ナタリー PowerPush - かせきさいだぁ
アニソンはアニメファンだけのものじゃない!
マッシュアップ感覚で魅力的なカバーを作る
──「さすがの猿飛」の曲は、主題歌の「恋の呪文はスキトキメキトキス」とエンディングテーマの「恋のB級アクション」の両方が収録されてますよね。まず時系列的には「恋の呪文はスキトキメキトキス」を先に昨年の「ミスターシティポップ」でカバーされました。
これはね、ちょっとTHE DOOBIE BROTHERSの「What a fool believes」っぽくしてみようと思ってやったら、うまくハマったんですね。これはもうAORですね。なぜか過去のアニソンを無理やりAOR風にしてみようっていうアイデアで作ってます。
──なるほど。そのカバーの手法がだんだんわかってきました。本当にヒップホップ的に、別のものをハメ込むんですね。
そうなんです。多少無理があっても力業で無理やりやる感じですね。
──では、それに加えて「恋のB級アクション」もやったのはなぜでしょう。
いやー、「さすがの猿飛」の曲が両方とも入ってるのは、あとから気付きました。やっぱり曲のパワーがすごかったから、どっちもカバーしちゃったんだと思いますね。
──原曲を作った小林泉美さんは、「うる星やつら」の曲をずっとやってきた人なので、やっぱりいい曲を書かれますね。
あ、そうなのか。実は「うる星やつら」関連はね、今回わざと全部外したんですよ。調べると「ラムのラブソング」とか、毎年10人ぐらいずつカバーしてるんですよ。だからちょっと外しましたね。「残酷な天使のテーゼ」もたくさんカバーされてるんですけど、こっちはちょっと挑む価値があるかなと思ったので、やっています。
──定番曲ということになると、「ルージュの伝言」なんかもジブリアニメ「魔女の宅急便」で使われた曲ですから、ポピュラーではありますよね。この曲はなぜ選ばれたのでしょうか?
これはね、「魔女の宅急便」の曲をやれば、ユーミンのカバーができるんじゃないかって思ったんです(笑)。それで、最初はちょっとモータウン調というか、スティーヴィー・ワンダーみたいなアレンジにしようって考えてたんですけど、スティーヴィー・ワンダーとTHE CLASHの「ロック・ザ・カスバ」がマッシュアップされてる曲があるって教えられたんですよ。で、それをYouTubeで聴いたら、めちゃくちゃカッコよくて。それでハッと気付いて、この曲もモータウン調にしてたけど、ここに「ロック・ザ・カスバ」をくっつければいいじゃん、って。まあ、その動画でマッシュアップされてたのとはまた全然違うところをくっつけてる感じなんですけど。
──「ときめきトゥナイト」なんかはどうですか? これは2011年の「SOUND BURGER PLANET」に収録されていたバージョンではなくて、新たに録音し直していますよね。面白いアレンジになっています。
前に録ったときからずっとライブでやっていたので、僕らの中でもグルーヴ感がどんどん出てきたので、録り直そうということになったんです。でも、どうせだったらもっと細野(晴臣)さんの感じをいっぱい入れようということになりまして。そしてEPOさんにコーラスをやってもらおうと。まあ僕はすぐ「細野さんチックな、中華テイストみたいな感じを入れてくれ」って頼むんですよ。合わなかったらやめるんですけど、必ず試すんです。で、この曲はそれがうまくハマりましたねえ。不思議に。
テレビでアニメをつけっぱなしにしている
──しかし、このアルバムは単に懐かしのアニソンカバー集というわけじゃないんですが、それが一番感じられるのが「UNLUCKY GIRL!!」ですよね。なぜこの曲を選んだんですか?
「戦国コレクション」の主題歌ですよね。スカパー!でやってたんですけど、アニメは全然意味がわかんなかった(笑)。「織田信長が女の子」とかって、さすがによくわからないと思って観てたんです。でもテレビつけてると1日1回ぐらいは流れてて、すぐにエンディングの曲がめちゃめちゃカッコいいのに気づいたんです。
──ということは、それもやっぱり、リアルタイムでというか実際にテレビで観て知った曲なんですね。かなりテレビでアニメを観てるんですか?
「アニメ好き」っていうわけでもないんですけど、スカパー!のアニメ専門チャンネルをつけっぱなしにしてるんですよ。昔はディスカバリーチャンネルで旅っぽいのをやってたんで、それをつけてたんですけど、だんだん犯罪ものが多くなってきたんです。でもそれを観てるとすごく気持ちが荒んでくるんですよ。
──わははは(笑)、つけっぱなしにするのには適さないですね。
それでいろいろチャンネルを観てて、結局アニメチャンネルに落ち着いたんです。要は24時間エンドレスでアニメをやってるわけじゃないですか。そうすると、すごく平和なんですよね。最近思ったのは、アニメっていうのは日常にあることをデフォルメして、細かいことは描写せずに、面白かったりほっこりする部分だけをずっと描いているんですよね。だから観てるとそれだけでほっこりして、安心する気がするんです。だから別に、最新のアニメに詳しいというわけでもないんですけど。でも「戦国コレクション」みたいに、パッと聴いて、楽曲としてすごくいいなあというものを見つけることが多いんですよ。
──これは、原曲のジャズアレンジを意識しつつ別アレンジにした感じですか?
そうですねえ。もともとそんな感じのアレンジにはなってましたけど、これをブライアン・セッツァーみたいな、ロカビリーとかビッグバンドが混ざったような感じでやったらカッコよくなるんじゃないかと。しかも小島麻由美さんに歌ってもらったりして。
──すごくクールな感じになってますよね。原曲はOSTER projectさんなので、思わぬ形で、かせきさいだぁからニコニコ動画界隈とも接点が生まれているのが面白いです。
僕、今のアニメとかアニソンの流れを一切知らないでやってるんですけどね。テレビで観て、いいなって思った曲をやってるだけなんで。
収録曲
- 10%の雨予報(H2O)
- 恋のB級アクション(伊藤さやか)
- 天使の絵の具(飯島真理)
- ルージュの伝言(荒井由実)
- ときめきトゥナイト(加茂晴美)
- フェアリー・ナイト(ソニア・ローザ)
- UNLUCKY GIRL!!(Sweety)
- motto☆派手にね!(戸松遥)
- 恋の呪文はスキトキメキトキス(伊藤さやか)
- 残酷な天使のテーゼ(高橋洋子)
- 星間飛行(中島愛)
※カッコ内はオリジナルアーティスト
加賀温泉郷野外フェス 2013
2013年9月7日(土)・8日(日)石川県 加賀市片山津温泉 柴山潟湖畔公園
※かせきさいだぁは7日に出演
SECOND ROYAL
2013年9月20日(金)京都府 京都METRO
<出演者>
LIVE: かせきさいだぁ&ハグトーンズ / カジヒデキ / Homecomings
DJ: HALFBY / Handsomeboy Technique / kikuchi(HOTEL MEXICO) / 小野真 / 小山内信介 / and more
BREADISTA!!-10th anniversary special vol.03-
2013年9月21日(土)広島県 福山Cable
<出演者>
LIVE: カジヒデキ / かせきさいだぁ & ハグトーンズ / NOEL & GALLAGHER
DJ TEAM BREADISTA!!
アニソンはじめました。~かせきさいだぁのアニソング !! バケイション ! リリース記念ライブ~
2013年9月27日(金)東京都 原宿アストロホール
<出演者>
かせきさいだぁ&ハグトーンズ(ゲストあり)
かせきさいだぁ
1994年に始動したヒップホップのソロユニット。1995年にインディーズから、翌年にメジャーからそれぞれ1stアルバム「かせきさいだぁ≡」を発表し、はっぴいえんどからの影響を感じさせる叙情的な歌詞やトラックで一躍注目を集めた。2000年代に入るとワタナベイビー(ホフディラン)とのバンド・Baby & CIDER≡、木暮晋也(HICKSVILLE)と結成したトーテムロックでの活動も開始し、さらにいとうせいこう&POMERANIANS≡にも参加。自費出版4コママンガ「ハグトン」でイラストレーターとしての才能も発揮し、年に3回のペースで個展も開催している。2009年からハグトーンズをバックバンドに迎えてかせきさいだぁ名義での音楽活動を再開。13年ぶりのソロアルバム「SOUND BURGER PLANET」を2011年に発表し、2012年にはシティポップをテーマにしたアルバム「ミスターシティポップ」、2013年8月にアニメソングカバー集「かせきさいだぁのアニソング!! バケイション!」をリリース。