ナタリー PowerPush - かりゆし58
話題沸騰「オワリはじまり」も収録! 3rdアルバム「めんそーれ、かりゆし」
かりゆし58の3rdフルアルバム「めんそーれ、かりゆし」がリリースされた。本作は人気テレビ番組「行列のできる法律相談所」でおなじみの「オワリはじまり」をはじめ、多数のシングル曲、タイアップ曲が満載の計14曲を収録。バラエティ豊かな内容は、バンドの柔軟なスタンスを感じさせてくれる。今回はメンバー4人にこのアルバムへの思いを訊いた。
取材・文/遠藤妙子 インタビュー撮影/中西求
ミュージシャンも観客も同じ人間で、音楽はみんなのもの
──ずっと沖縄在住なんですよね。
前川真悟(Vo,B) はい。ここ3年ぐらいは県外で過ごすことが多いですけど。でも住む場所は沖縄がいいですね。
──かりゆし58の今作のサウンドからは、大らかさや太さや柔らかさを感じたんです。それも沖縄の環境が関係あるのかなと思って。
前川 バリエーションを出せてるとしたら、やっぱり沖縄っていう島の、音楽と人の距離がすごく近いからだと思います。みんな歌うしみんな踊る。音楽のジャンルに対してあんまりボーダーがないんですよね。好きなものを好きなようにやるのが当たり前で。
──そういうバリエーションが、今作はより自然に混ざり合ってると思います。バラエティがあるけど、そのバラエティを包み込むような統一感がある。
前川 あ、それはうれしいです。以前は「かりゆし58らしさ」みたいなものについて自分たちでも意識していた時期があって。でも最近ちょっと考え方が変わってきたかもしれません。今までもいろんなサウンドへの挑戦はしてたんですけど、NGな部分を避けながらの挑戦だった。でも自分たちのコアにちゃんと揺るぎないものがあれば、どんな円を書いてもそれは自分たちの円になるってことが、ここ最近やっとわかったんですよね。
──その揺るぎないものって?
前川 すごく漠然としてるんですが、自分たちが歌ってることは人間の根本のとこだと思うんです。それにもとづいて歌ったら、みんなの人生の中に入っていけるものになる。その根本に気付いたというか。実際には僕たちはステージの上に立つわけですけど、僕たちはステージの上にいる人でお客さんは下にいる人っていうことではないと思う。そこに敷居を作ってしまうのは違うと思うんです。みんな各々のフィールドで各々の生き方をしていて、そこに重いも軽いもない。ミュージシャンも観客も同じ人間で、音楽はみんなのもの。僕たちの曲を聴いて「あ、これは俺のものだ」って共感してくれたら、それでいいと思うんです。そういうものを、かりゆし58の世界観を出しながら作りたいんです。
──その考えには、音楽と人の距離が近い沖縄の環境も反映されてるのかもしれませんね。
前川 だと思います。沖縄は、誰にとっても音楽が近くにある場所ですから。
宮平直樹(G) だからライブに行くのもボーリングに行くような感覚なんです。観に行くんじゃなく遊びに行く場所。自分で楽しむ場所なんです。
「オワリはじまり」はいろんな人に当てはまる曲
──今作の最後に収録されてる「オワリはじまり」は、テレビ番組「行列のできる法律相談所」で放送されて大きな反響を呼びましたね。
前川 そうですね。この曲は、みんなとの時間を過ごして、最後のお別れのときに自分は何を言いたいのかって考えて作った曲です。で、僕は「バイバイ」とか「さよなら」とか「またね」よりも「今だよね」って思ってて。明日になったら会えなくなるけど、別れの言葉を交わすその前に今をどれだけ楽しむか。「今日、思い切り楽しんだね」ってことを言ってお別れしたいなって思ったんですよね。
──それが「行列のできる法律相談所」では単身でスーダンに渡った川原尚行さんというお医者さんのドキュメンタリー映像のバックで使われたのも面白いですね。身近な風景を歌った曲なのに、海を越えて新しい生活をスタートさせる、スケール感ある人生を送る人にもピッタリと当てはまる。
前川 川原さんは自分には何ができるかっていろいろ考えて、それまでの生活を捨ててスーダンに行った。それは素晴らしいことで、そこで僕たちの曲が流れたのはすごくうれしかった。だけどどんな人でも大なり小なり覚悟して生きてると思うし、大スターでもクラスでいじめられてる子でも1日の時間の長さは同じですよね。だからこの曲は川原さんにも当てはまるし、いろんな人に当てはまると思うんです。
CD収録曲
- 流星
- 会いたくて
- サマーソング
- さいな
- 風まかせ
- 雨上がりのオリオン
- 予告編
- L.I.F.E.(with中塚武)
- アナタの唄
- 雨のち晴れ
- ララバイ
- ピクニック
- 全開の唄
- オワリはじまり
初回盤DVD収録内容
- 「会いたくて」プロモーションビデオ
- 沖縄旅人(たびんちゅ)めんそーれツアーオフショットムービー
かりゆし58のすべてがわかる! 超豪華150ページ「かりゆしバイブル」付属(初回盤のみ)
かりゆし58(かりゆしごじゅうはち)
2005年に前川真悟(Vo,B)、新屋行裕(G)、中村洋貴(Dr)により結成。バンド名は沖縄の方言で「めでたい/縁起がいい」の意味を持つ「かりゆし」と、沖縄のメインストリート国道58号から取られている。2006年2月にミニアルバム「恋人よ」をリリース。続くシングル「アンマー」が有線でロングヒットを記録し、同年末の第39回日本有線大賞では新人賞を受賞する。2008年には新メンバー宮平直樹(G)が加入し、現在は4人編成で活動中。2009年2月に発売されたシングル「さよなら」はドラマ主題歌に起用され、スマッシュヒットを記録した。2010年8月に3rdフルアルバム「めんそーれ、かりゆし」をリリースし、9月より全国ツアー「ハイサイロード’10~秋の陣~」をスタート。現在も沖縄在住。沖縄で生まれ育った彼らならではの“島唄”を全国に向けて歌い続けている。