ナタリー PowerPush - かせきさいだぁ
アニソンはアニメファンだけのものじゃない!
かせきさいだぁのシティポップは「ブラックアイドソウル」
──参加された皆さんは、「渋谷系のパロディをやろう」っていうアイデアに対して、ノリノリでやるわけですか?
爆笑しながらやってましたよ。
──あとこの曲といえば、途中の「キラッ」っていう部分が特徴的なんですが、そこはどうやって作りましたか?
あ、そうですね。僕らが「キラッ」って言ってもかわいくないので、最初はカジくんに言ってもらおうかなとも思ったんです。でもさすがに頼めなくて。そしたらふと、でんぱ組.incのねむきゅん(夢眠ねむ)に頼もうって思いついたんです。
──ねむきゅんはアルバムの最後で、細野晴臣のアルバム「はらいそ」の台詞のパロディで「この次はモアベター、モアベター!」と言っていますね。
そうそう、それもやりたかったんですよね。もし自分が言ったら、何やってんのって感じだったと思うので、ねむきゅんにお願いしました。モアベターを2回繰り返しているのは、「新世紀エヴァンゲリオン」の次回予告で「来週もサービス、サービス」って繰り返してたからです。アルバムの途中で流れるアイキャッチの音も作ったし、自分の中のアニメ感をかなり本気でやってるつもりです。
──結果的にかなりバラエティに富んだ曲調のアルバムになりましたけど、ということはかせきさいだぁが近作で打ち出している「シティポップ」というコンセプトは、必ずしもジャンルや曲調に縛られないということになりますよね。それは、どこから生まれてくるものなのでしょうか。
前のアルバムもそうだったんですけど、みんなが連想してるシティポップと、僕が連想してるシティポップに、どうも開きがあるってことに気づきまして。世の中の人たちがシティポップって呼ぶのは、もう、シティポップと呼ばれた音楽の音をそのまま再現するような感じなんですよね。でも、僕の思ってるシティポップは、日本人がソウルっぽいものをやりたいと思って、すごくマジメにやっちゃって、できるようなものだと思うんです。だから「シティポップ」ってわかりやすく言ってますけど、実は僕がやっているのは「ブラックアイドソウル」なんじゃないかもと思うんです。つまりブルーアイドソウルみたいに、黒人でない日本人が、真剣にソウルをやろうとして作ったものだと思ってるんですよ。まあ、そんな言葉はないんですけど(笑)、でもそれはいとうせいこうさんに言われたんですよね。
──つまり音楽ジャンルとしてのシティポップの音作りを真似るのではなくて、それを作った人の思想というか、アティテュードでやっているということなんですね。日本人である自分を通過させながら、真剣にソウルをやったときに出てくるもの。
はい。それがブラックアイドソウルであり、シティポップの作られ方なんじゃないかと勝手に思ってるんですけどね。
アニソンにもいい曲はいっぱいある
──なるほど。そして、今回はその素材がアニソンだったということですね。アルバムとしては全般的に、普段アニソンを聴かない人に、「今のアニソンにも、いい曲はいっぱいあるんだよ」というメッセージを込めているんでしょうか?
はい。まさにその通りです。アニソンは、どうしてもアニメファンに聴かれるものになってる感はちょっとあるんで、そうじゃない人たちにも、いい曲はちゃんとあるんだよっていうのを知らせたいんですね。
──ニュートラルな耳で聴いていれば、例えばテレビで「戦国コレクション」をやっていたとして、アニメ自体はわからなくても、曲はいいって気づけるはずなんですよね。
そうだと思うんですけどね。アニメ自体も「かんなぎ」とか、めちゃくちゃ面白かったですし。
──あくまでも音楽としてアニソンを評価しているだけじゃなくて、アニメはアニメで楽しんでいる部分があるんですね。
そうですね。小学校、中学校と松田聖子がすごく好きで、松田聖子の歌詞は必ず松本隆って人が書いてるなって気付いたのが、音楽をちゃんと聴き始めたきっかけだったんですよ。アニメは誰が作っているかまでは詳しく調べなかったですけど、でも同じですね。特にオープニングとかエンディングは、昔のアニメなら金田伊功さんみたいな腕の立つ人が作ったりしていたし、「うる星やつら」「らんま1/2」とかをやられてた南家こうじさんとかも好きでした。でも世の中は、なんとなくアニメは別のものとして区別してるんですよね。
──そうですね。今回のアルバムはそういう区別のない、フラットな目線があるアルバムとしてまとまっているなと思いました。
そうしたいという気持ちはありましたね。アニソンファンにも、そうでない人にも、「こんなふうにアレンジすると、こんな楽曲ができるんだ、面白いな」って思ってもらいたいですね。そういう意味ではこのアルバム、アニソンっぽさが全然ないので、家で気軽に聴いてくれたらと思います。原曲を知らない人は、あとで調べてみると全然違って面白いと思いますよ。
収録曲
- 10%の雨予報(H2O)
- 恋のB級アクション(伊藤さやか)
- 天使の絵の具(飯島真理)
- ルージュの伝言(荒井由実)
- ときめきトゥナイト(加茂晴美)
- フェアリー・ナイト(ソニア・ローザ)
- UNLUCKY GIRL!!(Sweety)
- motto☆派手にね!(戸松遥)
- 恋の呪文はスキトキメキトキス(伊藤さやか)
- 残酷な天使のテーゼ(高橋洋子)
- 星間飛行(中島愛)
※カッコ内はオリジナルアーティスト
加賀温泉郷野外フェス 2013
2013年9月7日(土)・8日(日)石川県 加賀市片山津温泉 柴山潟湖畔公園
※かせきさいだぁは7日に出演
SECOND ROYAL
2013年9月20日(金)京都府 京都METRO
<出演者>
LIVE: かせきさいだぁ&ハグトーンズ / カジヒデキ / Homecomings
DJ: HALFBY / Handsomeboy Technique / kikuchi(HOTEL MEXICO) / 小野真 / 小山内信介 / and more
BREADISTA!!-10th anniversary special vol.03-
2013年9月21日(土)広島県 福山Cable
<出演者>
LIVE: カジヒデキ / かせきさいだぁ & ハグトーンズ / NOEL & GALLAGHER
DJ TEAM BREADISTA!!
アニソンはじめました。~かせきさいだぁのアニソング !! バケイション ! リリース記念ライブ~
2013年9月27日(金)東京都 原宿アストロホール
<出演者>
かせきさいだぁ&ハグトーンズ(ゲストあり)
かせきさいだぁ
1994年に始動したヒップホップのソロユニット。1995年にインディーズから、翌年にメジャーからそれぞれ1stアルバム「かせきさいだぁ≡」を発表し、はっぴいえんどからの影響を感じさせる叙情的な歌詞やトラックで一躍注目を集めた。2000年代に入るとワタナベイビー(ホフディラン)とのバンド・Baby & CIDER≡、木暮晋也(HICKSVILLE)と結成したトーテムロックでの活動も開始し、さらにいとうせいこう&POMERANIANS≡にも参加。自費出版4コママンガ「ハグトン」でイラストレーターとしての才能も発揮し、年に3回のペースで個展も開催している。2009年からハグトーンズをバックバンドに迎えてかせきさいだぁ名義での音楽活動を再開。13年ぶりのソロアルバム「SOUND BURGER PLANET」を2011年に発表し、2012年にはシティポップをテーマにしたアルバム「ミスターシティポップ」、2013年8月にアニメソングカバー集「かせきさいだぁのアニソング!! バケイション!」をリリース。