音楽ナタリー Power Push - KANDYTOWN
ソウル流れる街角のドキュメンタリー
TSUTAYAのギャング映画の棚にあるDVDはみんな観てる
──アルバムではソウルやジャズの音源をサンプリングしていますよね。そういうビートはおしゃれに捉えられることがあって、実際にファッションとして作る人もいるけれど、KANDYTOWNの場合は切なさや夜の熱気、パーティのざわめきを表現するために必然性のあるものだと、話を聞いているうちにわかったような気がします。
Neetz ああ、そうですね。
──KANDYTOWNのアルバムをロマンチックと形容するのは言い過ぎですが、タフさの裏側にある感傷的な雰囲気もこのアルバムの曲から感じます。映画のサウンドトラックのように音が物語をガイドしていくようです。底抜けに明るいパーティっぽい雰囲気もあるし、どこか陰のあるブルージーな雰囲気もある。あまり詮索するのはいけないか、と思いますが、YUSHIさんの死は大きいんでしょうか?
Neetz YUSHIくんはロマンチストだったし、彼の価値観から受けた影響は大きいです。
DONY JOINT YUSHIくんは一時期、MCネームは「ロマン」でしたからね……(笑)。
GOTTZ 一瞬でしたけどね。
──感傷的な風景、パーティの光景が見えるというのは、つまり映画的とも言えると思います。皆さん、映画はお好きなんでしょうか?
DONY JOINT 「タクシードライバー」とかああいう映画は10代からみんな観てましたね。地元のTSUTAYAに行くと、誰かと鉢合わせして、そのあと一緒にDVDを観たり。スパイク・リーが撮ってるデンゼル・ワシントンの映画とか、マフィア映画とかが好きですね。TSUTAYAのギャング映画の棚にあるDVDはBANKROLLのメンバーはみんな観てます。「グッドフェローズ」「スカーフェイス」……。
Neetz 「カリート」。
DONY JOINT 「ミスティック・リバー」。
GOTTZ 「ブロウ」……ああいうギャング映画は最後が悲しくて、そこがいいんですよね。「時計じかけのオレンジ」「パルプ・フィクション」なんかをYUSHIくんのVHSで(笑)観てました。あと「カッコーの巣の上で」も、YUSHIくんに「ジャック・ニコルソンが超カッコいいんだよ」って言われて観せられて、それが記憶に残ってますね。ジャック・ニコルソンが殺されて、インディアンが出ていって……登場人物の気持ちとかを観てる側が察するしかない、そういうのが面白くて。ラップも全部ストレートに表現しても面白くないと思う。そういう曲もあっていいと思うけど、リスナーの考え方、聴き方次第で変わってくるぐらいのが面白いのかな、と思ってる。そういう映画が好きっていうのはKANDYTOWNはみんな共通してます。
離れた都市部を眺めるような、フッドミュージック
──ラップはいろいろな制作の仕方があります。書き溜めておいたリリックがいっぱいあるラッパーもいるだろうし、スタジオに入って即興でやる人もいる。いずれにせよトラック、ビートを聴きながら言葉をはめていくのが一般的だと思いますが、16人もいてどうやって制作していったのか教えていただけますか?
GOTTZ KANDYTOWNのメンバーは音楽的な嗜好のばらつきはあるけど、Neetzが「これでやれ」って言うことはなくて、ほかのビートメーカーも強要しないっていうか、リリックの内容の部分に口出してこない。そこの部分で揉めたりとかはなかったですね。
Neetz 曲を作るときは、まずビートをいっぱい作ってみんなに聴かせるんです。今回はスタジオに集まってみんなにビートをばーっと聴いてもらいましたね。それでみんなが「これやりたい」って手を挙げて。
GOTTZ みんなビートを聴いて「うああ」って反応になるんですよ。ビートメーカーとしてはうれしいだろうけど、誰もラップをするって言わずにトラックが余ったら悲しいだろうな(笑)。みんなが「めちゃくちゃヤバいね」って言ったらうれしいでしょ?
Neetz それだけでめちゃくちゃうれしいよ……ラップをレコーディングし終わったあとよりも、みんなが「うわわ」とかなってるときのほうが俺うれしいかも(笑)。
GOTTZ 今回のアルバムの初回盤のボーナスディスクに入ってる「Oboro」とか、みんな「ヤバいね」って言ってたから、結局全員でラップしてるんだけど(笑)。
──GOTTZさんとDONY JOINTさんのお二方が参加している「Round & Round」についても教えてください。あの曲はどのように作ったのですか? あれもスタジオでビートを聴いて、やりたい旨をNeetzさんに伝えるところから始まったのでしょうか?
Neetz これはDONYにやってもらいたかったんです。で、「やりなよ」って言ったかな。
GOTTZ KANDYTOWNの曲の中では、わりとコンセプトも考えた曲です。
DONY JOINT そういうことはもうGOTTZがいろいろ考えてて……確か会ったとき、もうリリックができてたよね?
GOTTZ パーティに行くけど、そんな騒ぎ過ぎない感じ……六本木じゃなくて二子玉のカフェでやってるぐらいの規模感(笑)。コンセプトというより設定のほうが近いんじゃないですか? 場所はどこで、何時で、誰がいて……。
DONY JOINT シチュエーションは考えますよ。昔はもっとざっくり「東京、夜、パーティ」みたいな感じだったけど(笑)。
GOTTZ そういう曲しかなかったよね(笑)。
DONY JOINT でも、そこから自分たちで設定を広げていく感じで。
GOTTZ 「Round & Round」の設定はCityじゃないんですよ。都市部を眺めてる、ちょっと離れた街からの目線、そういう……。
DONY JOINT ……フッドミュージック。
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- 1stアルバム「KANDYTOWN」 / 2016年11月2日発売 / Warner Music Japan
- 初回限定盤 [CD2枚組] / 4500円 / WPCL-12494~5
- 通常盤 [CD] / 2700円 / WPCL-12469
収録曲
- Intro
- R.T.N
- Twentyfive
- Get Light
- Just Sink
- Evidence
- Good Die Young
- Beautiful Life
- Round & Round
- Ain't No Holding Back
- Amazing(Interlude)
- Feelz
- Song in Blue
- Scent of a Woman
- Paper Chase
- A Bad
- The Man Who Knew Too Much
- Against
- Rainy Night
初回限定盤ボーナスディスク収録曲
- Oboro
- Rap City
- Dejavu
KANDYTOWN(キャンディタウン)
東京・世田谷エリアを中心に活動する、ラッパー、DJ、ビートメーカー、フィルムディレクターからなる総勢16名のヒップホップクルー。メンバーはそれぞれ、BANKROLLやYABASTA、BCDMGなどのほかのグループや、ソロアーティストとしても活躍している。2016年3月に「Reebok CLASSIC」とコラボレートした「GET LIGHT」のミュージックビデオを制作。同年ワーナーミュージック・ジャパンからメジャーデビューし、11月に1stアルバム「KANDYTOWN」を発表した。