「盛られておるんですな」から始まった“おっぱい”ソング

──そして3曲目は亀田誠治さんも絶賛の「たのしいバストの数え歌」です。“おっぱい”がテーマになったとのことですが、どのようなきっかけでこの曲は誕生したのでしょうか？

ハロウィンの夜に電車に乗っていたときにあったある事件がこの曲を書くきっかけになりました。ハロウィンなのでゾンビや血だらけのゾンビに仮装した人が電車に乗っていて、電車の中でマネージャーから届いたスケジュールのスクリーンショットを撮ったら、前にいた血だらけの丈の短いナース服の女の人たちに「え、撮られたんだけど」「盗撮じゃね？ キモいんだけど」ってグチグチ言われてしまって。「やっちまったな」と思いながら、電車を降りるときにお姉さんたちの顔をチラッと見たんですよ。そしたらお胸は大きかったんですけど、よく見たらパットが見えていて。「あー！ 盛られておるんですな」「そりゃ世の中いろいろありますよね……お姉さんにはお姉さんの事情があるんだなあ」と思ったら盗撮疑惑をかけられたことに対して「許す！」って思えて。ただ曲にはさせていただこうと思って家に帰ってすぐに曲を作り始めました。

──そんな面白エピソードが……（笑）。なんだか登場するバストのサイズがリアルだなと思ったんですけど、これはけっこう調査されたんですか？

曲を書くときに何カップぐらいがいいのかなと思って、「男が好きなバストのサイズ」とかでググったんですよ。実際にBカップからあのお姉さんくらい盛ることができるのかとかいろいろ調べてリアリティを追求しました。「ABCD……」の部分はカップのサイズ表みたいなのを見ていたらアルファベットが並んでいて、「あ、あの曲じゃん！」と閃いて、そこをいただいて「何カップ？」につなげました。作った当時は検索欄のサジェストがただの男子中学生みたいな感じになっていました（笑）。

──MVはワンカットで撮影されたんですよね。大変でしたか？

めっちゃ走らなきゃいけないし、ルートを覚えてなきゃいけないしで頭をすごく使いましたね。あとギターが日高央（THE STARBEMS）さんのアレンジでかなりロックっぽくなり、細かくストロークしないといけなくなってしまって、トラックとリップを合わせるのが難しかったです。結果めっちゃ面白いビデオになってよかったですし、藤田恵名さんのおっぱいも合法で拝めましたし……。

──あはは（笑）。日高央（THE STARBEMS）さんのアレンジもカッコいいですよね。

今回はオーダーをしてから何度もやり取りをしてこの形になったんです。かなりロック感が出たのでライブ映えする曲になりましたね。歌詞で言うと最後の「Eー女ぁ！」へのつなぎがうまくいったと思いますね。でもまさかこの曲がリード曲になるとは思いませんでしたね。スタッフさんからこの曲をリードにしようと言われたときに「ついにうちのチーム壊れたか！」と思いました（笑）。

2017年、21歳、今だから歌いたい歌

──「ダイエットのうた」はマネージャーさんとダイエットについて話していて思いついた歌だそうで。これも「たのしいバストの数え歌」の内容と通ずる“女子のお悩み”シリーズですね。

そうですね。女子に聴いてもらいたい。でも男の子ももちろん聴いてほしいですね。鍛えたい人にも聴いてほしいです。

──このオチに関してもあるあるですよね。「ごめんね俺のタイプはポッチャリ系」っていう。

それも調べました（笑）。男の人はぽっちゃりが好きらしいです。

──この曲、コーラスがすごいですよね。すべてカノエさんの声ですか？

そうです。レコーディングをするときにいつもはメロディで覚えるんですけど、今回は複雑すぎてひさびさに楽譜を読んで歌うという行為をしましたね。3つ重なってるところに別のフレーズが2つ重なってたりするので完成するまでどうなるのかわからなくて。完成したものを聴いたら「ひえー、豪華になったなあ」って思いました。「たのしいバストの数え歌」もそうですけど、21歳の今しか歌えないなと思って入れましたね。18歳、20歳を過ぎていろいろ解禁されたことだし、中学生のときだったら恥ずかしくて歌えないような内容も歌ってみようと思って。

──「SNS」はタイトル通りSNSについて歌ったナンバーです。クールなロックサウンドに乗せてSNSをやるうえで誰もが一度は感じる不安な気持ちが描かれていますね。

このアルバムの中で唯一の暗い曲です。基本的にカノエラナの音楽は9割が楽しく、1割が闇っていうのを心がけてきたので、そろそろ闇を出してもいいかなと思って書きました。メンタル的にズタズタにしてきて、煮え切らないこの感じは……闇ですねえ。

──SNSに依存することの怖さを描いているので、ある種風刺的な内容でもあるなと思いました。

そうですね。この曲を出すなら今しかないなというのはありました。Twitterとかを見てると「これ誰宛か書いてないけどきっと私のことだろうな」って思うことっていっぱいあるし、ブロックやミュートをされることも少なくない。そういうSNS上の出来事に一喜一憂する時点で自分の気持ちがSNSに支配されちゃってると思うんですよ。「『カノエ暴走。』」はいろんな意味で暴走してる1枚にしたかったので、自分の中だけで暴走していることも入れようと思ってこの曲を収録しました。

──ちなみにSNSはお好きですか？

どっちかと言うと好きですけど、ないほうがいいなと思うこともあります。思い立ったらすぐ発信できるというよさがある反面、簡単に発信できるがゆえに起きる問題も……言いたいことは全部この曲に詰め込んだので、この話はこのへんで（笑）。