神様、僕は気づいてしまった|映画への書き下ろし曲で浮き彫りになった“神僕らしさ”

神様、僕は気づいてしまったが2ndシングル「ストレイシープ / 匿名」をリリースした。1stミニアルバム「神様、僕は気づいてしまった」以来、約1年3カ月ぶりのリリースとなる本作は、映画「オズランド 笑顔の魔法おしえます。」の挿入歌2曲を収めた両A面シングル。また初回限定盤に同梱されるDVDには、「SUMMER SONIC 2018」のライブ映像が収録される。

今回音楽ナタリーではメンバー全員インタビューを実施。ニューシングル「ストレイシープ / 匿名」をフックにしながら、楽曲に対するこだわり、独特の制作スタイル、ライブについての考え方などついて聞いた。

取材・文 / 森朋之

最初はライブをやることに反対だった

──シングル「ストレイシープ / 匿名」の話の前に、神様、僕は気づいてしまったのライブについて聞かせてください。昨年の「SUMMER SONIC」、年末の「COUNTDOWN JAPAN」、そして今年の「SUMMER SONIC」と大型フェスに3度出演したことで、神僕のライブのスタイルは見えてきましたか?

東野へいと(G) ライブのことについては……どう?(と、どこのだれか(Vo, G)を見る)

どこのだれか みんなこっちを向いてる(笑)。

和泉りゅーしん(B) だって、最初はライブのモチベーションが低かったから。

どこのだれか そうなんだよね。真面目に話をすると……このバンドは匿名性が高いじゃないですか。ミュージックビデオなどでも顔も出していないし、映像などを使って世界観を作ってきて。ライブをやると、今まで築き上げたものが崩れてしまうんじゃないかと思っていたんです。だから最初はライブをやることに反対だったし、去年のサマソニが決まったときも、どちらかというと消極的でした。

和泉 うん。

どこのだれか みんなは「ライブをやろう」と言っていて、僕だけ反対していて。そもそも写真ではマスクをかぶっているし、そのままの状態では歌えないじゃないですか。そういう現実的なことを含めて、神僕のライブがどういうものになるのかまったく想像できなかったと言うか……でも、実際にやってみると、「ライブならではの世界観、空気感というものがあるんだな」と実感できたんですよね。MVなどを通したバーチャルなコミュニケーションとは違う世界がそこにあったし、これはこれで別の表現なんだと前向きに捉えることができて。その後はライブをやるのが楽しくなってきたんです。今年のサマソニでは紗幕を厚くして、マスクにも改良を加えて。映像のクオリティも上がったと思うし、ガッツリ盛り上がらない人、後ろのほうでゆっくり観てる人にも楽しんでもらえたんじゃないかなと。ドラムの蓮が苦しくて倒れちゃうんじゃないかと心配してたんだけど、それもなんとか大丈夫でした(笑)。

(Dr) 確かに苦しいんだけどね、マスクしたまま演奏していると(笑)。

和泉 現時点では6、7曲が限度ですね。例えばワンマンで10曲以上やるとしたら、もっと改良が必要かも。

どこのだれか そうだよね。僕らは最後の曲が終わると、早々にステージを降りちゃうんですけど、実際息が苦しいということもあるからなんです(笑)。

和泉 (笑)。僕は最初からライブをやりたかったんですよ。MVや音源だけだと実際にどういう人たちが聴いてくれているのかはわからないので。実際ライブをやってみたら案の定、楽しかったですね。ライブのスタッフもプロフェッショナルの方々ばかりなので、僕らは演奏に集中すればいい環境があって。

東野へいとは超完璧主義

──そもそも演奏の難易度が高いですからね。

和泉 そうですね(笑)。

 特にベースは難しいよね。

和泉 今回のシングル初回限定盤に付属しているライブDVDを観てもらって、「ライブを真剣にやっている」ということを見て知ってほしいです。

 僕も和泉と同じで、ライブはずっとやりたいと思っていました。十代の前半からずっとバンドをやってきて、「まずはライブ」という活動を続けてきたので。顔を見せずに世界観を作り上げる神僕の活動のやり方も「新しくて面白いな」と思っていますけど、ライブも絶対楽しいはずと言うか、お客さんの前で演奏することで、いい化学反応が起きるという確信もあったんですよね。映像チーム、照明チームも素晴らしいし、ライブをやるたびに自分のフィーリングも出せるようになってきて。実はライブ映えする曲が多いんですよ、神僕は。でもレコ―ディングはすごくシステマティックで、最初にリズム隊が先に録って、そのあとにギターと歌を録るというやり方なんですよね。だからレコーディングの段階ではバンド感みたいなものを感じることが少なくて。ライブのリハでは実際に音を出しながらアレンジを決めたりするんですけどね。

和泉 制作に関しては、東野がデモの段階で作り込んでくるんですよ。そこから生のドラムとベースに置き換えて、さらに歌詞が入ることで人間味が出てくると言うか。基本的に彼が0から100まで作り上げてくれるし、必要以上に会話を重ねることもない。そういうやり方だからこそ、今の神僕の形があるんだと思います。

東野 僕は超完璧主義なんですよ。自分の頭の中に鳴っている音をそのまま形にしないと絶対イヤと言うか。だから本来はバンドをやっちゃいけない人間なんです。

どこのだれか和泉 ははは(笑)。

東野 例えばベースのフレーズにしても、デモの段階でかなり作り込んでるんですよね。

和泉 それを基にして僕もフレーズを考えるんですけど、「これでどう?」と東野に聴いてもらうと「ココはいいけどココとココはダメ!」ってフレーズを直されるんです。レコーディングではその通りに弾くので、その場のフィーリングみたいなものはほとんどなくて。ドラムはちょっと違うよね?

 もう少し好きなようにやってるかも(笑)。レコーディングの前までにすごく考えるし、東野がこだわっている部分を尊重しながら、「ここは自分らしくやろう」というところもある感じですね。

東野 僕とどこのだれかが我を貫く感じで、リズム隊の2人はフォロワーシップが強いんですよ。

どこのだれか ホントにそう。和泉、蓮がしっかり合わせながら自分を出してくれるからバンドが成り立っていると言うか。

東野 そのバランスが神がかってるんです、神僕は。

「CDが売れないから、ライブをやる」というのは安易

──ちなみに東野さんは、ライブに対してはどういうスタンスなんですか?

東野 真面目な話をすると、この2年間は周りに助けられていたと思っていて。ライブにしても「このバンドはどういうライブをやるんだろう?」というところから入るわけじゃないですか、お客さんもスタッフも。甘えているわけではないけど、そこで大目に見てもらえる部分もあっただろうし。ただ、このあとのライブからは、本当のバンドの力が試されると思うんですよね。僕たち自身も、神僕でライブをやることの意味を見出していかないといけないという危機感はありますね。

どこのだれか MC1つにしても、どうするか考えないと。

東野 そうそう。「CDが売れないから、ライブをやる」というのも安易だと思うし、そもそも神僕はそういうバンドはないですからね。「バンドなんだからライブをやる」という惰性ではなく、1つひとつの楽曲に対して、ライブでやる意味をしっかり考えないと。そういうバンドの哲学、バンドの芯がまだまだ弱いと思うんです。クリエイティブに関することだから、うれしい悩みでもあるんですけどね。

神様、僕は気づいてしまった「ストレイシープ / 匿名」
2018年10月17日発売 / Warner Music Japan
神様、僕は気づいてしまった「ストレイシープ / 匿名」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD]
2052円 / WPZL-31520~1

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神様、僕は気づいてしまった「ストレイシープ / 匿名」通常盤

通常盤 [CD]
1512円 / WPCL-12942

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CD収録曲
  1. ストレイシープ
  2. 匿名
  3. 52Hz
  4. 青春脱出速度
初回限定盤DVD収録内容

「SUMMER SONIC 2018」ライブ映像

  • UNHAPPY CLUB
  • メルシー
  • CQCQ
  • Behind The Scene at SUMMER SONIC 2018
神様、僕は気づいてしまった(カミサマボクハキヅイテシマッタ)
神様、僕は気づいてしまった
どこのだれか(Vo, G)、東野へいと(G)、和泉りゅーしん(B)、蓮(Dr)からなるロックバンド。ミュージックビデオやライブでは全員マスクをかぶっており、各メンバーの詳細なプロフィールは明かされていない。2016年11月に初の楽曲「だから僕は不幸に縋っていました」のMVをYouTubeで公開し、同曲がスクウェア・エニックスによるRPGシリーズ初のスマートフォン向け作品「スターオーシャン:アナムネシス」のテーマソングに。その後「僕の手に触れるな」がアニメ「ちるらん にぶんの壱」の主題歌に採用され、2017年5月発売のメジャーデビューシングル「CQCQ」がTBS系 火曜ドラマ「あなたのことはそれほど」の主題歌となった。同年7月には1stミニアルバム「神様、僕は気づいてしまった」をリリース。同年8月には「SUMMER SONIC 2017」の千葉・幕張公演で初ライブを行った。2018年7月にはテレビ東京系ドラマ「警視庁ゼロ係~生活安全課なんでも相談室~ THIRD SEASON」の主題歌「UNHAPPY CLUB」を配信リリース。10月には映画「オズランド 笑顔の魔法おしえます。」の挿入歌2曲を表題曲にした両A面シングル「ストレイシープ / 匿名」を発売する。