ナタリー PowerPush - カミナリグモ
ツアーを経て進化した理想のバンドサウンド
カミナリグモが、ミニアルバム「SCRAP SHORT SUMMER」からおよそ5カ月ぶり、フルアルバムとしては1年ぶりとなる新作「SMASH THIS WORLD!」を完成させた。ナタリー2度目の登場となる今回のインタビューでは、コンスタントに作品を発表する彼らの創作スタンスや、2本のツアーを経て大きく変化したという現在の心境について話を訊いた。
取材・文 / 臼杵成晃 インタビュー撮影 / 中西求
収穫の多いツアーだった
──前回のインタビューの後は、山中さわお(the pillows)さんの企画する対バンツアー「SAWAO VS. YOUNGSTER」、そしてミニアルバム「SCRAP SHORT SUMMER」を携えてのリリースツアーがありました。異なる2本のツアーを回って、各地のお客さんの反応はいかがでしたか?
上野啓示(Vo, G) さわおさんとのツアーは、僕らとシュリスペイロフとLOVE LOVE LOVE、若手3バンドとさわおさんで回ったんですけど、形としては大先輩が若手バンドを連れ歩くツアーですね(笑)。僕ら3バンドはライバルという部分もあり、認め合っているところもありで、毎回が真剣勝負でした。自分たちがいいライブができるとうれしいし、逆に「やられた!」っていう会場もあったし。切磋琢磨しながら、バンドとしてタフになれたかなと思います。
──世代的にも、立ち位置的にも近い3組と言えますよね。
上野 3組とも共通する部分はあるんですけど、表現の仕方が違うというか。意識はするし、負けたくないとも思うんですけど、同じレールに立つんじゃなく、自分たちなりのいいライブをやるのが一番だと吹っ切れたのは収穫でしたね。
──カミナリグモとしてのライブができればいいと。
成瀬篤志(Key) はい。やっぱりこの顔ぶれで回るツアーということは、各会場に集まっているお客さんも……届いてほしい層というか、僕らの音楽を身近に感じてくれる人が多かったと思うんですね。さわおさんのツアーで僕らを初めて知った人が、その次のツアーにもう一度来てくれたり。今まで知り合えてなかった、いいお客さんに出会えたっていう意味でも、すごく収穫の多いツアーだったなと思います。
上野 その後の「SCRAP SHORT SUMMER TOUR」は、特に地方だと動員が今までの倍ぐらいになって。新作を引っさげたツアーではあるけど、初めてのお客さんにとっては全部が新曲なんですよね。その前のアルバム(メジャー1stフルアルバム「BRAIN MAGIC SHOW」)の曲をやってても、前回のツアーとは反応が全然違ったりして。ちゃんといいアルバムを作ってたんだなって実感できたし、新たに知ってくれた人たちがまっさらな状態で僕たちの音楽を聴いて「いいバンドだな」と判断してくれたのなら、こんなにうれしいことはないですね。
作曲は時間さえあればいくらでも
──1stフルアルバム、ミニアルバム、そして2ndフルアルバム「SMASH THIS WORLD!」と約半年おきのリリースですが、かなりハイペースですよね。
上野 よくそう言われるんですけど、「SCRAP SHOT SUMMER」は僕らの中ではシングルと同じなんですよ。表題曲とカップリングの曲っていう。僕らはスタンス的にシングルをせっせと売る感じでもないので(笑)、だったらトラックもの(打ち込み)の楽曲をいくつか用意して、気軽に手にとってもらえそうなミニアルバムにしましょうと。
──トラックものとバンドものをフットワーク軽く行き来できるというのは、カミナリグモのスタイルならではの利点かもしれないですね。
上野 ちゃんとベーシックのリズム隊がいるバンドサウンドが理想ではあるんですけど、状況によってできることはなんでもしたいというか。
──フットワークが軽いとはいえ、曲数としては相当な数ですよね。いわゆる“難産”なタイプではない?
上野 曲は作れと言われればいくらでも作れますね。時間さえあれば。よくアルバムを出すにあたって「アルバムタイトルができてから曲を作るんですか?」って訊かれるんですけど、タイトルが決まって全体像が見えた後に作るのはアルバム中2~3曲で、基本的には常日頃作ってある曲から選んで、全体像を絞っていくんです。
──難産タイプのアーティストにとってはうらやましい話かもしれない(笑)。
上野 そりゃ「誰もが感動する名曲を書け」と言われれば苦労しますけど、「シングルのカップリングが何曲か増えます」って言われたら「じゃあ書きます」って即答できるタイプのソングライターではあります。それは自分のミュージシャンとしての一番の武器だし、才能なんだと思う。でもそれ以外のことは逆に人よりがんばらないといけなくて。
──バンド内に“楽曲製造機”がいるのは、ghomaさんとしては心強いですよね。
成瀬 スケジュールが空いたときは2人でプリプロをやるんですけど、毎回「こういうのできた」って持ってくるんですよ。それを聴くのが単純に楽しみでもあるし。
上野 ただ単に曲を作るのが好きなんですよ。元々絵を描いたり文章を書いたり、もの作り全般が好きで。その中にたまたま音楽があって、長いことやってたら完成度が高くなってきて、今のカミナリグモがあるっていう。なのでちょっと道を間違えれば、っていうと変ですけど、ほかのことに没頭できる環境が身近にあって、評価されてしまっていたら、僕は音楽をやってなかったかもしれない。……でも音楽活動は人前に立って楽しませたり、見た目に気を使ったり、いろいろあってのものだと思うので、クリエイターとして音楽を選んだのは失敗だったなって思ったこともあります。
── あははは(笑)。
上野 曲だけ作れたらいいやと思ってたけど、実際はそうも言ってられない。いろんなことが必要で、それは自分が苦手なことだったりもするので(笑)。
CD収録曲
- ベランダの革命
- November Fools
- Smash this world!
- SCRAP SHORT SUMMER -album mix-
- カスタードクリーム
- Delicious Moon
- ブラインド フォトグラファー
- 眼つぶしの砂
- 白い雨
- Witchy Girl
- 美しい世界
- Foolish Music
DVD収録内容
- 「ブラインド フォトグラファー」Music Video
- 「SCRAP SHORT SUMMER」Music Video
ブラインド フォトグラファー
SCRAP SHORT SUMMER
INSTORE LIVE TOUR
- 2011年11月 5日(土)
東京都 タワーレコード新宿店 7F 19:00~ - 2011年11月 6日(日)
埼玉県 浦和パルコ 4F 15:00~ - 2011年11月12日(土)
大阪府 タワーレコードNU茶屋町店 6F 14:00~ - 2011年11月13日(日)
愛知県 HMV栄店 12:00~ - 2011年11月13日(日)
静岡県 プレ葉ウォーク浜北店 1F 17:30~ - 2011年11月19日(土)
福岡県 キャナルシティ博多 B1F 12:00~ - 2011年11月20日(日)
広島県 基町クレドpacela翼の広場 15:00~
SMASH THIS WORLD! TOUR
- 2011年12月3日(土)
東京都 下北沢CLUB Que
※アンプラグド・ワンマンライブ - 2011年12月4日(日)
東京都 下北沢CLUB Que
※ワンマンライブ - 2011年12月8日(木)
大阪府 梅田Shangri-La
共演:FoZZtone - 2011年12月23日(木・祝)
静岡県 浜松FORCE
共演:ズータンズ - 2012年1月15日(日)
長野県 長野ネオンホール
※ワンマンライブ - 2012年2月10日(金)
大阪府 梅田Shangri-La
※ワンマンライブ - 2012年2月12日(日)
愛知県 名古屋ell.SIZE
※ワンマンライブ - 2012年2月19日(日)
広島県 広島BACK BEAT
※ワンマンライブ
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カミナリグモ
2002年、上野啓示(Vo, G)が中心となってカミナリグモを結成。翌年には上野のソロプロジェクトとなり、弾き語り、バンド、ユニットと形態を問わないスタイルとなる。2007年にはサポートとして参加していたghomaこと成瀬篤志(key)が正式メンバーに。インディーズで3作のマキシシングルと1stアルバム「ツキヒノォト」を発表。かねてよりthe pillowsを敬愛していた上野が、ライブ会場で山中さわお(the pillows)に手渡した音源が高く評価され、2010年7月に山中プロデュースによるマキシシングル「ローカル線」でメジャーデビューを果たした。同年11月にはメジャー1stアルバム「BRAIN MAGIC SHOW」を発表。2011年11月2日に2ndアルバム「SMASH THIS WORLD!」をリリースする。