KAQRIYOTERRORが1stフルアルバム「アヴァンギャルド0チテン」をリリースした。
昨年8月に新メンバーとしてノア・ロンドとDKIが加入し、現体制を確立したKAQRIYOTERROR。幽世テロルArchitectからの改名後初のフルアルバムとなる今作には「lilithpride」「Persona_」「BWG」など、今年8月以降にリリースされたシングル曲に新曲を加えた計10曲が収録されている。本人たち曰く「より“口撃性”が増した」というアルバムの聴きどころについて、メンバー5人に聞いた。
取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 関上貴也
ようやく戦闘態勢に入った
──改名後にオリジナルのフルアルバムが発表されるのは今回が初めてです。もっと言えば、今の5人はフルアルバムのリリースを経験していないことになります。
聖涙丸 グループの中では最古参の私と季が入ってまだ2年しか経っていないんですよ。この2年で曲はたくさんリリースしてきたんですけど、フルアルバムは初めてで。やっとアルバムが出せてすごくうれしいです。
季 やっぱりアルバムが完成するのってうれしいですね。
心鞠游 これまでのシングル曲もそれぞれメッセージ性が強かったけど、10曲入りのアルバムとして発表することで、そのメッセージ性がより強くなったと思うんです。これからのKAQRIYOTERRORの方向性を明らかにしたアルバムなのかなって。
──KAQRIYOTERRORはデジタルサウンドにラップを乗せるスタイルが特徴的でしたが、最新シングル「BWG」はひときわ激しいインダストリアルロックサウンドだったんですよね。今作では「BWG」とはまた違うジャンルの曲に挑戦していて、いい意味でこれまでの流れを裏切る作品になったのかなと感じました。
心鞠 「BWG」とそのカップリングに収録された「なんちゃらバブルス」が、KAQRIYOにとって新境地を切り開く曲だったんです。今のKAQRIYOならどんな曲でも歌えるだろうという手応えがあったから、いろんなジャンルのデモが届いて、むしろ張り切っちゃいました。
涙丸 幽世テロルArchitectのときは、お祭り感があるような、ワチャワチャした曲が多かったんですが、KAQRIYOTERRORの新曲はちょっと大人びた空気感の曲が増えたかもしれないですね。それに歌詞の内容がどんどんストレートに、“口撃性”も強くなっていると思います。
──歌詞の変化は前回のインタビューでも話に上がっていました(参照:KAQRIYOTERROR「BWG」インタビュー)。
心鞠 シャイで気持ち悪かった自分たちがストレートに思いを伝えられるようになったし、曲調も歌詞も強さが増しているんですよね。5人でのKAQRIYOTERRORがようやく戦闘態勢に入ったというか、「ここからもっと強くなるぞ」という思いが強くなりました。
過去をディスる「Avant-gardE」
──アルバムのタイトル「アヴァンギャルド0チテン」という言葉は皆さんどう解釈していますか?
涙丸 アヴァンギャルドという言葉は「前衛的」「革新的」という意味で、前回のシングルで私が歌っていた「Here is the border line Now is the forefront」という歌詞にも通じていると思うんです。「BWG」の歌詞で歌っていたメッセージが、アルバムのタイトルになることでより強くなったのかなって。
──「0チテン」は?
涙丸 「0チテン」にはちょっと皮肉も込められているのかなと思っていて(笑)。
心鞠 わかる。「まだまだここからだぞ」と言われてる感じ。
涙丸 でも「0チテン」はポジティブに捉えれば「スタート地点」とも言えるんですよね。最前線を行く私たちは今、スタート地点に立っている。だからこのアルバムでもっと先に進んでいくぞ!という意味なんじゃないかなって。
DKI 今の私たちの心境にも合ってると思う。
──1曲目「Avant-gardE」のタイトルにも「アヴァンギャルド」という曲が使われていて、本作の看板になる1曲だと感じました。
心鞠 疾走感がすごく気持ちいいので、絶対にライブ映えする曲だと思います。それに“口撃性”が強く出ている曲でもあるので、インパクトがありますよね。
涙丸 自分が歌っている「賽の目に期待1 or 6」という歌詞が大好きなんですよ。攻めの姿勢で突っ走っていくけど、どっちに転ぶかわからない緊張感。この歌詞のすぐあとがサビなんですけど、歌っていてすごくドキドキしながらサビにつながっています。
DKI 「Avant-gardE」は歌詞で遊んでいる曲だよね。
心鞠 ちょっと昔のラッパーさんが言ってそうな言葉が多いんですよ。「インダハウス」とか「Death 殺生」とか。
──「イェッセッショー(Yes Yes Y'all)」をKAQRIYOTERRORが言うと「Death 殺生」になるんですね(笑)。「無問題」もひと昔前によく使われていた言葉だと思います。
涙丸 無問題エピソード、言っていいですか?
──どんなエピソードですか?
涙丸 車の中で「Avant-gardE」の練習をしているときがあって。「無問題」のところは私と季がスクリームを担当しているんですけど、一緒に歌うときに季が思いっきり「むもんだい!」と歌っていて(笑)。
心鞠 しかもけっこう自身満々な感じで歌ってたんですよ。
季 恥ずかしい……(笑)。
涙丸 「間違ってるわけじゃないけど、違う!」と思って。
ノア・ロンド 誰もが一度は通る読み間違いかもね。何も知らなかったら間違えちゃうかもしれない(笑)。
スタッフ 実は「無問題」の直前の部分は、過去をディスっているんですよ。「怨念ごとうぉーあいにいー再生なし無問題」って。悪いニュアンスで言いたいわけじゃなく、今のメンバーが強くなって塗り替えていく、という意味で。
涙丸 私が歌っているパートですね。そういう意味が込められていたんだ。
スタッフ 「摩訶不思議ズム」という曲の歌い出しが「曖昧妄言うぉーあいにー」という歌詞なんです。GESSHI類(作詞担当)が言うにはそこに被せている歌詞みたいで。
涙丸 本当だ! 歌うときにけっこう気合いを入れたところなんですよ。
ノア そこの涙丸の歌い方、すごくカッコいいよね。ディスりとは知らなかったけど(笑)。
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ゆるく“TEKITWO”なラップ曲