ナタリー PowerPush - カミナリグモ
新作「SCRAP SHORT SUMMER」完成 カミナリグモとthe pillowsの出会いと今
カミナリグモの最新ミニアルバム「SCRAP SHORT SUMMER」が完成した。冒頭に収められたタイトル曲「SCRAP SHORT SUMMER」は、彼らの才能を高く評価しているthe pillowsの山中さわおがプロデュースを手がけたナンバーだ。また、本作には同じくthe pillowsの真鍋吉明や、ライブのサポートで彼らを支える鈴木淳(B/fragments)、森信行(Dr/ex.くるり)も参加している。
ナタリーでは彼らの音楽性やthe pillowsとの出会いと今を探るべく、メンバーの上野啓示(Vo, G)とghomaこと成瀬篤志(Key)にインタビューを敢行。結成初期のエピソードから、力作「SCRAP SHORT SUMMER」が生まれるまでの過程について、じっくりと話を訊いた。
取材・文/臼杵成晃 インタビュー撮影/中西求
宅録少年から「カミナリグモ」へ
──カミナリグモは上野さん主導で結成されたとのことですが、最初はバンド編成でスタートしたんですか?
上野啓示(Vo, G) 僕は高校生ぐらいのときから自宅録音をやってて、大学に入った頃にその宅録をバンドとして再現しようと思ったんですよ。軽音楽部にドラムとベースをやってる友達がいて、聴いてもらったらすごく気に入ってくれたので「何か一緒にやろう」って誘ったのが始まりです。リズムがちゃんとあるトラックを作って、それをバンドでやろうっていうのがスタートでしたね。
──宅録少年っぽい感じだったんでしょうか。
上野 はい。ホントに家に閉じこもって。部活もやってたんですけど、高2ぐらいで録音できる機材を手に入れてからは、そっちにのめり込んじゃいました。それまではただ歌詞を書いてコードを付けるぐらいだったのに、重ね録りして他の音も入れられるなんて、夢のような世界ですよ。それでもう夢中になってやってましたね。
──バンドでの活動から、現在のスタイルに至った経緯は?
上野 当時は20歳そこそこで、みんなそんなに「人生を賭けて」みたいな感じではなかったので、就職活動の時期にはなんとなくうやむやになって。その後も地元のライブハウスや音楽仲間とのつながりはあったんで、自然と1人でやるようになりました。
──音楽性はそこで変わりましたか?
上野 ソングライターという部分ではそんなに違いはないかなとは思うんですけれども、サウンド的にはそのときどきの気分や好きなもので変化するし、技術的にももちろん成長するので、そのまま同じではないですね。一番大きいのは……1人でやってるときはどうしてもギター1本でも成立するようなアレンジになってくるし、ドラムとベースがいるんだったらそれを前提にしたアレンジをしようとか、状況に応じて音楽性も変化してきたんじゃないかと思います。
──成瀬さんがカミナリグモに参加した経緯は?
成瀬篤志(Key) ちょうど自分のバンドがうまくいかなくて辞めて、1人でやりたい音楽を探していた時期にカミナリグモに出会ったんです。単純にすごくいいなと。自分でガンガン前に立つんじゃなく、サポートする立場で音楽をやりたいと思っていたから、最初は「カミナリグモとして自分にできることを手伝いたい」っていうスタンスで参加してました。他の活動と並行して続けていく中で、だんだん自分の中でカミナリグモの音楽への揺るぎない気持ちが高まってきて。お互いにいいモチベーションのところで啓示くんから「メンバーになったほうがいいんじゃない?」っていう話があって、それで今に至るという。
──正規のリズム隊を加えずこの2人のみで活動するというのは、音楽のスタイルとして自然に落ち着いたのでしょうか。
上野 いえ、別に選んで2人になってるわけではなくて。もともとは宅録少年だった頃からバンドがやりたかったんですけど、バンドメンバーってのは恋人とか家族みたいなもんで、何年も同じモチベーションで時間を共有していくのって、本当に偶然というか奇跡的なことだと思うんですよ。それがたまたま僕にとってはghomaちゃんだったし、彼にとっては僕だったのかなとは思うんですけど。
チャンスがないことの恐さを知っている
──最近ではthe pillowsのサポートベーシストでも知られるfragmentsの鈴木淳さんや、元くるりのドラマー森信行さんが、ライブのみならずレコーディングでもほぼレギュラーで参加されていますよね。
上野 森さんは他のバンドのサポートをされているときに僕らと対バンをして、それが最初の出会いでした。淳さんは、山中さわおさん(the pillows)が僕らのプロデュースをしてくれることになったときに「いいベースを知ってるよ」って紹介していただいて。
──山中さんとの出会いは、やはりカミナリグモにとって大きな転機だったのではないかと思います。最初はどのようなきっかけで?
上野 2008年の秋ぐらいですね。僕はもともと高校生のときからピロウズが大好きで、「どういうバンドが好きなんですか?」って訊かれたときは常にピロウズって答えてたんですよ。それを知っていたとある媒体関係者の方が「今度一緒にライブに行きますか」って誘ってくれて、そこで初めてメンバーのみなさんに挨拶させていただいたんです。当時インディーズで出してたCDを渡したんですけど、まさか良い反応をしてもらえるとは思ってなくて。
──その後、山中さんのプロデュースによるシングル「ローカル線」で2010年7月にメジャーデビューとなったわけですが、メジャーで活動するということは元々2人の目標としてあったものですか?
上野 漠然とはありましたけど、一番はデビューというより「音楽だけで生活していく」ってところで、死ぬまで音楽が仕事として続けられたらいいなというのが目標ですよね。もしインディーズが近道なんだったらインディーズでも問題はないし。
──気負いのようなものはそれほどなく。
上野 やはりチャンスだなという自覚はものすごくあって。僕らは決してデビューが早いほうではないので、チャンスがないことの恐さ、知られないことの恐さはよくわかっているんです。まずは知って、判断してもらえる。そのチャンスを無駄にしたくないという思いは常に持ってますね。判断されたうえで自分たちの音楽に自給自足できるだけの需要がなければ、僕は音楽を公にやるつもりはないので。自分たちの音楽はそれだけのキャパシティがあると思って今までずっとやってきたので、今はそれをひとつ試せる、いい機会なんじゃないかなと。
成瀬 うん。メジャーデビューすることが目的ではないですけど、いろんなスタッフの方や協力してる人が大勢いると力があるというのはすごくわかってて。今の状況はありがたい環境だなって思いますね。
CD収録曲
- SCRAP SHORT SUMMER
- Sleepy Boat
- コールタール
- Comfortable Life
- カスタードクリーム -SHORT SUMMER Ver.-
- アイスグリーン
- 白い雨 -SHORT SUMMER Ver.-
SCRAP SHORT SUMMER
SAWAO VS. YOUNGSTER
(山中さわおソロツアー)
- 2011年6月16日(木)
大阪 CLUB QUATTRO
OPEN 18:00 / START 19:00 - 2011年6月18日(土)
福岡 DRUM SON
OPEN 18:30 / START 19:00 - 2011年6月19日(日)
広島 NAMIKI JUNCTION
OPEN 18:30 / START 19:00 - 2011年6月21日(火)
名古屋 CLUB QUATTRO
OPEN 18:00 / START 19:00 - 2011年6月24日(金)
札幌 cube garden
OPEN 18:30 / START 19:00 - 2011年6月30日(木)
渋谷 CLUB QUATTRO
OPEN 18:00 / START 19:00
SCRAP SHORT SUMMER TOUR
- 2011年7月25日(月)
広島 Cave-Be
OPEN 18:30 / START 19:00 - 2011年7月26日(火)
福岡 BEAT STATION
OPEN 18:30 / START 19:00 - 2011年7月28日(木)
大阪 knave<ワンマン>
OPEN 18:30 / START 19:00 - 2011年7月30日(土)
長野 NEONHALL<ワンマン>
OPEN 18:00 / START 18:30 - 2011年8月4日(木)
名古屋 ell.SIZE<ワンマン>
OPEN 18:30 / START 19:00 - 2011年8月9日(火)
仙台 LIVE HOUSE enn 2nd
OPEN 18:30 / START 19:00 - 2011年8月11日(木)
札幌 Sound Lab mole
OPEN 18:30 / START 19:00 - 2011年8月19日(金)
下北沢 CLUB Que<ワンマン>
OPEN 18:30 / START 19:00
カミナリグモ
2002年、上野啓示(Vo, G)が中心となってカミナリグモを結成。翌年には上野のソロプロジェクトとなり、弾き語り、バンド、ユニットと形態を問わないスタイルとなる。2007年にはサポートとして参加していたghomaこと成瀬篤志(key)が正式メンバーに。インディーズで3作のマキシシングルと1stアルバム「ツキヒノォト」を発表。かねてよりthe pillowsを敬愛していた上野が、ライブ会場で山中さわお(the pillows)に手渡した音源が高く評価され、2010年7月に山中さわお(the pillows)プロデュースによるマキシシングル「ローカル線」でメジャーデビューを果たした。同年11月にはメジャー1stアルバム「BRAIN MAGIC SHOW」を発表。ライブツアー「BRAIN MAGIC SHOW TOUR」FINALでは初の渋谷クアトロでのワンマン公演を大成功に収め、6月8日に、およそ半年ぶりの新作となるミニアルバム「SCRAP SHORT SUMMER」をリリースする。