「学校でキツかったこと」からできた「シャトルラン」
──アルバムの話も聞かせてください。さっき「カノエラナです。改」はオリジナルからアレンジも変わっているとおっしゃっていましたが、どれくらい変わったんですか?
浅野 オリジナルは僕が打ち込みで作ったものだったんですが、今回は生のホーンも入ってかなり豪華なアレンジになっています。
カノエ もともとはもっとバンドサウンドっぽい感じでした。
──ライブの定番曲でもあるので、初めてカノエさんのCDを手に取る人もこの曲が入っているとうれしいかもしれませんね。そのあとに続く「トーキョー」「おーい兄ちゃん」は浅野さんがアレンジを手掛けた曲です。すでにミニアルバムで発表されている曲ですが、制作時のこぼれ話などあれば教えていただきたいです。
浅野 「トーキョー」はうちで一緒に作ってレコーディングしたよね?
カノエ そうそう。「トーキョー」と「シャトルラン」は浅野さんの家で一緒に作ったんです。
──一緒に作ったのは「シャトルラン」が初めて?
カノエ そうですね。「試しに一緒に作ってみよう」ってことになり、浅野さんの家に行って一緒に作りました。「トーキョー」と「シャトルラン」は私のデモとかも一切なくて、最初にリズムを決めて、そのリズムを流しながら「で、どういうコードにする? 明るいの? 暗いの?」って感じでやり取りをして作っていったんです。とりあえずコード進行を作ってその上に私が「るーらーるーらー♪」と歌メロを乗せて、「それならこっちのコードのほうがいいんじゃない?」って変えていく感じで。
──歌詞はあとからカノエさんが乗せたんですか?
カノエ いや、そのときに一緒に付けています。最初に2人でテーマ出しをして、それを膨らませていきました。
──「シャトルラン」がテーマとして出てきたのはどういうきっかけだったんですか?
カノエ なんか浅野さんと話している中で学校の話になって、「学校でキツかったことって何?」って話からシャトルランが挙がったんですよ。「もう本当にシャトルランがキツくて、あの音階を聴くだけで吐きそうになるんです」って(笑)。
──なるほど(笑)。「トーキョー」は佐賀から上京してきたカノエさんの歌ですよね。
浅野 「トーキョー」は「ヒトミシリ。」「カノエラナです。」に続くラナちゃん自身のことを歌う曲シリーズの3作目的な感じで作り始めました。
カノエ 「トーキョー」に関しては自分のことではあるんですけど、そうじゃない部分もあって。私は東京に出てきて寂しいと思ったことはないので……自分のことをベースにしつつ、人の上京話とかを参考に膨らませていきました。
「サンビョウカン」は原点回帰な曲でもある
──そしてアルバムは「おーい兄ちゃん」を経て、今回のリード曲「サンビョウカン」に続いていきます。この曲は今までのカノエさんだったらリード曲にしないであろうバラードナンバーですね。これをリード曲にするのは相当勇気が必要だったんじゃないですか?
カノエ そうですね。私はこの曲をリード曲にするとスタッフさんたちに言われたときに「えー」と思いました。
──そうなんですか。
カノエ 当時たくさん曲を作っていたんですけど、全部ボツにされていたんですよ。それで「もうヤダ。もう知ーらない」と思って、なんとなく書いたこの曲でOKが出たんです。
──なんでこれがOKだったのか理由は聞きましたか?
カノエ いや、わかんないです。でもそういうこともあるんだなと思いました。「自分がいいと思う曲と周りがいいと思う曲は違うこともあるから、そういう意見も取り入れないと大人になれないぞ」みたいなことを先輩方に言われて、その気持ちを飲み込んだんですけど、今となってはこの曲が形になってよかったなと思います。正直このアルバムの中で一番作るのが大変でした。
──ザ・J-POPなアレンジになりましたね。
浅野 石崎(光)さんの職人芸が光ってるなあと思いましたね。
カノエ この曲、実は夏の曲だったんですよ。でも冬に出すアルバムのための曲だったから歌詞を書き換えて、恋愛要素も入れてほしいというスタッフからのリクエストもあったので、恋愛経験の乏しい私は「恋愛とは?」と思いつつ、妄想の果てにこんな感じになりました。
浅野 そんな紆余曲折がねえ。
──浅野さんは「サンビョウカン」を聴いてどう思いましたか?
浅野 今までとは毛色が違うけどちゃんとポップスとしていい曲だし、シンガーソングライターとしてのラナちゃんの成長が見えるし、いい曲だなと思いました。
──アカペラの歌い出しが印象的です。
カノエ この歌い出しは最初「さーんびょーかーん」とまっすぐに歌っていたんですけど、ちょっとふざけちゃえと思ってコブシを効かせてみたらそれが採用されたんです。
浅野 いいアイデアだと思うよ。
──デビューしてからのカノエさんは明るい曲を多く発表してきましたが、こういう切ないバラードをここで出したのは意味があるんですか?
カノエ 私、もともとこういうほうが得意だったんですよ。昔に戻った気持ちになりつつ、今の増えた知識を取り入れつつみたいな感じです。
──そうなんですか。曲調や歌詞の変化には理由が?
カノエ しっかり聴かせるバラードを歌うアコギを持ったシンガーソングライターの女の子って多いじゃないですか。だからそこで1つ上に上がるにはどうするかと考えて、フックが欲しいなと思ったんですよね。私、マンガを買うときもタイトルの面白さに惹かれることが多いので、そういう引っかかりがあったほうがラジオや街中で聴いた人が気にしてくれるかなと思って。だから「サンビョウカン」は新しい面もありつつ、ある種、原点回帰な1曲でもあるんです。
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リンクする地縛霊シリーズ
- カノエラナ「『キョウカイセン』」
- 2018年2月7日発売 / Warner Music Japan
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初回限定盤 [CD+DVD]
3456円 / WPZL-31411~2 -
通常盤 [CD]
2700円 / WPCL-12822
- CD収録曲
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- カノエラナです。改
- トーキョー
- おーい兄ちゃん
- サンビョウカン
- 恋する地縛霊
- 地縛霊に恋をした
- 嘘つき
- たのしいバストの数え歌
- エスカレーターエレベーター
- ダイエットのうた
- あーした天気になぁれ
- シャトルラン
- ツキウサギ
- ヒトミシリ
- 初回限定盤DVD収録内容
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Music Video
- カノエラナです。
- ヒトミシリ
- シャトルラン
- トーキョー
- おーい兄ちゃん
- たのしいバストの数え歌
- ダイエットのうた
Making of Music Video
- シャトルラン
- トーキョー
- たのしいバストの数え歌
- ダイエットのうた
- カノエラナ「全国キャラバンツアー2018ファイナル ~ぼっちカノエの武者修行、終わりと始まりのキョウカイセン。~」
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2018年3月31日(土)東京都 WWW
- カノエラナ
- 佐賀県唐津市出身の1995年生まれの女性シンガーソングライター。14歳の頃に出場した「唐津ジュニア音楽祭」で、EGO-WRAPPIN'「くちばしにチェリー」を歌って優秀賞を獲得した。高校を卒業した2014年の春に上京し、音楽活動を本格的に開始。Twitterに弾き語りの30秒動画を上げるようになったことをきっかけに人気に火が付き、ライブ動員を徐々に増やしていった。2016年3月に行った東京・渋谷CLUB QUATTROでのワンマンライブはソールドアウト。同年8月にワーナーミュージック・ジャパンよりミニアルバム「『カノエ参上。』」でメジャーデビューを果たした。2017年2月にメジャー2ndミニアルバム「『カノエ上等。』」と、Twitterで公開してきた“30秒弾き語り曲”を30曲収録した“30秒ソング集”「『30秒~カノエの楽しい歌日記~』」を同時リリース。3月から17カ所を回る弾き語りツアー「勇者を探して三千里~ぼっちで広げる旅の地図~」、5月からバンド編成ツアー「とうめいはーん!!!ふくをマネくぜ勇者たち。」を開催し、成功に収める。7月にメジャー3rdミニアルバム「『カノエ暴走。』」を発表。2018年2月に1stフルアルバム「『キョウカイセン』」をリリースし、弾き語りツアー「全国キャラバンツアー2018~ぼっちカノエの武者修行、装備はギターと水のみです。」を行う。3月31日には東京・WWWにてバンド編成のワンマンライブ「全国キャラバンツアー2018ファイナル~ぼっちカノエの武者修行、終わりと始まりのキョウカイセン。~」を開催。
- 浅野尚志(アサノタカシ)
- 1989年10月20日、石川県生まれのサウンドクリエイター。幼少時よりピアノとバイオリンを学び、中学生の頃に独学で作曲・編曲を始める。創作活動の中で、ドラム、ギター、ベースなどさまざまな楽器をすべて1人で演奏するスタイルを構築。カノエラナをはじめ、チームしゃちほこ、でんぱ組.inc、鈴村健一などさまざまなアーティストの作品にも携わる。プレイヤーとしても活躍しており、サウンドプロデュースを手がけるNICO Touches the Wallsのライブサポートも務めている。