全部が印象的でしたね。東北や関東の、何回かお邪魔させてもらったことがあるライブハウスの方に、変わらず温かくしてもらって、「またがんばってね」ってメールももらったし。青森とか静岡、長野、岡山、九州とか初めて行った場所はやっぱり刺激的でした。どれが一番か選べないぐらいで。ツアーの序盤に石巻、大船渡、宮古っていう被災地の沿岸部をいっぱい見てきて、いろんな人に会ってしゃべって……そこから初めての場所を訪れていったのはなんか意味のあることだったなって、あとになって思いました。

──気持ちも引き締まったと?

はい。あ、九州は東北と文化が全然違っていて面白かったですね。ライブハウスじゃない場所で歌うことも多くて、熊本(熊本しそにぬ)では縄を作ってる倉庫みたいな……体育館みたいな場所の一角で歌って。声がすごく響いて、自然のリバーブがかかるので、マイクなしでも歌っていて気持ちよかったです。あと福岡(Hair Design Gram)では美容室で歌ったり。ライブ当日も普通に営業して、早めに閉店してもらってから美容師さんと一緒に会場作りをしました。

──そうやって聞くと、すごく楽しそうですね。

面白かったですよ。ずっとやっていたかった(笑)。

──でも周りのスタッフさんは、それこそそわそわしながら片平さんの帰りを待ってたみたいですよ(笑)。

スタッフさんにはすごく迷惑をかけたんだなって今さら思いますけど。でも最後の福島公演で一番いいライブができたし、本当にこのツアーをやってよかったと思った瞬間でした。

片平里菜(かたひらりな)

1992年5月12日生まれ、福島出身・在住のシンガーソングライター。2011年9月、「閃光ライオット2011」で1万組の中から審査員特別賞を受賞する。翌2012年にはソニーWALKMAN「Play You. Label」第1弾アーティストに抜擢され、山田貴洋(ASIAN KUNG-FU GENERATION)プロデュースのもと楽曲制作。7月にはメジャーデビュー前にもかかわらず「NANO-MUGEN FES.2012」に出演し、話題を集めた。2013年1月にアジカン山田プロデュースによる楽曲「始まりに」を配信リリース。同年4月には20公演にわたる初の全国弾き語りツアー「片平里菜 飾らない笑顔で 弾き語りツアー2013」も敢行した。5月にはギブソン社傘下のギターブランド・エピフォンが片平を日本人女性初のエピフォンアーティストとして公認したことも発表され、大きな反響を呼んだ。そして8月7日、ポニーキャニオンからシングル「夏の夜」でメジャーデビューを果たした。