成長できるかは自分の問題

──今年3月にはピアノトリオでのライブも行いました。このスタイルも神田さんにとって初のトライだったわけですが、手応えはどうでした？

神田　大阪、東京の2公演だったんですけど、「トリオでやろう」という話になったときは「大丈夫かな？」って思いましたね。赤坂BLITZのときに1曲だけピアノを弾かせてもらいましたけど、最初から最後までピアノトリオでやるってなると、ずっと弾いて、歌うわけじゃないですか。そんなことが現実的に可能なのかなって……。あまりにも不安でリハの前日もよく眠れなかったんですけど、スタジオに入って音をバーン！と出した瞬間に「これはイケる！」って思えたというか。赤坂BLITZのときとまったく同じでしたね。

あらき　そうだね。

神田　もちろん自分に対する物足りなさもいっぱい感じましたけどね。大阪のベースは種子田健さん、東京は西塚真吾（anderlust）くんに参加してもらったんですが、皆さんと共演なんていうレベルでは全然なくて、「どこまで食らいつけるか」という感じで必死でした。自分がしっかりしていればもっとスムーズにやれたなという部分はありつつ、リハを通して皆さんにいろんなことを教えていただいて。

あらき　作曲のスキル、人前で歌うスキルも必要だけど、トリオでやるとさらに育てていかないといけない部分が出てきますからね。すぐに形にはなるんだけど、その先に行かないといけないという段階に彼女は来てしまったから、「じゃあ、どうする？」という話をしながら音を出していきました。アレンジに関してはタイチくんがしっかり見ているし、信じられる人からのアドバイスを受けて、どんどん成長していった印象ですね。

神田　育てていただきましたね、ホントに。知識という名の肥料、お水を与えてもらいました。でも、成長できるかどうかは自分の問題なので。これだけよくしていただいたんだから、あとは自分でどうにかしなくちゃいけないっていう前向きなプレッシャーもあって。

あらき　いいね。

神田　3月のライブのときはあらきさんと楽屋も一緒だったし、いっぱい話もできたんですよ。打ち上げのときも、私がこの先に進むためにどんなことをしたらいいかという話をさせていただいて。その日、LINEを交換したんです。

あらき　そうだね。莉緒香ちゃんがやっているツイキャスのライブが終わった直後に「お疲れ」って送ったり。

神田　ありがとうございます。あと、すごく月並みな言い方になりますけど、「素敵な音を出す人は、その人自身が素敵なんだな」ということも改めて感じたんですよね。

あらき　お！ 何も出ないよ（笑）。

神田　あはは（笑）。今まで一緒に演奏してくれた方々も大好きだし、機会があればまたやりたいんですけど、あらきさん、種子田さんとの出会いがなかったら、今の私はなかったと思うんですよね。もっと上手になりたい、上に行きたいって強く思わせてもらえたのですごく感謝してます。

私が作るデモは食パンみたいなもの

──この経験を次にどう生かすかですね。

神田　そうなんですよ。6月から2カ月に1回のペースで新曲を配信していくんですけど、そこに向けて今制作を続けていて。去年の赤坂BLITZ、今年の春のライブを経て「レベルアップしたな」と思ってもらえるような曲を作りたいと思っているんです。例えばアレンジに関しても、今までは「こんな雰囲気で」ってフワッとしたことしか言えなかったんですけど、自分でヘッドアレンジを作って、もっと具体的に神田莉緒香がやりたい音楽を伝えられるようになりたいなって。

あらき　今もできていると思うけどね、そこは。もちろん「できていないところを自分で育てていてきたい」というのはすごくいいことだけど。

神田　私、ドラムの知識がゼロなんですよ。だからループの編集をしていても「もっとカッコいいフレーズがあるはず」って思うこともあって。私が作るデモは食パンみたいなもので、その上にジャムやバター、タラモなんかを乗せてほしいんですよ。

あらき　なるほどね。もうちょっと一緒に過ごす時間が増えたら、もっと突っ込んだ曲の話ができると思うよ。