KAN|23歳大学5年生の日々、僕の音楽的原風景

ずっとTRICERATOPSのファン

──「君のマスクをはずしたい」には、今作のもう1組のゲストプレイヤー・TRICERATOPSが参加しています。

彼らには前のアルバムの「胸の谷間」という曲にも参加してもらったんですけど、やっぱり僕が単純にTRICERATOPSを好きなんですよね。2008年頃にイベントで共演して、カッコいいなと思ってから、CDを買ってライブも観に行って。それ以降、一緒に演奏もするしお酒を飲んだりもする友達ではあるんですけど、僕はずっとTRICERATOPSのファンなので、今回のアルバムにも参加してほしいなと思ってたんです。それでこの曲を作り始めてすぐに「ああ、これはトライセラだ」と思いついてお願いしました。

──演奏はトライセラの3人だけで?

KAN

はい、もう完全に3人だけです。イントロにアコギを入れたり(和田)唱くんのギターをダブルにしたりと音は細かく工夫していますが、基本的には3人の演奏で成り立つように作っています。TRICERATOPSのライブでこの曲をやってほしいくらい(笑)。自分の曲を大好きなバンドに演奏してもらえるのはありがたいことですし、レコーディングのときも彼らがこの曲で自分たちは何をすべきかを考えたうえでスタジオに来てくれたので、すごくうれしかったです。

──歌詞やタイトルに「マスク」というワードが登場するのも大きなポイントですね。

メロディ含め5、6月頃に作り始めたので、この曲がアルバムの中では一番新しいです。サビのメロディもマスクという言葉ありきで作りましたし、ハードめのロックサウンドにうまくハマりました。

──そして曲のラストには「カナリボクツライ」というKANさんお決まりのセリフも登場します。

もともとは「WHITE LINE ~指定場所一時不停止~」(1999年発表)という曲から始めたセリフなんですが、ライブでハードロックものを歌うときにわりとよく言っています(笑)。元ネタはQueen「Fat Bottomed Girls」で、フレディ・マーキュリーが「Get on your bikes and ride」と叫んでいるのがそう聴こえたという。昔やっていたラジオ(STV「アタックヤング」)の「空きっ腹にダンゴ」という、いわゆる「空耳アワー」的なコーナーに送られてきたネタなんですけど、すごく気に入っていて僕の中では定番になっています。あと「カナリボクツライ」と言う直前で「I wanna take your mask off!」とシャウトしているところも、フレディをイメージしています。曲の雰囲気はBon Joviですけどね(笑)。

──そんなハードな曲の途中、不意に入るカウベルの「コン!」という音色がコミカルで面白かったです。

ははは(笑)。あれは僕の癖です。ハードめにカッコよくキメるところだからこそ、ああいう気の抜けた要素を入れたくなってしまうんです。ライブでもお客さんが、「えっ?」と一瞬止まってしまうような不思議な感じになるといいな(笑)。

じゃあ、コタツっすか?

──昨年6月に急逝されたヨースケ@HOMEさんとの共作曲「コタツ」についても聞かせてください。この曲はもともと2011年にジョンB(ウルフルズ)さん、菅原龍平さん、ヨースケさんと共に結成したCabrellsのライブのために制作したそうですね(参照:KAN、ジョン・B、ヨースケ@HOME、菅原龍平がバンド結成)。

KAN

はい。Cabrellsのライブでは披露していたんですが、去年ヨースケがいきなり亡くなってしまって(参照:ヨースケ@HOMEが死去、ヘクとパスカルのメンバーとしても活動)。そのあと僕のツアーでも演奏したんですが、やっぱりちゃんと音源化したいなと思って、ツアーのバンドメンバーで録音しました。

──作曲はヨースケさんとKANさんのお二人で?

基本的には彼なんですが、僕がBメロを少し手直ししたのと、「君のことが好きだよ」という展開部を作りました。でもヨースケ自身は「海、太陽、ココナッツ!」というやつなので、最初に僕が「そういうのとは間逆のものをテーマに作って」と話したんです。そしたら「なんだろう? スノボ?」と言うから、「違う! 季節を変えるだけじゃなくて」と返したら、「じゃあ、コタツっすか?」「それだ!」と(笑)。それでヨースケが作ってきたカントリー調の音をベースに作っていきました。歌詞も彼が「あの子がうちに遊びに来て、一緒にコタツに入った」という内容で1コーラス作ってたんですけど、そのあとの展開を聞いたら「どうしたらいいっすかね?」と困ってたので、「好きな子がうちに来たなら、やることは1つだろう……もういい、俺が書く!」となりました(笑)。

──最終的にはKANさんが歌詞を書き上げたと。

そう。でもそのときヨースケが書いてきてくれた歌詞は残しています。一部言葉は変えましたけど、ほとんどそのまま残して完成させました。だから曲はヨースケが7割、僕が3割、歌詞はその逆くらいのバランスでできてます。

──ヨースケさんの追悼ライブ(参照:「絶対に泣いてはいけない! ヨースケ@HOMEツイットーライヴ」開催、KANら集う)が6月に開催される予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止になってしまいました。

残念でしたけど、今年は何もかもしょうがないですよね。でも配信という新しいライブの形も出てきましたし、追悼ライブをやるとしたらそれがいいんじゃないかな。東京で1回だけ開催するよりも、遠くにいるたくさんの方々に観てもらえますし。

──ちなみにKANさんご自身のライブは、今のところ配信でやる予定はないですか?

うーん、考えなきゃいけないとは思っているんですが、単純に僕はあまりやりたくないですね。ライブってお客さんが同じ空間にいて初めて成り立つものだと思っているので。今後世の中がどうなっていくかにもよりますけど、配信という形式がスタンダードになってほしくないというのが正直なところです。「音市音座 2020」(9月に行われたSTARDUST REVUE主催の無観客ライブ)に出たときはバンドセットでまともにパフォーマンスできたのがひさしぶりだったので、それだけで本当にうれしかったんですが、これを自分のワンマンでやるとなると相当煮詰まってくるだろうなと。あと、ライブは非日常的な空間なので、歌がちょっと惜しくてもそれはそれでよかったりする。でも生配信ライブとなると、お客さんだけものすごく冷静な状態でいると思うんですよね。そんなお互いにギャップがある状態で、ライブをやり切る自信がないです(笑)。やっぱり目の前で、大きい音で聴いてもらうという空間の興奮があるからライブは成り立つと思うので。だから早く世の中に元通りになってほしいです。