室内楽アルバムは独立した作品だけど「Sang」とつながっている
──物語の結末はリスナー自身で確かめてほしい、と。完全限定受注生産豪華盤には本編CDのほか、全9曲の室内楽アルバム「Chamber Music Ensemble」も付いています。弦楽四重奏とピアノ、KAMIJOさんの歌によるクラシカルな作品ですね。
昨年の10月に室内楽のコンサートを行ったのですが、そのときと同じメンバーで“せーの”で録ったアルバムです。ボーナスCDではなく、「Sang」とはまったく別の独立した作品として捉えてもらえるとうれしいですね。「Sang」は緻密に作り込んでいるんですが、こちらはクリックを使わず、視線と呼吸を合わせながら演奏しているんですよ。弦と弓がこすれる音まで聴こえて臨場感があるし、スリリングな作品だと思います。
──歌の雰囲気も普段とはまったく違いますよね。
そうですね。バンドサウンドのときよりもキーを下げていて、いい意味で余裕があるんじゃないかなと。ピアニストの佐山こうたくん、ストリングスの玉響-tamayura-の皆さんもしっかり歌に合わせてくれるんですよ。テンポを決めるのも僕だし、表現がすごく自由なんです。僕はクラシック出身ではありませんが、「Chamber Music Ensemble」はフランス革命以前の宮廷音楽と同じ形式で制作していますし、そういう意味では「Sang」ともつながっているんですよね。このスタイルで自分の曲を歌うのは初めてでしたが、素晴らしい経験でした。
海外への発信を意識した初音ミクとのコラボレーション
──さらに期間限定デュオ“KAMIJO&初音ミク”によるシングル「Sang -AnotherStory-」もリリースされます。室内楽クラシックと、バーチャルシンガーはほとんど真逆と言っていいかもしれないですね。初音ミクは発売から約10年という新しいソフトですから。
ミクちゃんはVersaillesと同い年なんですよ(笑)。この企画も僕の中では「Sang」にぴったりだなと思っているんです。これは先ほど話した“エミグレ制度”ともつながるのですが、蘇らせた人間に作らせた血液で発電するという設定がミクちゃんと重なったんですよ。眠っているミクちゃんを電気の力で目覚めさせて、歌ってもらうっていう。「Sang」には“歌”のほかに“血”という意味もあるので、歌うために生まれてきたミクちゃんとの親和性もすごくあるなと。もう1つのテーマは、この楽曲を通して海外の人たちに日本のポップカルチャーを知ってもらうこと。僕だけでは力不足なので、Mana様(Moi dix Mois、ex. MALICE MIZER)がプロデュースするファッションブランドMoi-meme-Moitieに衣装を作っていただき、女性マンガ家ユニットのPEACH-PITさんにメインビジュアルを描き下ろしていただきました。ありがたいことに僕のファンは世界中にいるので、海外へのアプローチは常に考えていますね。
──初音ミクとKAMIJIOさんのデュエットも興味深かったです。
あくまでもシンガーとしてミクちゃんをお招きしているんですよね。調声はミクちゃんのご自宅のほうでやっていただいたのですが(笑)、当初はハモリだったミクちゃんパートがあまりにも素晴らしくて、そちらをメインの旋律にさせてもらったんです。Bメロのコード構成は最近の僕の得意技でもあるので、ぜひ聴いてほしいですね。
美しい涙のためなら手段を問わない
──最後にアルバム「Sang」のリリース後に行われるツアー「KAMIJO Live Tour 2018 -Sang-」について聞かせてください。「Sang」の世界観がステージ上で繰り広げられる、まさにメディアを超越したライブになりそうですね。
僕自身もすごく楽しみです。自分のライブに革命が起きるような気がするんですよ。初音ミクちゃんも登場しますし、不確定な要素もたくさんあって……某ゲームに“パルプンテ”という何が起きるかわからない呪文があるのですが、まさにそんな感じです(笑)。また新しい経験ができることがうれしくてしょうがないですね。
──ステージには“過去とつながれた額縁”が置かれ、中世に描かれた絵画が映し出されるなど、さまざまな仕掛けが施されるとか。
そうなんですよ。実力派の声優の皆さん(関智一、杉田智和、青木瑠璃子、近藤浩徳)にも協力していただきました。実は先ほど収録が終わったばかりなのですが、その演技があまりにも素晴らしくて……「これで『Sang』の物語は伝わる」と確信しましたね。まだまだ準備は必要ですが、きっと素晴らしいものになると思います。
──KAMIJOさんは原作、演出も手掛けるわけで、一般的なアーティストよりもやらなくてはいけないことが多いですよね。
確かにいろいろな役割はあるのですが、ライブでは歌に特化した存在になりたいと思っていて。任せるところは任せて、ステージでは歌に集中したいんですよね。全体の空気を作るのは僕だし、僕がどんな目つきで歌っているかによって、世界観も決まってくるので。何度も感動できるライブになると思いますし、もしかしたら感動しすぎて「これは反則だよ」と言われるかもしれないなって。
──映像の使い方、声優の演技を含めて、通常のライブでは考えらない演出もありますからね。
はい。感動して流す涙が一番美しいし、そのためならどんなことでもやろうと思っているんです。美しい涙のためなら手段を問わない。それが耽美主義ですからね。
- KAMIJO「Sang」
- 2018年3月21日発売 / Sherow Artist Society
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初回限定盤 [CD+DVD+ストーリーブックレット]
4860円 / SASCD-092 -
通常盤 [CD]
3240円 / SASCD-093
- CD収録曲
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- Dead Set World
- Theme of Sang
- Nosferatu
- Bloodcast -Interlude-
- Vampire Rock Star
- Emigre
- Mystery
- mademoiselle
- Delta -Interlude-
- Castrato
- Ambition -Interlude-
- Sang I
- Sang II
- Sang III
- 初回限定盤収録内容
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DVD
- Nosferatu MV
- Story of Sang
ストーリーブックレット
公演情報
- KAMIJO Live Tour 2018 -Sang-
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- 2018年3月24日(土)東京都 鹿鳴館
- 2018年3月30日(金)京都府 KYOTO MUSE
- 2018年4月1日(日)大阪府 OSAKA MUSE
- 2018年4月8日(日)神奈川県 新横浜 NEW SIDE BEACH!!
- 2018年4月14日(土)千葉県 KASHIWA PALOOZA
- 2018年4月21日(土)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
- 2018年4月29日(日・祝)兵庫県 神戸VARIT.
- 2018年4月30日(月・祝)岡山県 IMAGE
- 2018年5月3日(木・祝)熊本県 熊本B.9 V2
- 2018年5月4日(金・祝)福岡県 DRUM SON
- 2018年5月12日(土)愛知県 ell.FITS ALL
- 2018年5月13日(日)静岡県 Sunash
- 2018年5月19日(土)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
- 2018年5月26日(土)新潟県 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
- 2018年5月27日(日)石川県 vanvanV4
- 2018年6月2日(土)北海道 DUCE
- 2018年6月3日(日)北海道 DUCE
- 2018年6月10日(日)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
- 2018年6月16日(土)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
Tour 2018 -Sang- FINAL
- 2017年11月10日(金)東京都 TSUTAYA O-Crest
- KAMIJO(カミジョウ)
- 1995年からヴィジュアル系ロックバンドLAREINEのボーカリストとして活動し、1999年にSME Recordsよりデビュー。その後2007年春にVersaillesを結成し、2009年にワーナーミュージック・ジャパンよりデビューした。Versaillesはデビュー作となるシングル「ASCENDEAD MASTER」でオリコン週間ランキング8位を記録し、2012年12月に活動休止。KAMIJOは在籍したバンドでほぼすべての作詞と大半の作曲を手がけており、劇伴制作でも才能を発揮している。2013年8月にシングル「Louis ~艶血のラヴィアンローズ~」でソロデビュー。2014年3月にはワーナーミュージック・ジャパンからソロメジャーデビュー作品「Symphony Of The Vampire」をリリースし、同年9月に1stフルアルバム「Heart」を発表した。活動20周年を迎える2015年はワールドツアーの開催に加え、オールタイムベストアルバム、リバイバルベストアルバムの発売と一層精力的に活動を行った。2015年末にVersaillesの活動再開を発表し、現在はバンドと並行してソロ活動を行っている。2017年は5月にシングル「カストラート」をリリースし、7月にワンマンライブ「Epic Rock Orchestra」を実施。2018年3月にアルバム「Sang」を発表し、自身最大規模のツアーをスタートさせる。