陽の「YELLOW」、陰の「青い棘」
──ここからは作品の話を聞かせていただきたいのですが、神山さんはどのようにして楽曲を作っていくんですか?
基本は打ち込みで、ギターとかは自分で弾いてます。頭の中で鳴っているビートにメロディを乗せて、アレンジを詰めていく感じです。
──楽曲の制作プロセスは有機酸時代から同じなんですか?
だいたいは同じですけど、Vocaloidの曲はボカロだからできることを意識していたので内容は違いますね。今後もボカロにピッタリな曲ができたときには有機酸として発表すると思います。神山の曲はまずインチキ英語の歌詞を付けたデモを作って、そこに歌詞をはめ込んでいます。
──ミニアルバム「しあわせなおとな」は、「TV Show(In the Bedroom)」というインタールードから始まり、神山羊として初めて発表した楽曲「YELLOW」に続いていきます。この曲はYouTubeでMVを発表してから3カ月で1000万回再生を記録した人気曲です。
MVは有機酸のときから一緒にやらせてもらっている東洋医学というイラストレーターと作りました。乗りやすいリズムとメロディのキャッチーさを強く意識して書いた曲です。
──力強いビートと引っ掛かりのある歌詞、緩急のあるアレンジに引き込まれる1曲で、過去の曲と比べてもキャッチーさはずば抜けていると感じました。3曲目の「青い棘」は神山さんのルーツにあるR&Bテイストな1曲です。“YELLOW(=黄色)”と“青”は反対色なので、ある種「YELLOW」と対になる曲なのかなと思ったのですが。
その通りです。どちらも去年の夏頃にできた曲なんですが、僕の中にある陽の部分と陰の部分を表現したいと思ったんですよね。Vocaloidを使っていたときは陰な部分を強く押し出して曲を作るようにしていたんですけど、神山羊として曲を作るときにはポップな部分やエンタテインメントを感じてもらえる部分を用意したかった。神山の陽な面を「YELLOW」で、陰な面を「青い棘」で表現できたと思います。「YELLOW」はまあ一般的に明るい曲かと言われると、暗めではあるんですけど、今まで自分が作ってきた曲と比べたら明るいものになったかなと。「青い棘」では今までの自分の文脈にある暗い雰囲気を出せたと思います。
刺激だったPERIMETRONとのMV撮影
──「青い棘」はすでにMVが公開されていて、神山さん初の実写作品として話題を集めています。このMVをはじめ神山さんのアートワークは、King GnuやTempalayの作品のアートディレクションも手がけるクリエイティブレーベル・PERIMETRONが担当していますよね。「青い棘」のMVも独特の空気感を持った素敵な作品でした。
ヤバいっすよね。PERIMETRONにしか作れない世界観で最高の作品ができたと思います。彼らのセンスを信頼していたので、僕は楽曲のイメージだけを伝えてPERIMETRONのShu SasakiとOSRINのアイデアで作ったんですけど、虫が出てくるのにけっこうみんな観てくれました(笑)。僕はPERIMETRONの大ファンなので一緒にできてうれしかったし、めちゃくちゃ刺激を受けました。
──初のビデオ撮影はいかがでしたか?
夜になるのを待ったりもして、半日ぐらいかけて撮影したんですけど楽しかったですね。冬の海辺のハウススタジオで撮影していて、僕はパジャマだったから寒かったけど(笑)。
──朝と夜のシーンがありますもんね。
あ、でも朝のシーンも朝っぽいライティングを組んでくれて夜撮ったんですよ。
──そうだったんですか。ちなみにご自分がMVに出演することへの抵抗はなかったですか?
僕はないですね。これも僕の音楽を伝えるための表現の1つだと思うし、実写でしかできない表現があるなと強く思いました。これからもチャレンジしていきたいです。
──PERIMETRONの作品から影響を受けている部分はありますか?
あると思います。僕はKing Gnuが好きで、彼らの音楽性やマインドはミクスチャーじゃないですか。僕もたぶんマインドがミクスチャーなので、近いところにいる存在だなと思っています。
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ルーツにある音楽×◯◯◯=神山羊サウンド