感覚ピエロが初のフルアルバム「色色人色」（イロイロトイロ）をリリースした。

このアルバムには、映画「22年目の告白-私が殺人犯です-」の主題歌「疑問疑答」やテレビアニメ「ブラッククローバー」のオープニングテーマ「ハルカミライ」などを収録。彼らが3月から実施する自身2度目の47都道府県ツアーでは、先行チケット購入者を対象に、CD発売前にも関わらずこのアルバムの全曲を無料でダウンロードできるシリアルコードが配布されている。そんな異例のチャレンジで話題になっている今作だが、その内容も一筋縄ではいかない仕上がりで、メンバーも自ら「どの曲もリードとして出せる」自信作だと語っている。

音楽ナタリーでは、感覚ピエロのメンバー全員にインタビューを実施。新作「色色人色」については昨年11月のシングル「#HAL」のリリースタイミングでも少し触れているが（参照：感覚ピエロインタビュー）、今回はアルバムの詳しい内容についてじっくり語ってもらった。

取材・文 / 田山雄士　撮影 / 新元気

頭悪いんでしょうねえ、情報解禁日とか発売日も気にしなくなってきたし

──この取材の時点でまだアルバムは発売前ですが、47都道府県ツアーの先行チケット購入者はCDリリース前の1月7日からすでに全曲無料ダウンロードできる状況です。この試み、実際にやってみた感触は？

秋月琢登（G）　先行チケットを買ってくれる人が多くて、純粋にうれしいですよ。僕らとしても自信作なので、曲ができてレコーディングした瞬間に聴かせてあげたいくらいだったし、早く聴きたいリスナーの気持ちを考えてみて辻褄が合うのかなと。いろんな声を聞くと、よりライブが楽しみになってもらえてるのもひしひしと伝わってきて。やっぱり、やってよかったなと思ってます。

横山直弘（Vo, G）　いち早くアルバムを聴いてくれて、感想まで送ってくれるのはありがたいですね。「この曲も好きなんだ！」みたいな意外性はもちろんあるけど、おそらくアルバムをある程度聴いてくれた人たちがそろった状態でツアーをスタートできるから、この特殊なリリースのやり方をとった意味はライブで実感する部分も多い気がします。「ただCDを出しました」というだけのツアーとは違ってくるんじゃないかと。

滝口大樹（B）　うん、今後わかることがいっぱいありそう。そのへんはお楽しみですね。

秋月　「リード曲しか知らない状態でライブを観る」ってのはないようにしたいもんな。全曲楽しんでほしい。

西尾健太（Dr）　そうだよね。

横山　「YouTubeにMVが上がってる曲はもちろん知ってまっせ！」じゃなくてね。僕らはそれ以外の曲も自信満々で演奏してきたけど、リアクションがちょっと薄いときもたまにあって。でも、今回はそういう状況を減らせると期待してますね。「色色人色」はどの曲もリードとして出せる自信があるし。

──改めて思いますけど、そんなめちゃくちゃ自信のある1stフルアルバムを発売前にファンに配っちゃうバンドってほかにいないですよね。

秋月　いないでしょう！ 頭悪いんでしょうねえ（笑）。

全員　あはははは！（笑）

秋月　なんかね、情報解禁日とか発売日とかも気にしなくなってきたし。言っちゃえば、レコーディング前のプリプロ音源くらいでも配信しようと思えばできるじゃないですか。

──「完璧に仕上がるまで聴かせたくない！」という気持ちはない？

秋月　縛られてる感じがするんですよね。普通なら発売日を決めて、そこまでにみんな落とし込んでいくと思うけど、そんなんよりもただただ聴いてほしい！ なんなら13曲全部のMVを作ってもいい。でも、今の僕らができる新しい取り組みはそうじゃなくて、「わざわざ先行でライブのチケットを買ってくれるんやったら、ちょっとくらい早く聴かせてあげてもいいんじゃない？」ってことだったんです。

僕らの世代はアルバム単位でなくプレイリストで音楽を聴く

──内容的にはどんなアルバムにしたかったんですか？

横山　「感覚ピエロが4年間やってきたカッコいいを全部詰め込もうぜ！」って思いながら制作をスタートさせました。だから無理やり新しいことをやろうとするんじゃなくて、曲に応じて自分たちらしくカッコよくなるように、新しいアプローチにトライしたり、従来のよさをズバッと出したり。その結果、僕らが今やりたいことが13曲それぞれのカラーで出た感じなんですよ。

秋月　「色色人色」ってタイトルも、アルバムを聴いてもらえば納得だよね？

横山　ある意味、取っ散らかってはいるから（笑）。例えば「LOVE GENERAL」って曲は振り切ったアイドルソングなんですよ。でも、そのあとにいきなり重たいムードの「変幻」があったり。「A BANANA」ですごくふざけてるのに、急にシリアスな「0になって」が来たりするので。僕らがこのアルバムで掲げたコンセプトが、全編を貫く何かしらのストーリーとかじゃないのがわかりますよね。

滝口　これだけバリエーションがあれば、通して聴いても飽きはしないと思います。

秋月　聴きにくい曲ってそもそも好きじゃないしね。

──いろいろありすぎるくらいだけど、すごく聴きやすい1枚なんですよね。前回のインタビューで「フルアルバムって疲れる」という話もありましたが。

横山　僕らの世代はアルバム単位じゃなくてプレイリストで音楽を聴くようになってきたと思うんですよ。いろんなアーティストの好きな曲をiTunesの中で並べて自分好みのプレイリストを組む、みたいな。その感じに合うんじゃないかな、「色色人色」って。恋愛したい、スポーツしたい、アイドルを応援したいとか、リスナーはシチュエーションに沿って楽しんだりするから、こんなにバラエティ豊かなのはむしろ心地いいかもしれません。