ナタリー PowerPush - KAMIJO
KAMIJO流“ルイ17世の生存説” 全7楽章からなる大作完成まで
発売前に物語のあらすじを読んで浸って聴く音楽
──KAMIJO=フランスといったイメージもすでにあると思うんですが、もともとフランスというものに興味を持ったのはなぜだったんですか?
なんと言ったらいいのかなあ? ポール・モーリアを聴かされて、庭には薔薇が咲いている家で育ったので、そりゃ好きになるだろうみたいな。だから、半分親の趣味です(笑)。全然違う家に生まれたら、また別の趣味になってると思います。ただ、フランス自体はもちろんですけど、それよりもフランス人の方々の愛国心の高さ、歴史を大切にする姿勢などはホントに素晴らしいと思いますね。そういうフランスのテイストは好きですけれども、どちらかというと、今まではもっとオリジナルな世界を作りたいと思ってたんですね。でも、今の僕は……歴史を塗り替えるような世界というんですかね。ただオリジナルな世界を作るのではなくて、この現実世界とのリンクを大事にしている。それは過去の時代であれ、今の時代であれ。
──なるほど。今回の作品のようにベースに史実があるのはKAMIJOのひとつの特徴でもあるし、それがソロとして作っていく世界観であると。
そうですね。やっぱり音楽なんで、曲そのものの雰囲気とかもいろいろあると思うんですけど、発売前にここまで物語のあらすじを読んで、しっかりと浸って聴く音楽……そうするとホントに入り込んでもらえると思うんですよ。だから曲をただ発表するだけじゃなくて、聴いてもらうまでの道のりというのも大切にしていきたいなと思ってます。
──今回のあらすじのようなものは、今後も事前に公表しながら進めるということですか?
作品によってですね。もしかしたら、次回はあらすじじゃなくて掟かもしれないですし。このCDを聴くにあたり、この掟を守れ、みたいな(笑)。いや、ホントに例えばですけどね。
自分の中では7曲ではなく1曲
──今回の「Symphony of The Vampire」は、「全7楽章」「28分を超える衝撃の超大作」とも資料に記されていますが、その一節だけで、ファンは自分たちの期待に応えた作品であることを確信できると思うんですよ。こういった楽曲構成にした理由はあるんですか?
ホントはシングルにしようと思ってたんですよ。起承転結を表す4楽章ぐらいで、ルイ17世が王様になれるまでを描ければと思っていたんですが、書いてみると原作の時点で長くなっちゃったんですね。それを曲にしていったらシングルでは収まらなくなり、じゃあアルバムかなと。普通の曲だと、正直サビから作ったりいろいろあるんですけど、今回は頭から時間軸通りに作っていったんですね。
──前段階でできあがっていたストーリーに完全にもとづいて、曲作りが進められていったと。
そうです。プロットがあって、箇条書きの物語があって、それをもとに作っていくんですけど、次はこのシーンだからこうかなとか……サントラを作ってるみたいな感じですね。ただね、7つの楽章には分かれていますけど、普通にCDとして曲を飛ばせないと困る人もいるだろうなということで分けただけなんですよ。だから、実は自分の中では、やはり7曲ではなく1曲なんです。実際にオーディオファイル自体は1つで、そこにマーカーが付いているだけでね。もちろん、楽章ごとの個性は意識しましたけど、それもシーンに合わせて考えたものですし。参加してくれたミュージシャンの方々も、それぞれの色をすごく出してくれましたね。けっこうフレーズは作り込んで渡したんですけど、どんどんそれ以上のものが来た。その場でのディスカッションを含めて、レコーディングも楽しかったですね。特にAnzi(G / 摩天楼オペラ)は、Versaillesへのいい意味での対抗心があって、「僕が弾くとこうなんですよ!」みたいに燃えてくれてて(笑)。すごく頼もしかったですね。
メタルの構築美が自分には合ってる
──ちょうど話が出たので伺いますが、レコーディングに参加した3人(山崎慶[Dr / Venomstrip]、Ju-ken[B]、Anzi)はどういった観点で起用したんですか?
まずドラムの山崎慶くんは、サウンドプロデューサーの高橋圭一さんが、いつも広瀬香美さんのバックで一緒に仕事をしているということで紹介してくださって。DEAD ENDさんでも叩かれている、素晴らしいドラマーですね。ベースのJu-kenさんはVersailles時代から担当してくださっているレコード会社の方から要望があったんですけど、僕はすごく存じ上げていたので、あの方に弾いていただけるならぜひぜひって感じでしたね。Anziは僕の指名です。クラシック音楽みたいにしたかったんで、これはイングヴェイ(・マルムスティーン)かAnziだなと思ったんですよ。今回は弦やピアノも生で録っていますけど、その意味でも彼のキレイなピッチ感は重要でしたね。もともと先輩、後輩という関係でしたけど、今回はそういうのはまったく関係なく、僕は1人のミュージシャンとして尊敬しているんですよね。
──こういったクラシックとヘヴィメタルが融合したような音楽性だと、聴く人は当然Versaillesも想像するでしょうし、それとはまた異なる雰囲気も感じると思いますが、このスタイル自体にはどのような考えがあったんですか?
僕はメタルは全然詳しくないですよ。だけど、カッティングなどのコードストロークをメインにしたようなものではなく、一定のリズムに沿ってリフを刻んでいるギターがあって、リズムがタイトだと、オーケストラとの相性がすごくいいんですよね。そういった意味で、メタルというものは優れた音楽だなと思うんですよ。音が整理されているんで、いろいろなものとのマッチングがしやすい。その構築美が自分には合ってるなと思いますね。
──実際、ヘヴィメタル系のミュージシャンはオーケストラとの共演をよくやりますよね。
そうですね。ただ、ポール・モーリアがロック / ジャズドラムをクラシックに入れた第一人者と言ってしまってもいいと思うんですけど、今回はどちらかと言えば、同じようにオーケストレーションであったりシンフォニックな部分にバンドが入るという感覚ですね。Versaillesでもドラム、ベース、ギター以外の音は全部僕が作ってましたけど、アプローチは逆なんですよ。
──確かにミックスのバランスも、その狙いが伝わってくるものと言えるかもしれませんね。また、先ほど「抽象的な表現を避ける」という話がありましたが、歌詞は的確に場面を描きながら見せていきますよね。それは歌い手としてもやりやすい面はあるんじゃないですか?
やりやすいですね。今までと全然違って、ホントに小説を書くかのような感じで詞を書いていったので。いつもの作詞のように、あえてぼかした表現にするようなこともできない。だから、1つのミュージカルを楽しんでいるような感じでストーリーを楽しんでもらえると思うんですよ。実際に今回はストーリー自体が伝わらないと、込められた気持ちも伝わらないですからね。
──そうですよね。
例えば、今、サン・ドニ大聖堂にあるルイ17世の心臓は、彼の父と母の墓の隣にあったニセものの心臓と入れ替えた、本物のルイ17世の心臓なんだと思ってもらえたら、また感傷にも浸れるかなと思うんですね。そういえば、今回の物語にはもう1人のルイが登場して、実はそれが……いや、今の段階ではあまり言わないほうがいいかな(笑)。いろいろ歴史上の人物と絡めながら展開していくということですね。ルイ17世については、むしろ知らない人も多いぐらいですけど、この作品によって、それを華やかな歴史に塗り替えられたらいいなと思ってますね。
- メジャーデビューミニアルバム「Symphony Of The Vampire」 / 2014年3月5日発売 / Warner Music Japan
- 初回限定盤A [CD+Blu-ray+ブックレット] 3990円 / WPZL-30803~4
- 初回限定盤B [CD+DVD] 2940円 / WPZL-30805~6
- 初回限定盤C [CD2枚組] 2625円 / WPCL-11720~1
- 通常盤 [CD] 2100円 / WPCL-11719
CD収録曲
- 第一楽章「Presto」
- 第二楽章「Sacrifice of Allegro」
- 第三楽章「Royal Tercet」
- 第四楽章「Dying-Table」
- 第五楽章「Sonata」
- 第六楽章「満月のアダージョ」
- 第七楽章「Throne」
初回限定盤A Blu-rayおよび初回限定盤B DVD収録内容
- シンフォニー・オブ・ザ・ヴァンパイア(フルバージョンMV)
初回限定盤C 特典CD収録内容
- 映画「ヴァンパイア・ストーリーズ」サウンドトラック
イベント情報
- KAMIJO WORLD & TOWER RECORDS PRESENTS KAMIJO "PREMIERE SHOWCASE"
- 2014年4月26日(土)
東京都 タワーレコード渋谷店B1F CUTUP STUDIO
START 19:00 - 「Symphony of The Vampire」発売記念イベント
- 2014年3月6日(木)
東京都 タワーレコード新宿店 7Fイベントスペース
START 21:00 - 2014年3月7日(金)
愛知県 タワーレコード名古屋近鉄パッセ店 イベントスペース
START 19:00 - 2014年3月8日(土)
大阪府 タワーレコード難波店 5F イベントスペース
START 13:00 - 2014年3月9日(日)
福岡県 タワーレコード福岡店 3F イベントスペース
START 14:00
KAMIJO(かみじょう)
1999年、ヴィジュアル系ロックバンドLAREINEのボーカリストとしてSME Recordsよりデビュー。その後2007年春にVersaillesを結成し、2009年にワーナーミュージック・ジャパンよりデビューした。Versaillesはデビュー作となるシングル「ASCENDEADMASTER」でオリコン週間ランキング8位を記録し、2012年12月にファンに惜しまれつつ活動休止。KAMIJOは在籍したバンドでほぼすべての作詞と大半の作曲を手がけており、劇伴制作でも才能を発揮している。2013年8月にシングル「Louis ~艶血のラヴィアンローズ~」で満を持してソロデビュー。2014年3月にはワーナーミュージック・ジャパンからソロメジャーデビュー作品「Symphony Of The Vampire」をリリースする。