“暴走”は自分が試された1枚だった

──ラストを飾るのは「バレンタインのうた」ですね。好きな人へ渡すバレンタインチョコレートに「刻んだ爪」や「手首の血液」を忍ばせるという狂気を感じる内容の曲でびっくりしました。一応聞いておきたいんですが、フィクションですよね？

一応……妄想です。世の中にあふれるバレンタインの曲ってハッピーな感じのものが多いけれど、バレンタインにいいイメージがない人もいると思うんです。そういう人の気持ちになって書いた、ハッピーなバレンタインソングとは真逆の曲です。最初はもう少しライトな感じだったんですけど、これじゃ面白くないなと思ってどんどんハードな内容になっていきました（笑）。30秒動画から生まれた曲だったので、最初はサビしかなくて、アルバムを作るにあたって前後のパートを付けました。これに起承転結をどうつけたらいいんだと思っていたんですが、書き始めたら止まらなかったですね。

──普段はサビから作ることが多いんですか？

30秒動画をTwitterに投稿していた頃はそういう作り方が多かったんですけど、最近はあまりないですね。リフからできる場合もあるし、Aメロからできる場合もあるし、Dメロから作る場合も。いろんなところから作っています。

──ちなみに曲の長さは意識していますか？ カノエさんの曲って2分台から4分台前半までと、比較的短いものが多いですよね。

ライブで相手を休ませずにドドドっとやるようにしたいので短くするのは意図的にやっています。弾き語りでもできてバンドでも映えるというところを想像して作っているので、だれない曲で、ちゃんとオチを付ける、そして間奏を短くを心がけています。言いたいことが多いので早口なんですけどね……。

──確かに歌詞が詰め込まれている印象もあります。あと今回明らかに歌唱スキルがあがってますよね。かなりテクニックを要する曲が多いのでは？

そうですね。メロディが暴れてるんで。アニソン歌手っぽい歌い方もするし、歌のお姉さんみたいな歌い方もしてるし。すごく自分が試された1枚だったなと思います。実はこのアルバムを作っていた時期は例の“武者修行ツアー”と同時期なんですよ。だからツアーでの成長が反映されたアルバムになったと思います。いろんな声を試したかったんで、なんパターンも歌って聴き比べて選んだのが今までにないところですね。

成長がわかる“はじめまして”三部作

──お話を聞いていると、今回は理想の形があってそこに向かってチャレンジしていったのかなと思いました。

自分の理想に近付けたいという思いが非常に強かったですね。もともとは人とコミュニケーションを取るのが苦手で、あまり自分の意見を言えなかったんですけど、今は自分の気持ちを昔より話せるようになって。なんなら誰かと話して生まれることが曲になることに対して「シメシメ……」と思うようになりました（笑）。

──それはいつ頃から？

「『カノエ上等。』」のあたりですね。今まではアドバイスを受けて「わかりました」って感じだったんですけど、自分のやりたいことがわかってきて、“暴走”への扉が開き……（笑）。でもいまだに言えないこともたくさんあるので、成長中です。

──“参上。”、“上等。”、“暴走。”とメジャーデビューしてからの「『カノエ○○。』」シリーズが三部作だったのには驚きました。これは最初からイメージしていたんですか？

はい、そうですね。「カノエ、はじめまして」シリーズと言いますか。私、よく「エラナちゃん」とか言われることが多くて「カノエです！」と3回言えばわかるでしょと思って、三部作にしました。

──三部作を完結させてどうですか？

楽しいものができたんじゃないかなと思います。最初自分が想像していたライブで演奏して、それを観たお客さんが元気になってもらえるような曲がたくさんできたと思います。あと自分の成長がこの3枚でわかりますね。声が全然違う。

──この次の作品の制作は始まってるんですか？

へっへっへ……（笑）。

──何か企んでますね（笑）。7月30日には「『カノエ暴走。』」のリリースパーティが東京・UNITにて開催されます。

この日はボリューム満点のセットリストを用意しているので、来るみんなは楽しみにしていてほしいです。