音楽ナタリー PowerPush - 前川真悟(かりゆし58)×若旦那
俺たちがあげる“大金星”
わかりあえはしない、分かち合いはできる
──千とか万の規模でタオルが回ってる光景を前にパフォーマンスする方が「狭い」って意外ですね。
若旦那 だってあの何万人の会場って、誰が来てんのかとかわかんないから。爆発的な一体感を共有できてはいるけど、じゃあ1対1になれてんのかって言えば絶対なれない。だからSHELTERとかで200人に対してやる必要があって、そこでようやくバランス取れるっていう。ずっと葛藤してますよ。「横浜スタジアムでライブってすごいね」って、数の評価じゃないんだよみたいな。
前川 ああ。
若旦那 だから結局俺のアイデンティティはすごく狭いところにあるままで。私生活だって、飲みに行くメンバーいつも一緒だし(笑)。テレビも観てないから世の中がどういう動きしてんのかわかってない。
前川 そうそう、世間と自分に見えてる景色は違いますもんね。
若旦那 そうなんだよ。音楽だってスタジオの隅とか狭いスペースで1人で作ってるし。
前川 ミュージシャンの世界って、たぶんスピーカーの手前のわずかなスペースですもんね。そこから音を作って出してるっていうか。伝えられるのもそうだけど。
若旦那 で、それ作ってるときも何万人の人をイメージして作ってるかっていったら作ってない。「こうやったら盛り上がるだろうな」って思いながら作ってる人たちもいると思うけどね。真悟とか俺みたいなタイプって、“対自分“なんだよ。とにかく自分と向き合うだけ。言い方悪いけど「お前らの歌じゃねーぞ、俺の歌を歌ってるんだぞ」って。それで聴いてるやつらがいつの間にか自分の歌、自分のテーマソングにしてくれてる。
──自分のテーマソング。
若旦那 うん。“みんなの歌”じゃないんだよね。だからライブも1人ひとりのテーマソングを同じ会場で大声で歌うっていうものだと思ってる。「この曲があったから俺はこうなれたんだ」ってのをみんなが歌うっていうか。それに対して俺は「だったら一緒に歌おうぜ」みたいな姿勢でいる。
前川 僕もみんなが1つになれることなんかないって思ってます。でもそれは素晴らしいことだなって。同じ空間で1つの音を別々の人間と共有して、それぞれがまったく違う何かを感じとる。1つになるんじゃなくて、1つのものを分け合って無数の何かにして、それぞれの生活の中に持ち帰ってもらえる。そんなつながりみたいなものこそ、音楽の本質というかマジックなのかなって思ってます。1人を嫌だとか思わないし、孤独だなんて言い出したら、地球何十億人みんなそう。でもそれがいいんですよ、わかりあえはしないけど分かち合いはできるぞって。
体当たりでいくしかない
若旦那 そういえばツアー日程ってどんな感じなの?
前川 11月から来年の2月にかけてライブハウスを回ります。初日は11月7日に赤坂BLITZで。
若旦那 ああそうなんだ。BLITZ観たいなあ。
前川 遊びに来てください。たぶん一番ライブ感あると思います。「お前たち何年やってるの?」って毎年イベンターさんに言われるぐらい人前苦手なメンバーがガチガチで精一杯やるんで(笑)。でも好きなんですよ、その緊張してる感じが。僕たちらしさが一番出る。
──BLITZのほかに、数百人キャパのライブハウスもたくさん回りますね。
若旦那 ああ、そういう会場のサイズ感って好きなんだよね。
前川 いいですよね。距離感というか、目の前の1人を説得するようなテンションで一生懸命「どうだ!」って、何かを伝えていけるみたいな。手の届く範囲で語りかけることで空気を変えられる予感がライブハウスには満ちてるんですよね。逆にちょっとしたきっかけで一気にシーン……となったりするけど(笑)。
若旦那 そうだね。あとホールとかアリーナは、どうしてもある程度決められたレギュレーションの中でやらざるを得ないというか、はみ出ることが難しい。でもライブハウスはもうはみ出す……変な話チンチン出しても許されそうな感じっていうか。
前川 これまた例えがヘタですね!(笑)
若旦那 (笑)。さいたまスーパーアリーナでそれやったらYahoo!ニュースに載るけどさ。そういう公共の場っぽくないところが自分らしくいられるんだよね。それに映像を使ったり衣装チェンジしたりの演出も難しくなるから、もう体当たりでいくしかない。ライブハウスって昔はホールやアリーナに上がってくためのステップでしかなかったけど、今は逆にライブハウスから動かないやつらも多いよね。
前川 そうですね。でもこの間ちょうど長崎の諫早っていう町のホールでライブをしたんですけど、普段ライブハウスに行かないような年齢層の人とかも観に来てくれて「なるほどな」って思いました。僕たちはホールだからこそ観に来れるって人たちにも愛してもらってるバンドなんだなって。
若旦那 うん。
前川 だから楽器弾きとして、歌い手としてライブハウスの魅力はあるけど、ホールで座れる場所でしか観れないって人の「私のところにも来てよ」って気持ちに応える喜びもありますよね。まずは近いところからですが、今後ホール公演もやりたいと思ってます。それぞれの場所で待っててくれる人に一番いいものを持っていきたいですね。
次のページ » ライブ情報
- かりゆし58 ニューアルバム「大金星」2014年10月8日発売 / LD&K Records
- 初回限定盤 [CD+DVD+小冊子] 4104円 / LDCD-50104/B / Amazon.co.jp
- 通常盤 [CD] 2700円 / LDCD-50105 / Amazon.co.jp
CD収録曲
- 大金星
- Oh! Today
- 青の道しるべ
- 愛を信じている
- RRC
- E.D.O Dance
- アットホーム
- 生きてれば良い事あるみたいよ
- いいよ最高
- フリーなり
- 南風になれ
- 今ならここに
- きっと雨は降らないでしょう
- 大洋と太陽のBBQパーラー
初回限定盤 DVD収録内容
- 「Oh! Today」ミュージックビデオ
- 「愛を信じている」ミュージックビデオ
- ファンクラブLIVEダイジェスト映像
- MV撮影風景、BOOK撮影風景、対談風景などのオフショット
初回限定盤 BOOK収録内容
<メンバーが"会いたい人"との対談企画>
- 前川真悟(Vo, B)×島袋優(BEGIN)
- 新屋行裕(G)×May'n
- 中村洋貴(Dr)×内間政成(スリムクラブ)
- 宮平直樹(G)×宮平勝也(ROACH)
<地元沖縄南部紹介>
- 愛する地元糸満など南部の名所、美味しいお店をメンバーが紹介
<メンバーが語るアルバムへの思い>
- 一致団結で作り上げた今作への思いを各メンバーが語るロングインタビュー
かりゆし58(カリユシゴジュウハチ)
2005年に沖縄で結成。前川真悟(Vo, B)、新屋行裕(G)、中村洋貴(Dr)、宮平直樹(G)からなる4人組バンド。バンド名は沖縄の方言で「めでたい / 縁起がいい」の意味を持つ「かりゆし」と、沖縄 のメインストリート国道58号に由来する。2006年2月にミニアルバム「恋人よ」をリリースし、続くシングル「アンマー」がロングヒットを記録。2009年2月にリリースしたシングル「さよなら」は松山ケンイチ主演ドラマ「銭ゲバ」主題歌に採用され大きな話題を集めた。2011年7月にはベストアルバム「かりゆし58ベスト」をリリース。2013年9月には5thアルバム「8」を発表し、10月から全国47都道府県を回るロングツアーを実施した。そして2014年の10月に6枚目のフルアルバム「大金星」をリリース。11月からは30公演以上のライブハウスツアー「ハイサイロード~大金星~2014-15」をスタートする。
若旦那(ワカダンナ)
1976年生まれ、東京出身。加藤ミリヤやJAMOSAの楽曲のプロデュースを手がけ、自身もこれらの楽曲に客演として参加。2010年3月にはハイチ震災のチャリティソング「いのち~LOVE FOR HAITI~」を配信リリースし、2011年11月にはエイベックスから1stソロアルバム「あなたの笑顔は世界で一番美しい」を発売した。そして2014年には主催イベント「バカヤロ」をスタートさせ、バンドセットのライブも積極的に展開する。そして11月12日には徳間ジャパンの移籍第1弾作品となる3rdアルバム「WAKADANNA 3 ~絶対に諦めないよ、オレは!!~」をリリース。2015年には自己最多となる全国22カ所の「絶対に諦めないよ、オレは!!ツアー2015」も実施する。
- 若旦那 ニューアルバム「WAKADANNA 3 ~絶対に諦めないよ、オレは!!~」2014年11月12日発売 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ
- 初回限定盤 [CD+DVD2枚組] 5400円 / TKCA-74164 / Amazon.co.jp
- 通常盤 [CD] 3240円 / TKCA-74168 / Amazon.co.jp