ナタリー PowerPush - KAN
ルックスだけでひっぱって芸能生活23周年 待望の最新アルバムは1曲目からサプライズ!?
ビッグバンドと「小学3年生」
──続く2曲目の「小学3年生」は打って変わってビッグバンドジャズという、この異常な落差も(笑)KANさんらしいですよね。アダルトなサウンドで、でも歌詞の主人公は小学3年生。このアイデアはどういうところから生まれたんですか?
ビッグバンドジャズは数年前からなんとなく作りたいなと考えていたんです。こういう曲だからアメリカ的に「夢は叶うのさー!」って歌いたいなという漠然としたイメージがあったんだけど、今47歳の僕が「夢は叶うのさ」って言ったところで「えぇーっ?」って感じだし、どうすりゃいいのかなぁと。でも「夢は叶うのさ」なんですよ、曲が求めてるのは絶対に(笑)。で、なぜかふと「オレは小学3年生」という歌詞が出てきたんですよ。本当になぜだかわかんないけど。
──そこからは先はスルスルと?
うん。それからは頭の2行がほぼ同時に、当然のように出てきて。「そうか、小学3年生だったら現実を度外視してもいいし、説明のつく根拠なんか必要ないし。3年生だったら夢はいくら大きくたって全然OKだ!」と、そこから全体の構成を考えて。
──でっかい夢を抱えながら、実に小学生的な悩みが引っかかったり(笑)小学生らしいスケール感が出ていて。その歌詞がジャズのアレンジにしっくりハマってるんですよね。
このアレンジは本当に……これまでの中でも格別に、ダントツに時間がかかりました。ブラスのフレーズが頭の中で鳴ってても、実際にそれをどういう音の積み方にすると思ったように響くのか、なかなかわかんなくて。いろんなCDを聴いて研究していたときに、ASKAさんの「昭和が見ていたクリスマス」という、小さな頃から好きだった歌謡曲やポップスをビッグバンドで歌うというコンサートがあったんですね。それを2階席の一番前で観させてもらったんですけど、その席だとステージ全体を上から見渡せるんですよ。それでね、トランペットやトロンボーンとサックスのセクションがどういうふうに、どういうコンビネーションでやってるかを上から立体的に観ると、もうCDを聴くのとは全く違う。アレンジをより立体的に考えられるようになりました。
──LとRだけのステレオではわからないような構造が感覚的に掴めるんでしょうか。
だからといってアレンジの作業が早くなったわけじゃないですけども、今まで見えにくかったものが考えやすくなったというのはあって。ちょうどアレンジを考えてるときにASKAさんのコンサートを観られたのはラッキーでしたね。
──ビッグバンドジャズだけで1枚アルバムを作ってほしいぐらい、KANさんの歌にしっくりきてるなと感じました。
いやぁ、10曲ぐらいやろうと思ったら、アレンジだけで2年かかると思いますよ(笑)。
TRICERATOPS吉田佳史のドラムプレイ
──「ピーナッツ」と「青春の風」にはTRICERATOPSの吉田佳史さんがドラムで参加されていますが、吉田さんとはそもそもどういったかたちで出会ったんですか?
「LuckyRaccoon」という雑誌に僕は創刊からコラムを書かせてもらってたんですけど、その雑誌のイベントで会ったのが最初ですね。2008年。たった30分のライブだったんだけど、まあビックリしまして。「俺はなんで今までこのバンドをちゃんと聴いてなかったのか」っていうぐらいカッコよくて、それから慌ててCDを買って、ライブもそれ以降はずっと観させてもらってます。その後もイベントで一緒になることがあったりして、「吉田くんにはぜひ一度僕の曲で叩いてほしい」と話したら「よろこんで」とすぐに返事をくれて。
──吉田さんには初めからこの2曲を叩いてもらおうと考えていたんですか?
最初は「青春の風」だけの予定だったんだけど、せっかく来てもらえるんだったら「ピーナッツ」もお願いしたいなと。アルバム用に作った曲の中で、結局入れなかったものが2曲あるんですけど、それも吉田くんに叩いてほしいかな。
──実際に共演してみて、彼のプレイに改めてどういう印象を持ちましたか?
もちろん期待どおり。すごーくカッコいいと思う。本人はもう「緊張する、緊張する」ってずっと言ってましたけど(笑)。
CD収録曲
- REGIKOSTAR ~レジ子スターの刺激~
- 小学3年生
- ピーナッツ
- バイバイバイ (studio recording)
- 青春の風
- ordinary days
- オー・ルヴォワール・パリ
- よければ一緒に (full size)
- 予定どおりに偶然に (with ASKA)
DVD収録内容
約50分収録 / オーディオコメンタリー付
- カンチガイもハナハダしい私のレコーディングドキュメント
- よければ一緒に studio live
KAN(かん)
1962年、福岡県生まれのシンガーソングライター。1987年にデビューし、1990年にリリースしたシングル「愛は勝つ」が大ヒット。200万枚を超えるセールスを記録し、1991年には日本レコード大賞も受賞する。2002年からパリに移住。帰国後の2006年にはアルバム「遥かなるまわり道の向こうで」をリリースし、音楽シーンに完全復帰を果たす。その他、今井美樹やSMAPなどへの楽曲提供でも知られ、桜井和寿、aiko、平井堅ら、KANのファンであることを公言するアーティストも多い。