神山羊|メジャーデビュー作で示すJ-POPアーティストとしての覚悟

カップリングはあえてアナログっぽく

──カップリング曲の「スタンドバイミー」はR&Bテイストのゆったりしたナンバーで、こちらからも神山さんのルーツが見えますね。

はい、R&Bもルーツの1つですね。表題で四つ打ちダンスロックをやったなら、カップリングでこれをやることでいい対比になるのかなと。

──演奏も生楽器で、特にサックスが効いていると思いました。

サックス、超いいですよね。武嶋聡さんという、星野源さんの楽曲でも吹いていらっしゃる方なんですけど、めちゃめちゃうまくて。ただただ「好き」ってなりました。あと「スタンドバイミー」に関しては、あえてアナログっぽい作り方をしていますね。あんまり打ち込み打ち込みした音楽を、今はやりたくないなあと思っていて。

──それはなぜ?

世の中にあふれているからですかね。そういう音が手に取りやすいところにありすぎる気がしていて、僕が今やるべき音楽ではないかなと。もちろんエッセンスとして入れるのは全然アリなんですけど。

──実際、体温を感じる音というか、埃っぽさもあって。

うんうん。公園の陽の光みたいなものをイメージして作っています。というか、この曲は公園を散歩しながら作った曲なんですよ。そこは子連れのお母さんとか、砂場で遊んでいるちっちゃい子供とかがいて。そういう風景を見ながらその人たちの背景を探ったり、あるいは自分の中から出てきたものを曲にしました。

──神山さんは、歌詞とメロディが一緒に出てくるタイプですか?

一緒ですね。なんなら編曲まで聞こえてます。

──「スタンドバイミー」も、歌詞を見なければ、めちゃくちゃポップですね。

うれしいです。ポップに聞こえるようにするというのは僕の中で1つ大きなテーマにしているので。ただ、おっしゃる通り歌詞を読んでいただければ……まあ、どう考えても僕は暗い人間なので、暗い歌詞しか書けないんですけど(笑)。

──「群青」のほうは暗くはなかったですよね。

そうですね。あれは暗くしちゃダメなんで、そこはわきまえています。でも、どちらも伝えたいことはちゃんと伝え切れていると思っています。

神山羊

きれいな曲だったから汚したかった

──「スタンドバイミー」のボーカル録りのことは覚えていますか?

最初に歌ったのを聴いてもらった時点で、けっこうチームに気に入ってもらえたのでそのニュアンスを残しながら。具体的には、がんばりすぎないというか、ちょっと抜き気味で。

──では、たくさんは録らなかった?

全然ですね。これはパッと終わりました。

──歌に入る前に咳をしているのは?

ヒップホップとかでよくありません?(笑) まあ意図としては、キレイな曲だったから汚したかったんですよね。

──「スタンドバイミー」と聞くと、どうしても映画を連想してしまいます。

ですよね。僕も映画の「スタンド・バイ・ミー」が好きだし。

──少年たちが死体を探しに。

僕は別に死体を探しに公園に行ったわけじゃないですよ(笑)。

──わかりますよ(笑)。

でも、その公園に行ったのは朝だったんですけど、実は朝になるまで僕は「スタンド・バイ・ミー」を観てたんですよ。で、寝る前に散歩してこようと思ってふらふらっと出かけたときにこれができたんですよね。そう考えると、曲を作るときによく映画を観ているかもしれません。

──過去には「レオン」をイメージして「MILK」という曲も書かれていますしね(参照:神山羊「ゆめみるこども」インタビュー)。

そうそう。

──何かしらお題を設けて曲を書くという作風と関係あるんですかね。

どうなんでしょう。それこそ「MILK」みたいなケースもありますけど、もともと僕はバンド時代に自分のことは書かないというルールで曲を作っていたので、その名残りのほうが強いかもしれないですね。

神山羊

現場でなるべくたくさんの人に会いたい

──今作のリリースに合わせて東名阪のツアーが予定されていますが、リリース後のライブとしては3月5日の東京・渋谷CLUB QUATTROになりますね(※取材は2月上旬に実施。その後新型コロナウイルス感染拡大の影響により、渋谷公演は6月2日に延期が決定した)。

今回はライブハウスツアーなので、前回よりお客さんとの距離が近いんですよ。僕のお客さんって、あまりライブに行く習慣のない人が比較的多い印象があって。だからこそ、わざわざライブに行くことの意味だったり、現場にしかない楽しさを感じられるような仕掛けをなるべくたくさん用意したいなと思っていて。最初のほうでも言ったように、この「群青」という曲もライブで踊れるようにしてあるから、ぜひ現場で踊ってほしいですね。

──現場を重視する考え方をなさるのは、元バンドマンだから?

うーん、バンドマンといってもシューゲイザーでしたからね(笑)。なんなら聴いていてくれなくてもいいくらいに思ってましたし。たぶん、ボカロを経由して自分がフロントで歌うとなったときに、当たり前なんですけど、ライブでも自分が歌うんだということに気付いたんですよ。そうすると当然、お客さんの顔が見えるわけし、その場を共有することによってよりお互いに楽しみたいなと思い始めたんでしょうね。だから、現場でなるべくたくさんの人にお会いしたいです。

ライブ情報

神山羊 TOUR 2020 群青
  • 2020年2月12日(水)愛知県 ell.FITS ALL
  • 2020年2月13日(木)大阪府 Music Club JANUS
  • 2020年6月2日(火)東京都 渋谷CLUB QUATTRO