音楽ナタリー Power Push - KAMIJO

“純血”の20年を見つめて

Versaillesは帰るべき城

──Versailles時代の名曲「God Palace」も、KAMIJOさんのキャリアには欠かせない楽曲ですよね。

この曲はLAREINE、NEW SODMYのことを歌っているんです。“God”は“神(KAMI)”、“Palace”は“城(JO)”。つまり、自分の人生ですよね。この曲を発表したのは2010年なんですが、まだまだ人として小さかったと思うし、この数年で自分の歌もどんどん変わってきたんですよ。わずか数年しか経っていませんが、(今回のカバーバージョンには)歌の違いがすごく出ていると思うし、20年分のKAMIJOの人生を込めることができたんじゃないかな、と。歌というのはやはり、自分の内面が出てくるものなんですよね。前回のレコーディングはちょうどJasmine You(Versaillesの初代ベーシスト。2009年に急逝)が亡くなった時期だったので、今新たに、この曲をポジティブな気持ちで歌えたのもよかったです。

──この曲にもMASASHIさん、YUKIさん、Mekuさんが参加。アレンジは原曲のイメージに近いですよね。

Versailles時代の音源と比べると、音質が格段に上がっているんですよ。当時はまだ僕のスタジオがなかったので、レコーディングの環境によってかなり差があったんです。今はすべて自分の音で録れるので、そこは全然違いますね。

──VersaillesはKAMIJOさんの名をさらに広く知らしめたバンドだと思いますが、KAMIJOさんにとってはどんなバンドですか?

Versaillesの曲は今もライブで歌っているので客観視はできないですが、自分の母体だと思いますね。活動休止していますが、メンバーに対しても「素晴らしいミュージシャンだな」と思うし。ただ、コンセプトに縛られてしまったら意味がないなと思うんです。そうなりそうだったから、活動休止したというところもあるんですよね。

──ということは、コンセプトに縛られずに活動できる環境ができれば、再スタートする可能性もある?

ひと言で言うと、帰るべき城かな。今はそれしか言えないですね。

ファンのすべての時間を僕の音楽で支配したい

──続いて、このリバイバルベストのために制作された新曲について聞かせてください。まずは「この世で一番美しい薔薇よ」。ファンの方に対する思いをストレートに表現したナンバーですね。

はい。ここまで長い間応援してくださるのは、とても大変なことだと思うんです。先日のヨーロッパツアーでは海外のファンの方が衣装を作ってくださったり、本当に支えてもらっているなって。それを曲でお返ししたいと思ったのですが、どんなに率直に書いても、どうしても違った捉え方をされることもあるじゃないですか。だから「この世で一番美しい薔薇よ」を書くときは、どうしたらこの気持ちが伝わるだろう?とすごく考えました。

──なるほど。

誤解がないようにここであえて言っておくと、楽曲というのは、僕が歌うだけではなく、ファンの皆さんの人生が合わさったときに初めて意味が生まれるんです。僕の曲が感動させているわけではなくて、皆さんの人生があるからこそ感動が生まれる。なので、ファンの方々の過去のおかげなんですよね、僕が歌えるのは。だからこそ、そこに対する感謝を伝えたかったんです。

──そういうスタンスは20年間、一貫しているんですか?

KAMIJO

音楽を始めた頃は違っていたんじゃないでしょうか。ファンの方が1人増え、2人増えていくうちに、感謝の気持ちも芽生えてきたというか。20年前は僕も子供でしたからね(笑)。ただ、「この世で一番美しい薔薇よ」には、ライブに来てくれたり、CDを聴いてくれるだけではなく、「すべての時間を僕の音楽で支配したい」という本音も込められているんです。好きな女性に対する、「本当はずっと一緒にいたい」という思いに近いかもしれないですね。そういう気持ちはファンの方に対しても少なからずあるし……アーティストのエゴかもしれないですけどね。

──ファンに対する独占欲がある、と。

ほかの人のライブになんて、行ってほしくないですから(笑)。「楽しんでおいで」と背中を押しますが、本音は違うんです。それくらい大切だということですね、ファンの方々は。

──確かにKAMIJOさんとファンのつながりはすごく強い印象があります。現在は海外にも数多くのファンがいらっしゃしますが、20年前から海外で活動するビジョンはあったんですか?

ここまで大きくはなかったと思います。初めての海外のライブはLAREINEのときに行ったアメリカだったんですが、「自分の曲をこんなにも知ってくださっているのか」と驚いたんです。それが(海外での活動の)スタートだったのですが、今の状況は予想を超えていますね。僕は今でこそ海外の音楽を聴きますが、以前はまったく知らなかったし、“歌謡曲命”だったんですよ。洋楽に興味がない自分が、海外でこれだけ活動できるとは思っていなかったので。今は海外のライブのほうが多いですからね。

──洋楽のテイストが少ない音楽だからこそ、海外のリスナーは興味を引かれるのかもしれないですね。

それを自分なりに分析すると……海外に行くと、ラジオなどを通して現地の音楽が聞こえてきますよね。そのほとんどが僕にとっては歌謡曲に聞こえるんですよね。アメリカのヒップホップは違いますが、そのほかの国——ロシア、コロンビア、メキシコ、フランスなど——の音楽は歌謡曲に通じる美しいメロディが中心になっている。そのことに気付いたときに「こういう音楽を続けてきてよかったな」と思いましたね。

いつまでも純血でいたい

──「Royal Blood」も「この世で一番美しい薔薇よ」と同様、20周年記念曲として制作された曲。“バイオリンのように滑らかにメロディを歌う”がテーマだったとか。

バイオリンのレガート、ポルタメントは、日本人の心だと思うんです。美空ひばりさんの「♪ああ 川の流れのように」も「♪夕やけ小やけの 赤とんぼ」もそうだし。ただ、この曲の制作はかなり大変だったんですよ。「この世で一番美しい薔薇よ」でファンの皆さんへの感謝の気持ちを込めすぎたので、もう1曲、20周年記念曲を作ろうと思っても全然書けなくて。いろいろ考えて、新しいチャレンジにしようと思って作ったのが「Royal Blood」なんですよね。今まで自分がやってこなかったことに挑戦して、新しい一歩を踏み出そうと。

──このアルバム自体にも、この先のKAMIJOさんの音楽性を示唆している側面がありますからね。

そうですね。「この世で一番美しい薔薇よ」以外は、まだ僕のことを知らない方々に向けてレコーディングしたので。ずっと応援してくれた方にも楽しんでほしいですが、僕の音楽をまったく知らない方にとってはすべて新曲ですからね。普段のアルバムはコンセプトがしっかりあるんですが、今回は“20周年”というだけで、それほど重く捉える必要はないと思います。素晴らしい曲をそろえることができたし、僕を知るきっかけとして単純に楽しんでほしいな、と。

──今年の後半は20周年を記念したワールドツアーが行われます。

7月20日にバースデーライブ(東京キネマ倶楽部)があり、24日の仙台公演から全国ツアーを開催します。ライブだからこそ歌いたい曲──例えばLAREINEの「Je t'aime」とか──もあるので、楽しみにしてほしいですね。海外はアジア、ブラジル、フランス。パリは自分が行きたいだけなんですけどね(笑)。今回も観光ではなく、撮影してきたい(笑)。パリにいるとどうしても撮影したくなるので、最初からそのつもりで準備したほうがいいんですよ。街を歩いていて、次の作品につながるイメージが浮かぶこともあるし。

──すでに次作の構想もあるんですか?

オリジナルアルバムを作りたいですね。今回リバイバルベストを作ったことで、どんなアレンジであっても、僕の曲は僕の曲だなということが改めてわかって。今後もそれを実感し続けていきたいんですよね。

──軸になっているのはやはりメロディ?

そうですね。サウンドはその都度カッコいいと思うことをやっていきますが、メロディの魅力は変わらないと思うので。それが僕にとっての“Royal Blood”だし、いつまでも純血でいたいですね。

新録音リバイバルベストアルバム「Royal Blood ~Revival Best~」 / 2015年7月15日発売 / Warner Music Japan
初回限定盤 [CD+DVD] / 4320円 / WPZL-31045~6
通常盤 [CD] / 3240円 / WPCL-12157
CD収録曲
  1. Emblem(新曲 / インストゥルメンタル)
  2. Imperial Concerto(オリジナル:LAREINE)
  3. 薔薇は美しく散る(オリジナル:LAREINE)
  4. Aristocrat's Symphony(オリジナル:Versailles)
  5. 蝶の花(オリジナル:LAREINE)
  6. Audrey(オリジナル:NEW SODMY)
  7. この世で一番美しい薔薇よ(新曲)
  8. 冬東京(オリジナル:LAREINE)
  9. HEEL(新曲)
  10. God Palace(オリジナル:Versailles)
  11. Royal Blood(新曲)
初回限定盤DVD収録内容

Documentary of KAMIJO 20th Anniversary

  1. LAREINE 第一期
  2. NEW SODMY
  3. LAREINE 第二期
  4. Versailles
  5. KAMIJO

KAMIJO TOUR 2014 "THE DEATH PARADE" FINAL The Empire of Vampire at 2014.12.13 AiiA Theater Tokyo

  1. Symphony of The Vampire 第一楽章 「Presto」
  2. Bastille
  3. 抱きしめられながら
  4. サンクチュアリ
オールタイムベストアルバム「20th Anniversary All Time Best ~革命の系譜~」 / 2015年6月10日発売 / Warner Music Japan
初回限定盤 [CD+フォトブック] / 2700円 / WPCL-12098
通常盤 [CD] / 2160円 / WPCL-12099
「Royal Blood ~Revival Best~」発売記念イベント【7.19 リアル・バースデイ・ヴァージョン】
2015年7月19日(日)東京都 タワーレコード新宿店 7Fイベントスペース
Celebration-Live 2015 Royal Blood
2015年7月20日(月・祝)東京都 東京キネマ倶楽部
KAMIJO World Tour 2015 -20th ANNIVERSARY BEST- JAPAN
2015年7月24日(金)宮城県 仙台MACANA
2015年7月26日(日)北海道 cube garden
2015年8月1日(土)神奈川県 新横浜 NEW SIDE BEACH!!
2015年8月2日(日)神奈川県 新横浜 NEW SIDE BEACH!!(※ファンクラブ会員限定)
2015年8月9日(日)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
2015年8月16日(日)福岡県 DRUM SON
KAMIJO World Tour 2015 -20th ANNIVERSARY BEST- JAPAN FINAL
2015年8月23日(日)東京都 東京キネマ倶楽部
2015年8月28日(金)愛知県 ell.FITS ALL
2015年8月30日(日)大阪府 OSAKA MUSE
KAMIJO World Tour 2015 -20th ANNIVERSARY BEST- Grand Finale
2015年12月28日(月)東京都 Zepp DiverCity TOKYO

※7月24日~8月30日に行われる各公演の終演後にアルバム購入者対象イベント開催決定!

「KAMIJO World Tour 2015 20th ANNIVERSARY BEST」参加メンバーからのコメント

KAMIJO(カミジョウ)

1995年からヴィジュアル系ロックバンドLAREINEのボーカリストとして活動し、1999年にSME Recordsよりデビュー。その後2007年春にVersaillesを結成し、2009年にワーナーミュージック・ジャパンよりデビューした。Versaillesはデビュー作となるシングル「ASCENDEAD MASTER」でオリコン週間ランキング8位を記録し、2012年12月に活動休止。KAMIJOは在籍したバンドでほぼすべての作詞と大半の作曲を手がけており、劇伴制作でも才能を発揮している。2013年8月にシングル「Louis ~艶血のラヴィアンローズ~」でソロデビュー。2014年3月にはワーナーミュージック・ジャパンからソロメジャーデビュー作品「Symphony Of The Vampire」をリリースし、同年9月に1stフルアルバム「Heart」を発表した。活動20周年を迎える2015年は、ワールドツアーの開催、オールタイムベストアルバム、リバイバルベストアルバムの発売と一層精力的に活動している。