神様、僕は気づいてしまった|映画への書き下ろし曲で浮き彫りになった“神僕らしさ”

大事なのは、タイアップ曲でありながら自分たちの看板を掲げられること

──なるほど。では、今回のシングル「ストレイシープ / 匿名」についてはどう捉えているんですか?

東野 表題曲は2曲ともタイアップ楽曲(波瑠と西島秀俊が出演する映画「オズランド 笑顔の魔法おしえます。」の挿入歌)なんですけど、さらに2曲加えて、アルバムみたいに聴いてもらえる流れを作りたくて。カップリング曲「52Hz」「青春脱出速度」は表題曲の2曲に合わせて、「こういう曲が必要だな」と考えて新たに作ったんですよ。「映画のタイアップが取れたからシングルを切る」というだけにはしたくなかったので。自分たちの作品として胸を張れないとダメだし、やるんだったらちゃんとやろうと。

──真っ当な姿勢ですよね、それは。「ストレイシープ」「匿名」は映画のための書き下ろしですか?

東野 はい。せっかく映画の挿入歌の話をいただいたのに、ストック曲は使いたくないので。当たり前ですけど、映画を作るのって膨大な知恵と時間がかかるじゃないですか。それを無視して、因果性のない曲を提出するのは失礼だと思うので。「匿名」はどこのだれかの作詞作曲なんですが、もちろん映画のことを考えて書いただろうし。

どこのだれか 考えてますよ。

東野 書いているときは映画のことを考えてましたけど、なおかつ「これは自分たちの曲だ」と言い切れなくちゃいけない。そのギャップをどう埋めるかということですね、大事なのは。映画のタイアップでありながら、自分たちの看板を掲げて前に出ていけるというのが、作曲家の人とバンドの差異だと思うので。

──「ストレイシープ」はどんなテーマで制作されたんですか?

東野 まず完成前の段階で映画を観させてもらって、「この作品が言いたいことはなんだろう?」と考えるところから始めました。最初に思ったのは「広大な社会の中で、1人の人間が自分の居場所を見出す」ということだったんですが、それは神僕として音楽をやる意味とも共通していたんですよね。僕自身もいつも考えているテーマだし、常に歌にしたいと思ってることでもあるので、やりやすかったです。

──ボーカリストという立場として、どこのだれかさんはこの曲をどう捉えてますか?

どこのだれか まず、歌詞を書くすべての人の中で、東野は一番いい歌詞を書くと思っていて。「ストレイシープ」の歌詞も、冒頭の1行目(「気の弱い子供だったよな よくある授業の一つだった」)から一気に引き込まれたし、すごくいい歌詞で。あとはもう、ボーカルとしてこの歌詞を最適に伝えられるように歌うだけでしたね。

──作詞家としての東野さんにも全幅の信頼を寄せている、と。

どこのだれか はい。歌いづらいことはありますけどね。テンポが速すぎたり(笑)。

東野 それはしょっちゅうあると思います(笑)。

どこのだれか 「ストレイシープ」は歌いやすかったですけどね。シングルの制作の少し前に「もう少し歌いやすいように作って」という話をしたんですよ。

和泉 あ、そうなんだ。

どこのだれか うん。思った以上に歌として難しい曲もあったから。

東野 そうそう。それで僕も「ちょっと考えてみる」って答えて。

和泉 特に今回は映画の挿入歌だし、いつもより耳当たりをよくしてくれたんじゃないかなと。

──ドラム、ベースに関しては?

和泉 映画の曲であっても、我々がやることは変わらないですからね。ドラムは何か意識したことあった?

 ボーカルを録り終えて、一度完成したあと、ドラムだけ少し録り直したんですよ。東野が「イントロがどうしても気になる」って言うので。

東野 「イントロのハイハットが気になる」って(笑)。

 ちょっとした違いなんだけど、最初のレコーディングのときよりも楽曲の全体像が見えるようになったし、さらに楽曲に寄り沿った演奏ができたかなと。疾走感も出て、よくなったと思います。

──「ストレイシープ」のMVには映画に出演する波瑠さんが登場しています。こういうコラボレーションも増えそうですね。

東野 こういうことはクリエイティブな理由がある限りやっていきたいと思っていて。演奏シーンだけでもいいんですけど、僕らはマスクをかぶっているバンドだし、いろんなジャンルの人と一緒にやることで、ほかのバンドとは違う表現ができるんじゃないかなと。

このバンドの場合、任せたほうがいいものができる

──両A面のもう1曲、「匿名」はどこのだれかさんが作詞・作曲を担当しています。

どこのだれか 映画の最初のほうでは主人公の女性は「自分ってなんなんだろう?」と悩んでるんですよね。希望していた会社に就職したのに、地方の遊園地に赴任させられて、やりがいが見つからなくて。ストーリー的には現状を打破して、大切なものに気付くんですけど、「匿名」はその前の段階を歌っているんです。自分がいてもいなくても世界は同じように回っていくし、虚無感を抱えながら生きていると言うか。神僕の音楽にも、それと同じ感覚が含まれているんですよ。僕の名前は“どこのだれか”ですけど、それは「どこの誰であっても、何も変わらない」ということでもあって。曲を書いているときは映画のことを考えていましたけど、「ストレイシープ」と同じように、自分たちのバンドの曲としても成立していると思います。

──どこのだれかさんが作曲した楽曲の場合、アレンジはどうやって作っていくんですか?

和泉 東野の曲に比べると、我々の自由度が上がりますね。どこのだれかはこちらにある程度任せてくれるので。

どこのだれか 東野とは真逆ですね。自分の中に曲の完成図はあるし、1人で完成させるのも好きなんですけど、このバンドの場合、ドラムやベースのフレーズを任せてもまったく問題ないので。というか、そのほうがいいものができるんですよね。和泉のベースのアイデアは無限なので、絶対にお願いしたほうがいい。ドラムもパターンや強弱の付け方など蓮に任せていますね。

和泉 もちろんデモもしっかりしているんですけどね。デモを聴けば「こういうことがやりたいんだな」とすぐにわかるし、こっちが迷うこともないので。

──東野さんはギタリストとして楽曲に加わっている感じなんですか?

東野 と言うより、作曲もやっている感覚ですかね。

どこのだれか イントロのフレーズが全然浮かばなかったんですよ。しばらく考えたんだけど、やっぱりダメだったから東野に連絡して。

東野 どこのとアイデアは出し合いましたね。その時のやりとりはバンドらしい感じでした。そういうやり方が理想だと思うし、勉強になることも多いですね。同じことが自分の曲ではできないのが不思議でしょうがないです。

神様、僕は気づいてしまった「ストレイシープ / 匿名」
2018年10月17日発売 / Warner Music Japan
神様、僕は気づいてしまった「ストレイシープ / 匿名」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD]
2052円 / WPZL-31520~1

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神様、僕は気づいてしまった「ストレイシープ / 匿名」通常盤

通常盤 [CD]
1512円 / WPCL-12942

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CD収録曲
  1. ストレイシープ
  2. 匿名
  3. 52Hz
  4. 青春脱出速度
初回限定盤DVD収録内容

「SUMMER SONIC 2018」ライブ映像

  • UNHAPPY CLUB
  • メルシー
  • CQCQ
  • Behind The Scene at SUMMER SONIC 2018
神様、僕は気づいてしまった(カミサマボクハキヅイテシマッタ)
神様、僕は気づいてしまった
どこのだれか(Vo, G)、東野へいと(G)、和泉りゅーしん(B)、蓮(Dr)からなるロックバンド。ミュージックビデオやライブでは全員マスクをかぶっており、各メンバーの詳細なプロフィールは明かされていない。2016年11月に初の楽曲「だから僕は不幸に縋っていました」のMVをYouTubeで公開し、同曲がスクウェア・エニックスによるRPGシリーズ初のスマートフォン向け作品「スターオーシャン:アナムネシス」のテーマソングに。その後「僕の手に触れるな」がアニメ「ちるらん にぶんの壱」の主題歌に採用され、2017年5月発売のメジャーデビューシングル「CQCQ」がTBS系 火曜ドラマ「あなたのことはそれほど」の主題歌となった。同年7月には1stミニアルバム「神様、僕は気づいてしまった」をリリース。同年8月には「SUMMER SONIC 2017」の千葉・幕張公演で初ライブを行った。2018年7月にはテレビ東京系ドラマ「警視庁ゼロ係~生活安全課なんでも相談室~ THIRD SEASON」の主題歌「UNHAPPY CLUB」を配信リリース。10月には映画「オズランド 笑顔の魔法おしえます。」の挿入歌2曲を表題曲にした両A面シングル「ストレイシープ / 匿名」を発売する。