「ヤマイ」と「KANAN」の使い分け

──そして、2010年にKANAN名義で「Surf Anime」というカバーアルバムをリリースしたわけですが、そのキッカケは？

メールをいただきまして。その頃は商業、いわゆる流通を通すCDへの参加は、お誘いがあっても自信がなくてお断りしてたんですけど、ある日すごい長文で当時のレコード会社の方、今のマネージャーさんがくどいてきてくれて。ここまで言ってくださるんだったら、みたいな気持ちになり、「じゃあやります」って（笑）。そのとき既に、アニソンカバーの企画という話は伺ってたんです。

──そのメールというのは、ニコ動でヤマイの歌を聴いて、良いと思って、連絡をくださったんですよね。では、なぜヤマイではなくKANANという名前でCDを出したんでしょうか？

ニコニコはヤマイ、ほかのものはKANANっていう使い分けが自分の中であって。ヤマイはニコニコ動画だけの名義にしておきたくて、同人のときからずっと使っていたKANANという名前にしました。KANANというのは、ずいぶん昔、中学生のときくらいから、ちょっと恥ずかしいんですけど詩とか小説を書いてたときに使っていた名前で。その頃は漢字で「華南」だったんです。由来はもう忘れちゃったんですけど、多分字面が綺麗だったからとかだと思います。それをローマ字にしたらアーティストっぽくなるんじゃないかって（笑）。

──なるほど。そして2010年12月、オリジナルのミニアルバム「Memoria」を発表されました。歌詞を書いたのはこの作品が初めてだったんですか？

同人音楽では結構書いてたんですけど、自分の曲でガッツリ全部書くのは初めてだったので大変でした。昔のノートとかパソコンに保存してたものを引っ張り出して、書き加えてみたり。

──最初に歌詞を書いて、曲をつけてもらうんですか？

先に曲をいただいて、その曲を聴いてイメージを膨らませてから歌詞を書きます。

──KANANさんが書かれる歌詞はラブソングが多いですが。

ラブソングが好きなのもありますし、前の職場が女の子ばっかりだったってこともあります。女の子って、集まれば恋バナをするじゃないですか？ で、ずいぶん恋バナを聞かされてきたので、いろんな話が自分の中で積もり積もってるんですよ。だから歌詞を書くときにはそれを頭の引き出しから出して。なので、自分の体験っていうよりは、人から聞いた話が多いですね。自分は恋愛経験があまりないので。そういう、人の恋バナを聞いてると、女の子って待ってるばかりだなあ、こういう内容をどうにか歌詞に書けないかなって思うようになって。だから結構受け身な女性の話ばかり詞に書いてるんです。

ライブできる人はすごいな

──今年の9月には、KANANとして「CandyCore」、ヤマイとして「LobeliaWhip」 と、ミニアルバムを2枚同時リリースされてますね。

最初はKANANだけだったんですけど、ドワンゴさんからヤマイで出さないかっていう話が来て、じゃあ一緒に出したら面白いんじゃないかって。さらに、一緒に出すなら共通性というか、2枚合わせたらこうなる、とか、違うんだけどどこか同じところを作ろうって。だからこの2作では、2枚を合わせると1枚の絵になるとか、KANANのジャケットは写真で、ヤマイのほうは同じ構図だけどイラストにしてもらったりとかして。結構、遊び心が入ってます。

──ヤマイ名義でCDを出したのは意外に感じました。

以前からお話をいただくことはあったんですが、自分のアルバムを出す気はなかったんです。たくさんのアーティストさんが入ってる中の1曲だったらいいけど。でもさんざん言われてきてたし、ファンの方もじらされてるように感じてくださってたみたいで。なので、今回、思い切ってヤマイとしてもCDを発表してみようかと。

──そしてわずか2カ月後、11月にアニメソングをおしゃれかつセクシーにカバーしたアルバム「Eropop Anime」をリリースされました。セクシーというテーマでのレコーディングは、大変だったのでは？

結構ノリノリだったんです。特に「魔法使いサリー」が面白くて！ そういう曲を今回みたいなポップなアレンジで歌う機会なんてめったにないし。レコーディングブースが個室で、窓がないのをいいことに、身振り手振りを交えながらひとりで楽しんでました。

──聞いてるだけで楽しそうですね（笑）。よくアーティストさんと話してると、ライブは楽しいけどレコーディングは大変っていう話を聞きますが。

私はライブのほうが大変だと思います。みんなよくライブよくできるよな、みたいな。レコーディングは気楽ですね。何時間こもってても大丈夫です。ずっと自分で自宅でやってたってこともありますし。