音楽ナタリー Power Push - KAMIJO
“純血”の20年を見つめて
アーティスト活動20周年を迎えたKAMIJOがオールタイムベストアルバム「20th Anniversary All Time Best ~革命の系譜~」に続き、リバイバルベストアルバム「Royal Blood ~Revival Best~」を7月15日に発表する。LAREINE、NEW SODMY、Versaillesの代表曲のセルフカバーに新曲4曲を加えた本作は、20年のキャリアはもちろん、現在のKAMIJIOの音楽性、この先の方向性を包括した作品に仕上がっている。
音楽ナタリーでは今回もKAMIJOにインタビューを実施。20年の軌跡を振り返ってもらいながら、現在の彼の音楽的スタンスについて聞いた。
取材・文 / 森朋之
「ヴァンパイアのように歌う」というテーマの起源
──20周年を記念したリバイバルベストアルバム「Royal Blood ~Revival Best~」についてじっくり聞きたいと思います。LAREINE、NEW SODMY、Versaillesの代表曲のセルフカバーと新曲で構成されていますが、まず、カバーする楽曲はどんなふうに選んだのですか?
歌い方、アレンジの方向性を含めて、僕はこの20年間でかなり変化してきているんですね。今回のアルバムでは、今の僕が改めてやることで、さらに最高になるであろう楽曲を選びました。
──この20年間のご自身のボーカリストとしての変化をどんなふうに捉えていますか?
最初はボーカリストとして氷室京介さんに憧れたところから始まってるんですね。そこからスタートしたわけですけど、行き着いた先は「もしヴァンパイアが歌ったらこんな歌声だろうな」というものを追い求めることだったんです。それが少しずつ形になってきたと思うし、今の僕が歌うからこそ例えば「薔薇は美しく散る」(アニメ「ベルサイユのばら」オープニングテーマのカバー)も憂いのある表現になったんじゃないかな。
──「ヴァンパイアのように歌う」というテーマが生まれたのは、何がきっかけだったんですか?
ボーカリストなら誰でも、尊敬する人だったり“なりたい像”があると思うんですけど、僕の場合はそれがたまたま「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」のトム・クルーズだったんです。あの映画の中でトム・クルーズは歌ってないんですよ。続編の「クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア」という映画では、(ヴァンパイアの)レスタト役の方が歌うシーンがあったのですが、「違うな」と思って。そこからですね、ヴァンパイアのように歌いたいと思い始めたのは。人によっては“魔物”というか、怖くて低い声というイメージかもしれないけど、僕の中ではすごくキレイな声だったんですよね。
──非常に個性的な発想だと思います。KAMIJOさんのイメージするヴァンパイアの歌声と実際のボーカルを近付けていく、ということですか?
まずはボイストレーニング、そしてイメージですね。あとは歌詞を書くことで、理想とする自分に近付いていけると思うんです。“こうありたい”ということを歌詞に書いて、それを歌うことで、なりたい自分になるというか。それを繰り返してきたんですよね。
KAMIJOが今考えるLAREINE、NEW SODMY
──ポイントとなる楽曲についても聞かせてください。まずはLAREINEのデビュー10周年記念曲「Imperial Concerto」。テンポとキーを上げ、メタリックな仕上がりになっていますね。
この曲に関しては、初めから「メロディックスピードメタルにアレンジする」と決めていました。速いリズム、美しいメロディを中心にした音楽性は、Versailles以降の自分の軸になっていますからね。LAREINEの時代はもっと静かな感じだったんですよ。
──LAREINEはKAMIJOさんのキャリアのスタートと重なっていますが、今振り返ってみるとどんなバンドだったと思いますか?
僕にとっては、LAREINEで初めて経験したことが本当に多かったんですよ。それだけ夢中になっていたというか……。LAREINEが目指していたのは、切なさだったんです。それを表現するためにメンバー全員が命を賭けていたし、そのためには手段を選ばないところもありました。メンバーが演奏せず、すべて打ち込みの曲もありましたからね。どんなサウンドであっても、とにかく切なければいいという。最初はグロテスクな雰囲気の曲も多かったのですが、少しずつ“花”を使って感情を表現するようになったんです。例えば「Fleur」「白いブーケ」「悲愁の花園」といった曲がそうですね。そのうちに歌の世界が花であふれ、薔薇であふれ、気が付いたら「薔薇は美しく散る」を歌っていました(笑)。LAREINEの世界観もそうやって自然と構築されていったし、自分の核となる部分を作ってくれたバンドですね。もちろんメンバーとの出会いも大きかったですし。
──本作には「薔薇は美しく散る」のカバーも収録されています。当然、KAMIJOさんにとって重要な楽曲なんですよね?
そうですね。LAREINEの「リリー・シャルロット」という作品でカバーしたのが最初だった思いますが、その後、マンガ「ベルサイユのばら」の作者である池田理代子先生にも参加していただき、衣装やCDジャケットのデザインを手がけていただいて。実はそのときに池田先生と対談させていただいたのですが、帰り際に「KAMIJOくんはきっとヴァンパイアになるよ」と言われたんです。そのときはなんとも思っていなかったのですが、もしかしたら予言者だったのかもしれないですね。対談の前に「ベルサイユのばら」を読み、すっかりハマってしまったし……。フランス革命に目を向けたのもこの作品がきっかけだったし、いまやフランスの虜です。
──今回のカバーではどんなところを意識しましたか?
僕がこの曲をカバーするのはこれが3回目なんです。僕のバージョン以外にもたくさんあるのですが、一番大好きな「薔薇は美しく散る」ができました。過去のカバーに対しては「今の自分の声で超えられる」と思っていましたし、耽美メタルのアレンジを含めて、1つのジャンルを作り上げつつあるなという手応えがありました。ドラムとベースはVersaillesのメンバー(MASASHI、YUKI)、ギターはMekuくんですが、本当に素晴らしい演奏でしたね。
──Versaillesのリズム隊は、やはりしっくり来ますか?
そうですね。活動休止中とは言え、今もつながりはあるし。いいミュージシャンですから、やっぱり参加してもらいたくなりますよ。長年一緒にやっていたのでリズム感がすごくなじんでるんですよね。YUKIのスネアがちょっと遅れる感じも、僕の歌とのマッチングがいいんですよ。
──NEW SODMY時代の「Audrey」のカバーも印象的でした。この曲をセレクトしたのはどうしてですか?
NEW SODMYのときの曲はそれほど多くの人に届けることができなかったので、もう一度、ちゃんと日の目を見せてあげたかったんですよね。「Audrey」はすごくいい曲ですし、もっとたくさんの方に聴いていただきたいな、と。それに気付かせてくれたのは、ファンの方なんです。20周年のツアーにあたって「どんな曲を聴きたい?」とTwitterでつぶやいたら、あるファンの方がこの曲を挙げてくれて。それまでは僕自身もこの曲の存在を忘れていたんですよ、実は。すごい曲数を作ってきたから、全部を覚えているわけではないので。でも、「Audrey」のタイトルを見た瞬間に頭の中にメロディが流れてきて、ひさびさに聴いてみたら「すごくいい曲だな」と。
──ジャズテイストを取り入れたアレンジを含めて、新しい「Audrey」を提示されてますよね。NEW SODMYはKAMIJOさんにとって、どんな位置付けのバンドなんですか?
LAREINEは結成7年目に入ったときに活動休止したのですが、それと同時に始めたのがNEW SODMYだったんです。活動は1年間だけだったんですが、ファッション性をさらに音楽に取り入れてみたかったんですよね。LAREINEの衣装もオートクチュールで、パリコレなどを参考にして作っていたのですが、NEW SODMYでは“モードロック”と名付けてましたからね。
──ファッションと音楽の関係性をさらに強めたバンドだった、と。
僕自身はデコラティブなものだけではなくて、空白のあるデザインも好きなんですね。それを音楽でやってみよう、と。だから、音もだいぶシンプルなんです。ギターを中心としたバンドサウンドだけで世界観を作り上げようとしていたというか……。ファンの皆さんにはNEW SODMYだけ違うものに映るかもしれませんが、ファッション的な意味では同じなんですよね。今回のアルバムの衣装は、背中を見せるということを意識して作りました。僕が見ている先は未来でもあり、過去でもあるのですが、顔が見えないヴィジュアル系があってもいいかな、と。こだわっているのは音楽を表現するための衣装だけで、自分の普段着には無頓着なんですけどね。そこはどんなにイメージを作り込んでもムダだから、先に言っておきます(笑)。
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- 新録音リバイバルベストアルバム「Royal Blood ~Revival Best~」 / 2015年7月15日発売 / Warner Music Japan
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 4320円 / WPZL-31045~6
- 通常盤 [CD] / 3240円 / WPCL-12157
CD収録曲
- Emblem(新曲 / インストゥルメンタル)
- Imperial Concerto(オリジナル:LAREINE)
- 薔薇は美しく散る(オリジナル:LAREINE)
- Aristocrat's Symphony(オリジナル:Versailles)
- 蝶の花(オリジナル:LAREINE)
- Audrey(オリジナル:NEW SODMY)
- この世で一番美しい薔薇よ(新曲)
- 冬東京(オリジナル:LAREINE)
- HEEL(新曲)
- God Palace(オリジナル:Versailles)
- Royal Blood(新曲)
初回限定盤DVD収録内容
Documentary of KAMIJO 20th Anniversary
- LAREINE 第一期
- NEW SODMY
- LAREINE 第二期
- Versailles
- KAMIJO
KAMIJO TOUR 2014 "THE DEATH PARADE" FINAL The Empire of Vampire at 2014.12.13 AiiA Theater Tokyo
- Symphony of The Vampire 第一楽章 「Presto」
- Bastille
- 抱きしめられながら
- サンクチュアリ
- オールタイムベストアルバム「20th Anniversary All Time Best ~革命の系譜~」 / 2015年6月10日発売 / Warner Music Japan
- 初回限定盤 [CD+フォトブック] / 2700円 / WPCL-12098
- 通常盤 [CD] / 2160円 / WPCL-12099
- 「Royal Blood ~Revival Best~」発売記念イベント【7.19 リアル・バースデイ・ヴァージョン】
- 2015年7月19日(日)東京都 タワーレコード新宿店 7Fイベントスペース
- Celebration-Live 2015 Royal Blood
- 2015年7月20日(月・祝)東京都 東京キネマ倶楽部
- KAMIJO World Tour 2015 -20th ANNIVERSARY BEST- JAPAN
- 2015年7月24日(金)宮城県 仙台MACANA
- 2015年7月26日(日)北海道 cube garden
- 2015年8月1日(土)神奈川県 新横浜 NEW SIDE BEACH!!
- 2015年8月2日(日)神奈川県 新横浜 NEW SIDE BEACH!!(※ファンクラブ会員限定)
- 2015年8月9日(日)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
- 2015年8月16日(日)福岡県 DRUM SON
- KAMIJO World Tour 2015 -20th ANNIVERSARY BEST- JAPAN FINAL
- 2015年8月23日(日)東京都 東京キネマ倶楽部
- 2015年8月28日(金)愛知県 ell.FITS ALL
- 2015年8月30日(日)大阪府 OSAKA MUSE
- KAMIJO World Tour 2015 -20th ANNIVERSARY BEST- Grand Finale
- 2015年12月28日(月)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
※7月24日~8月30日に行われる各公演の終演後にアルバム購入者対象イベント開催決定!
「KAMIJO World Tour 2015 20th ANNIVERSARY BEST」参加メンバーからのコメント
KAMIJO(カミジョウ)
1995年からヴィジュアル系ロックバンドLAREINEのボーカリストとして活動し、1999年にSME Recordsよりデビュー。その後2007年春にVersaillesを結成し、2009年にワーナーミュージック・ジャパンよりデビューした。Versaillesはデビュー作となるシングル「ASCENDEAD MASTER」でオリコン週間ランキング8位を記録し、2012年12月に活動休止。KAMIJOは在籍したバンドでほぼすべての作詞と大半の作曲を手がけており、劇伴制作でも才能を発揮している。2013年8月にシングル「Louis ~艶血のラヴィアンローズ~」でソロデビュー。2014年3月にはワーナーミュージック・ジャパンからソロメジャーデビュー作品「Symphony Of The Vampire」をリリースし、同年9月に1stフルアルバム「Heart」を発表した。活動20周年を迎える2015年は、ワールドツアーの開催、オールタイムベストアルバム、リバイバルベストアルバムの発売と一層精力的に活動している。