「1113344449990」はなんて読む?
藍井 1曲目の「1113344449990」って、なんて読むのかわからなかったんですけど、これ携帯電話が関係あります? つまり「1」があ行で、「3」がさ行で……。
カノエ 正解です。スマホでこの数字の通りに打つと「あいしてるわ」になるんですよ。フリック入力じゃなくて、普通にタップして。
藍井 あ、そっか。「111」は、「1」と「11」に分けなきゃいけなかったんですね。私は頭の中で3回連続で「1」をタップしたから「う」になっちゃって、「『うしてるわ』ってなんだろう?」と(笑)。
カノエ そう、最初の「1」で一回切らなきゃいけないんです(笑)。
藍井 あと曲名でいうと、「jOKER」の「j」はあえて小文字にしてると思うんですけど、それはなぜですか?
カノエ 「jOKER」は私が夢の中で見た世界をそのまま歌詞にしてるんですけど、そこでは何もかもが反転しているというか、あべこべなんですよ。めちゃくちゃ寒い中でみんな半袖を着ていたり、キッチンにある塩が砂糖みたいに甘かったり。それでタイトルも、普通は大文字にするところと小文字にするところを逆にしてみました。
藍井 なるほど、そういうことだったんだ。
カノエ タイトルからあべこべ感を出すというか「理、捻じ曲げようぜ」みたいな歌です。
藍井 にしても、すごい夢を見るんですね。
カノエ 寝つきが悪いんでしょうね、きっと。
藍井 私も寝つきが悪いタイプで、見た夢もだいたい覚えてます。
──藍井さんが最近見た中で一番ヤバい夢って、どんなのですか?
藍井 チワワの目が爆発する。
カノエ あっはっはっは!(笑) 怖い!
喉が熟すのを待っていた
──アルバムタイトルの「盾と矛」ですが、実は「パズルテレパシー」の歌詞にも「いつのまにか刷り込まれた矛盾を 普通として擦り減らしてく」というフレーズがあるんですよね。
藍井 そうそう。
カノエ 私は物事に対してひねくれた捉え方をしがちというか、あんまり素直に生きてないなと思っていて。だから人様の曲の歌詞にまで「矛盾」という言葉が出てきたりするんですけど、それが今の私が書くべきテーマなのかもしれないです。そもそも人と関わることがすごく苦手なのに、なぜか人前で歌っていたり、もう生き方からして矛盾してるんですよ(笑)。「そういう各種矛盾を抱える自分とはなんぞや?」みたいなことを根暗に考えているので、ソングライティングにしてもそこをいっぱい書いていけば、いつか絡まった糸が解けるんじゃないか……みたいな願いもありつつ。
──一方の藍井さんは、ご自身の中で何か矛盾を抱えていますか?
藍井 矛盾、矛盾……ああ、ホントくだらないですけど「痩せたいのに食べちゃう」とか(笑)。
カノエ あはははは(笑)。
藍井 それぐらいですかね。もともと自分は深く考え込んじゃうタイプだったんですけど、考えすぎると具合が悪くなっちゃうので、最近はわりと「まあ、いっか」と流すようにしていて。何か不安な予感がしても9割ぐらいは外れると思っているので。やりたくないことはやりたくないし、好きなものは好きという感じですね。
カノエ カッコいい。
──「盾と矛」のレコーディングはいかがでした?
カノエ 特に詰まることなくつるっと録れたんですけど、レコーディングで印象的だったのは、全曲違うマイクで録音したことですね。
藍井 ええー! なんでですか?
カノエ 「曲に合うマイクを探しましょう」とスタッフさんと話して、結果的に全部違うマイクになったんです。たぶんいろんな曲が入っているからだと思うんですけど、「同じ人間が作って歌ってるのにそんなことある?」っていう。だからレコーディングはマイク選びからのスタートでした(笑)。ちなみに既発のシングル曲も4曲ともマイクを変えているので、全部で10本のマイクを使ったことになります。
──普通はあまりマイクを変えない?
藍井 だいたい決まってますね。私の場合はハイトーンがキンキンしすぎないようにローが多めに出るマイクを使っていて。最近だったらデジタルっぽいアレンジがされている曲であえてハイを突くようなマイクに変えたくらいです。
──先ほど藍井さんもおっしゃっていましたが、実に多彩な楽曲群ですよね。
カノエ 自分としては全曲シングルカットしてもいいと思うぐらい、それぞれ色濃くて、とんこつラーメンみたいなアルバムになったんじゃないかなと(笑)。
──カノエさんは比較的ストレートなギターポップないしはギターロックを歌われる方というイメージがあったのですが、ジャジーで歌謡曲テイストのある曲も増えましたね。
カノエ もともとそういう方向を目指してたんですよ。でも、デビューした当初はまだ声が若かったというか、ジャズっぽい曲に向いてるボーカルではなかったので「もうちょっと歳をとってから歌いたいな」とずっと思っていて。
藍井 待ってたんですね。喉が熟すのを。
カノエ はい。そろそろ熟成されてきた頃合いかなと。
出番がきたらマネージャーの腕を握る
──「盾と矛」に引っ掛けて、お二人の「オフ(盾)とオン(矛)」についてお話を伺いたくて。つまりプライベートのときとアーティストでいるときとで、どんなふうにスイッチを切り替えているのか。
カノエ 私はステージに立つ直前までは常にオフモードで、ちまちまゲームしたりぼけーっとしたりしてるんですけど、出番直前になったらマネージャーさんの腕を握るんです。毎回ぐぐぐっと握って気持ちを高めて、ステージへの階段を上ると、アーティストのカノエラナに切り替わって「どうもー! カノエラナです!」みたいな。
藍井 うちはバンドメンバーと「エイエイ、ルー!」という掛け声を上げてからステージに向かうんですけど、私はそれよりもちょっと前、ライブが始まる1時間ぐらい前から会場内を見て回って、徐々に切り替えていく感じですね。例えば客席からステージを見て「あそこでこう動いたら見栄えもよさそうだし、お客さん的にも楽しいかな」とかイメトレしたりして。でも本番5分前とかになると異様にテンションが上がるので、藍井エイルになるというよりは、ただの変な人になる(笑)。
カノエ あはは(笑)。
藍井 やっぱり自分が恥ずかしがってたりするとお客さんにもその空気が伝染してしまうので、その変なテンションを引きずるようにしてステージに立っています。
──デビュー当時からそういう感じでした?
藍井 いや、デビュー当時はもう怯えて震えてました(笑)。当時のビジュアルでは口元を隠していたし、初めてのライブが口元を解禁するライブだったので。それがだんだん慣れてきて緊張もあんまりしなくなったんですけど、ちょうど今、活動再開してから初めてのツアーを回っていて、デビュー当時とは違う種類の緊張感を味わっている最中ですね。カノエさんは緊張ってします?
カノエ めっちゃします。でもなんか、緊張する=眠くなるなんです。
藍井 わかる! 私も本番前にあくびが止まらなくて。
カノエ ですよね。だから自分の好きなゲームをやったりして集中力を保っているんです。あとマネージャーさんの腕を握ってからステージに立って、ギターを鳴らした瞬間に「バチーン!」ってもう一段階上のスイッチが入る感覚もあって。逆にいうとギターから入らない曲で始めちゃうと、眠たい空気を引きずっちゃうかもしれない。
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ゲーム以外のことはしていない