ナタリー PowerPush - KAN
ルックスだけでひっぱって芸能生活23周年 待望の最新アルバムは1曲目からサプライズ!?
僕自身もASKAさんになる気持ちで
──そして、最後の曲「予定どおりに偶然に」では、ASKAさんとの共演が実現していますね。曲作りはおふたりで進められたんですか?
そうです。最初に僕がモチーフのメロディを2種類出しまして。そのうちのひとつにASKAさんが続きを作って、その続きをまた僕が作って、というのを2往復ぐらいして、今度はまた全然違うものをASKAさんに作ってくださいってお願いしたり。構成とアレンジは僕がやって、どんどん乗っかってきてもらうというやり方です。だいたい2カ月ぐらいのやり取りでひとまず曲を作り上げて、その後に歌詞を。ここで僕らが何を歌うべきかをじっくりと話し合いました。
──これまでそんなに密なやりとりをしたことはあったんですか?
お互いのライブに行き来したり、ラジオのゲストに来てもらったりしたことはあったけど、ちゃんと長時間じっくり話したのは今回が初めてです。
──アーティスト同士としてのやり取りを?
アーティスト同士という意識はないです。単純にASKAさんと話す感じ。もちろん、この曲でどういうことを歌うべきかも当然話しますけども、ASKAさんの高校時代の剣道の話も聞きましたし、とにかくお互いを理解しないと。じゃないと「歌詞どうする?」だけじゃ作ってけないですから。そこにすごく時間をかけて、そんな中から僕が叩き台を作ったんです。「こういうことですよね?」っていうのを作って、それをベースにその先また2人で作り込んでいくという。
──ひとつの曲を一緒に作り上げて、改めてASKAさんという方をどう思われましたか?
いやぁもう、ASKAさんはすごいですね、やっぱり。言葉の表現にも独特の世界が、それこそ哲学的なギリギリのところがASKAさんの作品にはいっぱいあるし。この曲はメロディも歌詞も、ASKAさんの作品として全然違和感なく歌えるようになったら面白いと思って作ったんです。ASKAさんとやる以上、もう僕自身もASKAさんになる気持ちで(笑)。
ルックスだけでひっぱって
──アルバムは全9曲ですが、この全体の流れがとても美しくて、聴いていてすごく充実感のあるアルバムだなと思いました。
ありがとうございます。曲順はすごく大事ですしね。アルバムで9曲というのは、最近だと少ないと思われるんでしょうけど、僕としてはもう、特別に濃いものを作った気がします。自分の過去の作品で言うと13、4曲ぐらい入ってるような感触がありますね。「小学3年生」は軽く2曲分ぐらいですからね。録音に関してもアレンジに関しても、気持ちの上では。「予定どおりに偶然に」は2曲半ぐらい作った感じですよ。
──ファンの皆さんの反応がすごく楽しみです。アルバム発売後はすぐに全国ツアーが始まりますが、ステージの構想はもうできてますか?
もちろん。内容はここでは言いませんけど。ライブについては昔からの基本精神ですけども、僕のことを知らない人、かろうじて「愛は勝つ」は知ってるというぐらいの人が、お友達に無理やり連れてこられたとしても「全部初めて聴いた曲だったけどもめちゃくちゃ面白かった!」と思われたい、という気持ちでやってます。もちろん毎年必ず観てくれるという熱心な皆さんにも「今年はどうするんだろうな」って思ってほしいし。「また来年も絶対観ないといけない」って思ってもらえるように考えてます。
──ちなみにこのツアータイトル「芸能生活23周年記念逆特別 BAND LIVE TOUR 2010 ルックスだけでひっぱって」ですが……ナタリーでニュース記事を掲載したときも、ファンの皆さんの間で大きな波紋を呼びました(笑)。
久しぶりじゃないですかね。普通に、まともに意味が通るタイトルは。
──えっ(笑)。
いつもタイトルに意味はなかったんですが、今回はまぁ23年間、そういうことですよねっていう。音楽性は認められずに、ルックスだけで来ちゃったなと。
──あははははは(笑)。
珍しいケースですよ、僕の中では。そのまんま。
CD収録曲
- REGIKOSTAR ~レジ子スターの刺激~
- 小学3年生
- ピーナッツ
- バイバイバイ (studio recording)
- 青春の風
- ordinary days
- オー・ルヴォワール・パリ
- よければ一緒に (full size)
- 予定どおりに偶然に (with ASKA)
DVD収録内容
約50分収録 / オーディオコメンタリー付
- カンチガイもハナハダしい私のレコーディングドキュメント
- よければ一緒に studio live
KAN(かん)
1962年、福岡県生まれのシンガーソングライター。1987年にデビューし、1990年にリリースしたシングル「愛は勝つ」が大ヒット。200万枚を超えるセールスを記録し、1991年には日本レコード大賞も受賞する。2002年からパリに移住。帰国後の2006年にはアルバム「遥かなるまわり道の向こうで」をリリースし、音楽シーンに完全復帰を果たす。その他、今井美樹やSMAPなどへの楽曲提供でも知られ、桜井和寿、aiko、平井堅ら、KANのファンであることを公言するアーティストも多い。