音楽ナタリー PowerPush - 川谷絵音(indigo la End、ゲスの極み乙女。)×かみぬまゆうたろう×休日課長(ゲスの極み乙女。)鼎談
3人が語る「あの頃」と「音楽」
狭い範囲でしかやってこなかった
──今回のアルバムはかみぬまさんにとって1年ぶりのアルバムですね。この1年、3人ともいろいろなことがあった年なんじゃないかと思います。
かみぬま そうですね。2014年はレーベルと一緒にやっていきましょうってことで二人三脚の体制になって1stを出して、ツアーで地方とかも行くようになった。ずっと1人でやってたから心強かったというか、1人じゃない感が増した。これまで活動もすごく狭い範囲でしかやっていなかったので。
川谷 僕もなんか本当に自分のことじゃなかったかのような1年でしたね、人生が変わった。indigo la End辞めて仕事し始めた課長をまた音楽の世界に引っ張りこんだし。
課長 ホントそう、人生変わっちゃった(笑)。あのときは本当に悩んだ。
川谷 4月にindigo la Endとゲスの極み乙女。がメジャーデビューして、フェスに出たり「ミュージックステーション」に出たり、あと年末に喉壊しちゃったりとかも含めてひと通りのことは経験して。怒涛の1年だったなって思う。レコーディングも何回したかわかんないくらいしたし。
課長 インディゴもゲスもだもんね。
川谷 本当に365日のうち休みが10日くらいしかなかった。音楽業界にどっぷり浸かった1年でしたね。楽しいことばかりじゃなかった。それに責任というか、自分が音楽をやっていく上で、いろんな人を巻き込んでいるんで、僕以外のメンバーの人生を請け負う1年なんだなとも思ったし。
かみぬま テレビは単純にすげーって思った。「出てる!」って。
川谷 でもテレビとか出て周りから「有名になったね」って言われても、全然そんな気がしてないし、いろんな人から自分が見られることも増えて、それに対して考えたりすることのほうが多かった。自分が発信する言葉の重みっていうのも考えるようになったし、自分の音楽にウソがあっちゃいけないなって。
“シーン”への違和感
──自分たちが身を置いている音楽シーンについてどう考えていますか?
かみぬま シーンっていうのはまったく意識してなかったけど、最近はゲスや周りの友達がどんどん知られる存在になってから意識するようにはなりました。
川谷 最近だとフェスシーンというか、ワーッて盛り上がれる音楽が目立ってる気がしますね。それがいいとか悪いとかっていうより、たまたま僕らがその中にいるからそう感じるんですけど。最初ゲスの極み乙女。が「踊れる」っていう括りっていうか、そんなにビートも速くなかったはずなのに、いつの間にか「高速ビート」って括りに入れられてて。
かみぬま はははは(笑)。
川谷 それから四つ打ちのロックっていうのがジャンルみたいになってきて、どんどん違和感が出てきた。フェスとかもイヤとかじゃないんだけど、僕らのいる場所はここじゃないんだなって思いましたね。
課長 “四つ打ちロック”のジャンル化はずっと疑問だった。何かを表現したいときの手段であればいいんですけど、それにしばられるっていうのは本質的じゃないですよね。たまたまやろうと思ってたことであって、それで括る必要はないかなあと。
いいものはいい
川谷 もともと僕はJ-POP好きで、自分の音楽をいろんな人に聴いてもらいたいって思っていたんです。去年の10月に出したゲスのアルバム(「魅力がすごいよ」)は速い曲をほとんど入れてなくて、メンバー4人が好きな歌心のある作品を作ったんですよね。リリースして、ツアーでお客さんがそれを聴いてくれてるっていうのを見ることができたし、数字としても結果を出せた。だからもう広い意味で音楽のことを考えたらシーンは関係ないんだなって。過去にみんなでイベントを始めた当時は今のシーンをひっくり返そう、自分たちでシーンを作っていこうって考えてたんですけど、今は自分たちのやりたいことをやっていけたらいいんだって思いましたね。
かみぬま 単純にいいものはいいって。できる範囲でいいものを作る。自分ができる一番いいものを見せる、それに世間が引っかかったらシーンというようなものが生まれるかなと思った。まあシーンのほうからこっちに近づいてほしいなとは思うけど(笑)。
川谷 そう。かみぬまさんも僕も変わらないと思う。この括りだから聴く、聴かないっていうのは選択肢を狭めちゃってもったいないなって思うし。でもそういう状況は変わらないだろうから、まずは自分たちが売れればって思う。
かみぬま 売れたい。やる以上は聴いてもらわないとやる意味がないみたいなものだと思うし。自分の音楽が素晴らしいと思えれば売れなくてもいい、みたいな考えって間違ってると思う。いいものはいいし、売れるべきだと思うんですよ。
川谷 でもそれは難しくもあって。いいものはいいけれど、見せ方を変えることでワッと売れたりっていうのもあるんですよね。僕はこの1年はすごく難しさを感じました。ゲスも最初は音よりもメンバーのキャラクターのイメージが先行してたんで。まあそれは僕がやったことなんですけど、ドラムにほな・いこかって名付けるみたいなところとか。最初にそういうイメージがあると、穿った見方で扱われたりもするんですけど、だったら観てもらった上で自分たちの音楽はこういうものだって音で説得していかなきゃだし。説得できたからこそ今の自分たちが右肩上がりの状態でいられると思うんです。
かみぬま それ、すごく説得力あるね。
収録曲
- 傷口
- ちいさな背中 -フィドルバージョン-
- あなたが眠っているうちに
- ハローグッバイ
- Moon River
- 真夏の夜の事
- うるさい彼女
かみぬまゆうたろう単独公演
「となりのへやではきみがないている」
- 2015年3月7日(土)大阪府 digmeout ART & DINER
出演者
かみぬまゆうたろうバンド
ゲスト:蔡忠浩(bonobos) - 2015年3月8日(日)愛知県 K.D ハポン
出演者
かみぬまゆうたろうバンド
ゲスト:蔡忠浩(bonobos) - 2015年3月13日(金)東京都 渋谷7th FLOOR
出演者
かみぬまゆうたろう(弾き語り) - 2015年3月14日(土)東京都 渋谷7th FLOOR
出演者
かみぬまゆうたろうバンド
ゲスト:佐藤良成(ハンバート ハンバート)
かみぬまゆうたろう
東京出身、1988年生まれのシンガーソングライター。1923年製のMartin O-18で素朴なメロディを手に2009年から都内のライブハウスやストリートで活動を開始。2010年には自主制作の音源集「初期のかみぬまゆうたろう」を発表し、以後はツーマンライブシリーズ「ゆうたろうくんと〇〇さん」の定期開催や自身のバンド・かみぬまゆうたろうとパートタイマーズの結成など活動の幅を広げている。2014年2月にギャラクティックより1stアルバム「かみぬまゆうたろう」をリリース。10月に初恋の嵐のカバー「真夏の夜の事」を収録した会場限定シングル「傷口」を発表した。2015年2月に2ndアルバム「となりのへやではきみがないている」を発表する。
- かみぬまゆうたろう
- かみぬまゆうたろう 2nd album「となりのへやではきみがないている」
- かみぬまゆうたろう(@KaminumaYutaro) | Twitter
- かみぬまゆうたろうの記事まとめ
indigo la End(インディゴラエンド)
川谷絵音(Vo, G)、長田カーティス(G)、後鳥亮介(B)からなるロックバンド。ゲスの極み乙女。のメンバーである休日課長(B)もかつて在籍していた。2010年2月より活動を開始。2012年4月、unBORDEより1stミニアルバム「さようなら、素晴らしい世界」をリリース。2013年5月には初のワンマンツアーを東名阪で開催する。2014年4月にミニアルバム「あの街レコード」でメジャーデビューを果たし、同年8月に出演した野外フェス「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2014」のステージでこれまでサポートメンバーとしてバンドに参加していた後鳥が正式加入。9月にシングル「瞳に映らない」をリリースした。2014年12月の「COUNTDOWN JAPAN14/15」のステージをもって、約5年間バンドに在籍していたオオタユウスケ(Dr)が脱退。2015年に2月にメジャー1stフルアルバム「幸せが溢れたら」をリリースする。
ゲスの極み乙女。(ゲスノキワミオトメ)
川谷絵音(Vo, G, Syn)、休日課長(B)、ちゃんMARI(Key)、ほな・いこか(Dr)による男女混合4人組バンド。2012年5月に川谷を中心に結成。2013年3月に1stミニアルバム「ドレスの脱ぎ方」、同年12月にリリースした2ndミニアルバム「踊れないなら、ゲスになってしまえよ」を発表し、独自のポップなメロディが高い評価を得る。2014年4月、unBORDEよりメジャーデビューミニアルバム「みんなノーマル」をリリースし、6月から7月にかけてワンマンツアー「ゲスにノーマル」を開催した。10月に1stフルアルバム「魅力がすごいよ」を発表し、全国ツアー「ゲスな魅力?」を展開。2015年には1月から2月にかけて「ゲスな魅力?」の追加ツアー「ゲスでいこかvol.3」を実施中。