音楽ナタリー PowerPush - 前川真悟(かりゆし58)×若旦那
俺たちがあげる“大金星”
ミュージシャンは向いてない
──そんな時期があったんですね。驚きました。
前川 はい。友達との飲み会でも「ごめん俺あんまアガらなくて。ごめんよ」って言ってて。そんなときに後輩から「骨格のゆがみって精神にも影響出るらしいですよ」って言われて、整体やってる人を紹介してもらったんです。会ってみたら、その人は経営コンサルティングとかもやってる人なんですけど最初の一言が「ミュージシャンは向いてない」みたいなとこから始まったんですよ!
──ミュージシャンに向かって(笑)。
前川 「おい!」てなって(笑)。でも「向いてないのか、でも思い当たる節もあるぞ」って思った。メロディラインも似てるし、コード進行もよく似たような曲ばっか作ってるなって(笑)。でも、そこで逆に「よっしゃ」って思えるようになってきたんです。向いてないやつが好きでやってるっていう姿勢って嫌いじゃない、むしろ好みだなって思えたんですよね。
──愛すべき不器用さ、みたいな。
前川 はい。まあそこからもマインドはしばらくウダウダしてて。生活に変化をつけるために生活サイクルに1個違う要素を入れたりしたんです。鏡の前で「よっしゃ!」って言ってみたり。あと言葉があまりにも出てこないから、50音表の前ですごろくみたいに「次は『や』と『り』……」とかコックリさんみたいなことし始めて(笑)。
──コックリさん(笑)。
前川 メンバーから「こんなので歌詞できるわけないやろ」ってツッコまれたりしながら。でもおかげでメンバーが奮起してくれて(笑)、前のアルバム(「8」)はほかのメンバーが曲を作ってくれたりして乗り切ったものなんです。
若旦那 へえ。
前川 ただ最初は自分が作る曲と同じでメンバーが作る曲にも感動できなくて、それが悪い影響を与えてるって自覚してたんですよ。それに僕がいいと思えてないけど進行していくことに対して無責任だとも思って。結局それは何が足りなかったのかっていうと確信することだったんですね。
若旦那 へー。それは脱出できたの?
前川 はい、絶好調ですよ。だから今回はもうメンバーや自分が作る曲にも、「大金星」を開けたやつ、その話聞かせてくれたやつ、いろんなことに感謝しながら作品作りに臨めた。愛を持って取り組めたんです。
「俺を信じてほしいよ」
──さて、今回ぜひ聞いてみたいと思っていたことがあるんですけど、お2人が楽曲に前向きなメッセージを乗せて歌う一方で、世間にはメッセージ自体を拒絶しちゃう、熱さに対して冷めた姿勢を取る人も一定数いるように思います。そういう人たちの存在を意識したことはありますか?
前川 うーん……。まぶしいものから目を背けるっていう姿勢を自分らしさって勘違いしてる人はいると思いますね。でもなりたくてそうなってる人っていないんじゃないかな。だって不幸せになりたい人なんて1人もいないだろうし。
──そういった人たちにはアーティストとして何を届けますか?
前川 僕はそこに向けて手を差し伸べるなんておこがましいことは考えてないですけど、最近よく口にしてるのが「俺を信じてほしいよ」って。自分が信頼に値する男だって伝えたいわけじゃなくて、もしあなたが俺を信じた場合、そのぶんの安心があなたに生まれるんだよって。そのために、その言葉がみんなにちゃんと伝わるような人間になりたいとは思ってる。圧倒的な希望とか夢とか、僕からパワーをって大それたものじゃないけど、お互いにとって何かになるよって思うから、最近「信じてちょうだい」って言えるようになってきた。
若旦那 うん。
前川 音楽を通してそういう関係が生まれて、何かが始まればいいなと僕は思ってます。
若旦那 俺は熱がない若者っていうのあんま見たことない。俺の周りにいるやつはすごく熱いから。でも俺とか真悟に対するアンチな感じの若者がいっぱいいるのもわかる。「何それ?」みたいな「そういう音楽めっちゃ嫌なんだけど」みたいな。
前川 ああ。
若旦那 そういうのって絶対いて。でもそんなやつらを冷めてるって形容するんであれば、それこそ一方的なのかなと思ってる。もしかしたらそいつらはボカロとかアニメとかに熱くなってるかもしれないし、みんなどっかしらで熱くなれる要素は持って生きてんじゃないかなって。俺はその熱さにはきっとシンパシーを持てる。結局全員となんてわかりあえないんですよね。でも縁があればアンチテーゼから始まる好きも絶対にあるし、急に接近してくる若者もいる。俺のとこにもし来てくれるんだったら、つながりたいなとは思ってますよね。俺はそれを拒絶はしないつもり。自分からは。
──来る者拒まずというか。
若旦那 そうですね。そして去る者も追わない。まあでも、俺も世の中がそんなに見えてないところがあるっていうか、すごく狭いエリアで生きてるんだけど。
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- かりゆし58 ニューアルバム「大金星」2014年10月8日発売 / LD&K Records
- 初回限定盤 [CD+DVD+小冊子] 4104円 / LDCD-50104/B / Amazon.co.jp
- 通常盤 [CD] 2700円 / LDCD-50105 / Amazon.co.jp
CD収録曲
- 大金星
- Oh! Today
- 青の道しるべ
- 愛を信じている
- RRC
- E.D.O Dance
- アットホーム
- 生きてれば良い事あるみたいよ
- いいよ最高
- フリーなり
- 南風になれ
- 今ならここに
- きっと雨は降らないでしょう
- 大洋と太陽のBBQパーラー
初回限定盤 DVD収録内容
- 「Oh! Today」ミュージックビデオ
- 「愛を信じている」ミュージックビデオ
- ファンクラブLIVEダイジェスト映像
- MV撮影風景、BOOK撮影風景、対談風景などのオフショット
初回限定盤 BOOK収録内容
<メンバーが"会いたい人"との対談企画>
- 前川真悟(Vo, B)×島袋優(BEGIN)
- 新屋行裕(G)×May'n
- 中村洋貴(Dr)×内間政成(スリムクラブ)
- 宮平直樹(G)×宮平勝也(ROACH)
<地元沖縄南部紹介>
- 愛する地元糸満など南部の名所、美味しいお店をメンバーが紹介
<メンバーが語るアルバムへの思い>
- 一致団結で作り上げた今作への思いを各メンバーが語るロングインタビュー
かりゆし58(カリユシゴジュウハチ)
2005年に沖縄で結成。前川真悟(Vo, B)、新屋行裕(G)、中村洋貴(Dr)、宮平直樹(G)からなる4人組バンド。バンド名は沖縄の方言で「めでたい / 縁起がいい」の意味を持つ「かりゆし」と、沖縄 のメインストリート国道58号に由来する。2006年2月にミニアルバム「恋人よ」をリリースし、続くシングル「アンマー」がロングヒットを記録。2009年2月にリリースしたシングル「さよなら」は松山ケンイチ主演ドラマ「銭ゲバ」主題歌に採用され大きな話題を集めた。2011年7月にはベストアルバム「かりゆし58ベスト」をリリース。2013年9月には5thアルバム「8」を発表し、10月から全国47都道府県を回るロングツアーを実施した。そして2014年の10月に6枚目のフルアルバム「大金星」をリリース。11月からは30公演以上のライブハウスツアー「ハイサイロード~大金星~2014-15」をスタートする。
若旦那(ワカダンナ)
1976年生まれ、東京出身。加藤ミリヤやJAMOSAの楽曲のプロデュースを手がけ、自身もこれらの楽曲に客演として参加。2010年3月にはハイチ震災のチャリティソング「いのち~LOVE FOR HAITI~」を配信リリースし、2011年11月にはエイベックスから1stソロアルバム「あなたの笑顔は世界で一番美しい」を発売した。そして2014年には主催イベント「バカヤロ」をスタートさせ、バンドセットのライブも積極的に展開する。そして11月12日には徳間ジャパンの移籍第1弾作品となる3rdアルバム「WAKADANNA 3 ~絶対に諦めないよ、オレは!!~」をリリース。2015年には自己最多となる全国22カ所の「絶対に諦めないよ、オレは!!ツアー2015」も実施する。
- 若旦那 ニューアルバム「WAKADANNA 3 ~絶対に諦めないよ、オレは!!~」2014年11月12日発売 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ
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