「ハッピーエンド」はたくさんの方に届いた
──2曲目には“終わった恋”を歌うバラード「Ao」が収録されています。
恋が終わった数時間後、みたいなイメージで作っていただきました。この曲と4曲目の「巡る」に関しては、私のイメージをとことんぶつけさせてもらったんですよ。曲から浮かんだストーリーを私から作詞家さんにしっかりお伝えさせていただくっていう。
──「Ao」はどんなイメージだったんですか?
パッと浮かんだのは、恋が終わって悲しいんだけど、どこかでホッとしてもいるっていうイメージだったんです。相手が年上だったのか、ちょっと背伸びしてお付き合いをしているところがあったんでしょうね。だから、1人に戻ったとき、自分に「ただいま」って言ってあげられる感じ。悲しいだけじゃない失恋の曲になればいいなという思いがあったので。
──切なさもあるけど、すごく落ち着いた声で歌われていますよね。
そうですね。シンプルなサウンドに寄り添うように、自分と同年代の女性をイメージしながら、ブースの照明を落として歌いました。「永遠はきらい」との温度差がすごくあるから「大丈夫かな?」って思ったりしましたけど(笑)。
──まあでも、今回は5曲ともカラーが全然違いますから。それが大きな魅力ですよね。
はい。「このアルバムには一貫性ないですよ」「まったく違うタイプの曲がここから5曲来ますからね」っていう示唆は最初の2曲でできたと思います(笑)。
──3曲目は先行配信されていた「ハッピーエンド」です。この曲はサブスクリプションサービスで(2019年6月現在)300万回再生を記録しているそうですね。
配信がスタートしたとき、たくさんの喜びの声をいただくことができて。それは、この曲を主題歌として使ってくださった映画(「L♡DK ひとつ屋根の下、『スキ』がふたつ。」)と、共演のお二人(杉野遥亮、横浜流星)のおかげでもあるとは思うんですけど(笑)、たくさんの方に届いたことが本当にありがたかったんです。だから改めて今回CDに収録することで、さらに多くの方々に愛される曲になってほしいですね。
音楽をやっていると自分の核に迫られる
──4曲目は「巡る」。この曲に対して注いだ萌音さんのイメージは?
高校生くらいの時期に味わう、心の叫びを表現した恋の歌を歌ってみたかったんです(笑)。クラスではあまり目立つタイプではないけど、でも実はギターを弾ける“僕”が片思いの気持ちを歌ってみました、みたいなイメージで。
──サウンド的にも、萌音さんがギターをジャカジャカかき鳴らしながら歌う画が浮かんでくるものになっていますよね。
そういうサウンド感ですよね。まあ、実際は弾けないんですけどね、私は(笑)。でもそういう気持ちで歌ったところはありました。
──そしてラストは、ご自身が作詞を手がけた「ひとりごと」。ラブソングではあるけど、恋愛だけにとらわれない、もっと大きな思いを描いている印象もありました。
そういう曲にしたかった……というか、恋に焦点を当てた詞がどうしても書けなかったんですよ。恥ずかしくて(笑)。だから書いているうちに、広い意味で言いたいことを言えない人の曲にしようって思いました。
──テーマで言えば“誰にも言えない思い”ということになるんですかね。恋心を含めて。
そうですね。実際、私も自分の思いをなかなか言うことができないタイプなんですよ。ついオブラートに包んでしまいがちというか。でも、世の中には同じような人がきっとたくさんいると思うので、自分の思いを伝えられない人がちょっとでも救われる曲になればいいかなという気持ちで書き進めていったところはありました。
──萌音さんの姿がリアルに投影されているフレーズも多いですよね。「この街のスピードで わたしまだ素直に歩けないの」とか。
そうです、そうです。そこはもう私自身のことですね(笑)。この曲はレコーディングしながらも「この歌詞でいいのかな?」って何度も立ち止まって悩み、書き直したりもしたんですよ。言葉を変えて変えて、でも結局元に戻したりっていうこともありましたし。だからこそ思い入れの強い曲にすることができたなとは思いますね。
──ひさしぶりのリリースとなるCDは、ご自身の歌への愛情が詰め込まれ、非常に充実した内容になりましたね。
はい。ひさびさのレコーディングを通して「やっぱり歌うことが好きだ!」って思うことができました。演技のお仕事以上に、音楽をやっていると自分の核に迫られている感じがするんですよ。自分自身から逃げられなくなるくらい、しっかり向き合わなきゃいけないので。今回もそうやって逃げずに、自分にぶつかって作ることができた1枚なので、いい形で皆さんの元に届いたらいいなと思います。そしてここからも枠にとらわれず、いろいろな曲に染まりながら自分を表現していきたいですね。