遊び心がこぼれちゃってるボーカル
──「永遠はきらい」の歌に関しては、どんな部分を意識しましたか?
歌い方についてはいろいろ考えたし、いろいろ試したんですよ。でも、曲自体にものすごくパワーと雰囲気があるので、まっすぐに歌ってしまったほうがいいんじゃないかという結論に達しまして。とにかく言葉を大切に、メロディの揺れ動きとリズムの立て方を大切にしながら、あとはもうストレートに歌ってみましたね。
──なるほど。でも1曲の中でくるっと表情を変えるところがあったりもしますよね。
思わせぶりな人ってポーカーフェイスの人が多いと思うんですよ。基本的に表情があまり変わらない。でも、ふとしたときにまったく違った表情を見せたりもするじゃないですか。そういう部分に人は惹きつけられるような気がするんです。だからこの曲の歌に関しても、そういう部分を表現できたらいいなと思いました。基本はまっすぐ、ニュートラルに歌ってるけど、ところどころでちょっとトリッキーに息を混ぜてみたりとか、「ここで行く?」みたいなところで強く歌ってみたりとか。そういう意味では、歌いながら駆け引きをして、遊び心がこぼれちゃってるみたいな感覚がありましたね。
──その遊び心を入れるポイントはご自身の判断で?
はい。もちろん考えたところもありますけど、基本は歌ってる中で突発的にやりました(笑)。後ろで鳴っている音や、言葉の響きに導かれるように生まれた表現が多かったと思います。
──そういう意味ではライブに近い感覚で臨めたレコーディングだったのかも。
そうかもしれないです。でも実際にライブでこの曲を歌ったらどうなるのかは、けっこう未知数ではありますね。今まで歌ってきた曲にはあんまりないタイプだから、お客さんがどう受け止めてくださるか楽しみです。ライブ映えしそうな曲でもあるし、「食べてもいいよ」のフレーズを歌うときに客席の誰を見ようかなとか、いろいろ考える楽しみもありますよね(笑)。
──あと、ところどころでYUKIさんっぽい歌い方が出ているような印象もあったんですけど。
YUKIさんが歌っているデモを聴き込んでからレコーディングに臨んだので、その世界観を大事にしたところは間違いなくあると思います(笑)。もともとYUKIさんのことが好きだっていうのもありますし。デモで、メロに対する言葉のはめ方なんかではYUKIさんっぽさをすごく感じるところもあったので、ファンとしてはもううれしくてうれしくて。
──YUKIさんの世界観に引っ張られるのはもうしょうがないことだと(笑)。いやでも、しっかり萌音さんの曲として仕上がっていると思いますよ。
そうであったらうれしいですね。自分としては大きな挑戦になった曲でもあるので、これが聴いてくださる方にどう届くかがいつも以上に気になるところではあります。
「好き」という感情を伝えるための駆け引き
──しかし、「永遠はきらい」ってタイトルのインパクトもすごいですよね。
衝撃ですよね(笑)。人が恋するときってどうしたって永遠を願うものなのに。この曲の主人公は衰えていくもの、変わっていくものがイヤで、今を密封したいという気持ちが強いのかもしれないですね。
──そう考えると、思わせぶりな態度だけど、その根底にある感情はすごくピュアなのかも。
それは私もすごく思いました! 根底にある「好き」という感情を伝えるために、この子は駆け引きという方法を取っているだけっていう。複雑なようで、気持ちは一直線なんだと思います。やっぱりYUKIさんの書く歌詞は素敵ですね。
──で、この曲のミュージックビデオがまた面白い仕上がりで。違った個性を見せる3人の萌音さんが登場するという。
不思議な雰囲気ですよねえ。曲自体に魔球みたいなところがあるので(笑)、MVに関してもそれにふさわしい、アーティスティックな世界観のあるものを作ろうっていうことになりました。後付けでいろいろな意味を持たせることもできるけど、でもそこはもう観た人がある意味驚いてくれたら本望だなという感じです(笑)。
──MVに登場する3人の萌音さんは、1人の女性の中に存在する違った人格なのかなと思いながら僕は観たんですけどね。
そういった意味合いにも取れますよね。“思わせぶり”という意味では、自分の中の定まらない思いを表現しているように感じる人もいるだろうし。曲自体、聴く人ごとにいろんな受け取り方ができると思うので、その多面性を映像でもしっかり表現していただくことができてうれしかったですね。
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「ハッピーエンド」はたくさんの方に届いた