音楽ナタリー PowerPush - 前川真悟(かりゆし58)×若旦那
俺たちがあげる“大金星”
かりゆし58が6枚目のフルアルバム「大金星」をリリースした。本作には「今を生きる」をテーマに作られたシングル「Oh! Today」や島袋優(BEGIN)がプロデュースを担当した「生きてれば良い事あるみたいよ」など、前向きなメッセージを朗々と歌ったナンバーが多数収録されている。
ナタリーではアルバムリリースを記念して前川真悟(Vo, B)と、彼の友人でライブ競演や楽曲の共作経験もある若旦那との対談を実施。2人の出会いやお互いが持っているアーティストシップ、そして彼らが抱える“孤独”についても語ってもらった。
取材・文 / 鵜飼亮次 撮影 / 佐藤類
親心みたいなものが芽生えた
──最初、知り合った場所っていうのは?
前川真悟 もう8年近く前なんですけど、僕らがデビューしたてぐらいのときに若旦那さんが沖縄に来ていて、飲んでる席にご挨拶させてもらったことがあったんです。
若旦那 かりゆしも俺らもデビューしたてで。それで次の日にサッカーを。
前川 そう、翌日にやったんですよね(笑)。
若旦那 (笑)。でも最初に会ったときから「なんかすごい子たちだな」っていうか「これからくるんだろうな」って思ってて。そのときの印象が強く残ってたし、関わってる人たちも近かったから、どっかで身内っていう感じがあって。なんていうか親心みたいなものも芽ばえて。
前川 それ、僕もわかります(笑)。
若旦那 それからかりゆしが売れてきたら、「あのときの子たちが本当に夢をつかみ始めてる」って思って俺もすごくうれしかった。東京に来ても沖縄の風をしっかり持ちながら勝負する感じとか、音楽もカッコいいし。途中から俺はファンみたいになってた。「アーティストを追いかけるってこういうことなのかなあ」って思ったね。
前川 そこから数年経って、若旦那さんが去年「一緒に歌わないか」って誘ってくれて。
若旦那 うん。そのときじっくり話をしてみたら、やっぱり似たもん同士、会うべきして会った友達なんだなって思った。ここに至るまでのアプローチとか、傷付いたポイント、夢見てる部分とか、話しながらいろんなところが俺と重なって。音楽を使って自分をどう表現したいのかとか、何を歌いたいのかも似ていたから「同じ生き物なんだなあ」って思った。
前川 僕もまったく同じ印象です。自分の人生を支える音楽とか、あと地元の仲間や家族への感謝の姿勢が似てるっていうか。僕はまだまだひよっ子なんではっきりした答えは出せてないけど、「つかみかけてる何かはきっとそういうことだよね」って言い合えるというか、同じところに向かえてますよね。
若旦那 うん。
前川 若旦那さんは、なんていうか生き方によどみがないんですよ。リアルな毎日の中で自分の弱さに翻弄されながら生きてきて。それに対して強くて優しい何かを持ってなきゃって思いながら今ここに立ってるんだなって。
歌が一番正直に思いを届けられる
──若旦那さんが11月12日にリリースするニューアルバム「WAKADANNA 3 ~絶対に諦めないよ、オレは!!」には前川さんが参加している楽曲「Hey Brother」が収録されています。この曲はどうやって生まれたんでしょうか。
前川 手紙を書こうか、って話をしたんです。
──手紙?
前川 はい。お互いにそれぞれ今どうしてるか気になってる人がいて。その人とどういう関係で、どうして今離れてるかとかを話してて「若旦那さん、手紙書いたことあります?」って。曲作りはそこから始まりました。音楽を構築するってより、心の中で求めてたものを出し合って今何をやるべきかって話をしたんです。
若旦那 俺にとって自分の気持ちを一番正直に届けられる手段が歌なんですよ。言葉だけだと恥ずかしかったり、いきがっちゃったりして。(前川)真悟と一緒に作った曲には、関係が複雑になっちゃった元親友の話が入ってて。たぶんそれは歌にしなきゃいけないトピックだったんだな、生まれるべくして生まれた曲だなって思ったんだよね。やんなきゃいけない時期っていうか。まあ俺はそいつに「お前の曲書いたよ」って直接渡せないんだけど(笑)。
前川 僕もッス(笑)。
若旦那 だから流通使って遠回りに伝えるっていうか。そいつがどっかで「ああ出たんだ」って知って、こそっと買って聴いてたらなって。親に対してもそうなんだけど、音楽を通さないとストレートに伝えられないんだよね。
──若旦那さんのアルバム名「絶対に諦めないよ」っていうのはすごくストレートですね。
若旦那 はい。俺は今38歳で、「この辺なんだろうな」っていう自分の立ち位置がわかってきたんです。それは自分がジェイ・Zとか桑田佳祐さんみたいになれないってわかるみたいなミュージシャンとしての限界も含めて。だけど、わかっててもいかなきゃって。自分の夢に向かって一番を狙えって自分にムチを叩いてる。自分を超突き詰めると、やっぱり「誰にも負けたくねえ」って言ってる自分がいるんですよね。その気持ちがアルバムタイトルにこめられてるんです。
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- かりゆし58 ニューアルバム「大金星」2014年10月8日発売 / LD&K Records
- 初回限定盤 [CD+DVD+小冊子] 4104円 / LDCD-50104/B / Amazon.co.jp
- 通常盤 [CD] 2700円 / LDCD-50105 / Amazon.co.jp
CD収録曲
- 大金星
- Oh! Today
- 青の道しるべ
- 愛を信じている
- RRC
- E.D.O Dance
- アットホーム
- 生きてれば良い事あるみたいよ
- いいよ最高
- フリーなり
- 南風になれ
- 今ならここに
- きっと雨は降らないでしょう
- 大洋と太陽のBBQパーラー
初回限定盤 DVD収録内容
- 「Oh! Today」ミュージックビデオ
- 「愛を信じている」ミュージックビデオ
- ファンクラブLIVEダイジェスト映像
- MV撮影風景、BOOK撮影風景、対談風景などのオフショット
初回限定盤 BOOK収録内容
<メンバーが"会いたい人"との対談企画>
- 前川真悟(Vo, B)×島袋優(BEGIN)
- 新屋行裕(G)×May'n
- 中村洋貴(Dr)×内間政成(スリムクラブ)
- 宮平直樹(G)×宮平勝也(ROACH)
<地元沖縄南部紹介>
- 愛する地元糸満など南部の名所、美味しいお店をメンバーが紹介
<メンバーが語るアルバムへの思い>
- 一致団結で作り上げた今作への思いを各メンバーが語るロングインタビュー
かりゆし58(カリユシゴジュウハチ)
2005年に沖縄で結成。前川真悟(Vo, B)、新屋行裕(G)、中村洋貴(Dr)、宮平直樹(G)からなる4人組バンド。バンド名は沖縄の方言で「めでたい / 縁起がいい」の意味を持つ「かりゆし」と、沖縄 のメインストリート国道58号に由来する。2006年2月にミニアルバム「恋人よ」をリリースし、続くシングル「アンマー」がロングヒットを記録。2009年2月にリリースしたシングル「さよなら」は松山ケンイチ主演ドラマ「銭ゲバ」主題歌に採用され大きな話題を集めた。2011年7月にはベストアルバム「かりゆし58ベスト」をリリース。2013年9月には5thアルバム「8」を発表し、10月から全国47都道府県を回るロングツアーを実施した。そして2014年の10月に6枚目のフルアルバム「大金星」をリリース。11月からは30公演以上のライブハウスツアー「ハイサイロード~大金星~2014-15」をスタートする。
若旦那(ワカダンナ)
1976年生まれ、東京出身。加藤ミリヤやJAMOSAの楽曲のプロデュースを手がけ、自身もこれらの楽曲に客演として参加。2010年3月にはハイチ震災のチャリティソング「いのち~LOVE FOR HAITI~」を配信リリースし、2011年11月にはエイベックスから1stソロアルバム「あなたの笑顔は世界で一番美しい」を発売した。そして2014年には主催イベント「バカヤロ」をスタートさせ、バンドセットのライブも積極的に展開する。そして11月12日には徳間ジャパンの移籍第1弾作品となる3rdアルバム「WAKADANNA 3 ~絶対に諦めないよ、オレは!!~」をリリース。2015年には自己最多となる全国22カ所の「絶対に諦めないよ、オレは!!ツアー2015」も実施する。
- 若旦那 ニューアルバム「WAKADANNA 3 ~絶対に諦めないよ、オレは!!~」2014年11月12日発売 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ
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