神聖かまってちゃんのちばぎんが、10年間にわたってベーシストを務めてきたこのバンドから、2020年1月13日の東京・Zepp DiverCity TOKYO公演をもって脱退する。今年9月に2児の父親になった彼は、音楽での稼ぎで家族を養うことが難しくなったため、バンドマンとしての生活に区切りをつけることにしたのだという。
バンドにとってこれまでにない節目とも思えるこの状況の中、彼らはちばぎん脱退ライブ直前の1月8日に、通算10枚目のアルバム「児童カルテ」をリリースする。音楽ナタリーはメジャーデビュー前から神聖かまってちゃんにインタビューを行ってきたが、今回初めてメンバー全員そろっての取材を実施。現在の各メンバーの心境や、現編成でのラストアルバムとなる「児童カルテ」の制作エピソードなどを、4人にたっぷりと話してもらった。
取材・文 / 橋本尚平 撮影 / 沼田学
単純に、裏切られた気分でしたね
──ちばぎんさんは脱退を決めたとき、どんな気持ちでしたか?
ちばぎん(B) 「もうここらで潮時か」って感じですね。
──潮時というのは経済的に?
ちばぎん そうですね。ツイキャスをやってると「いろいろ差し入れするから!」「お茶爆(配信者を応援するアイテム)いっぱい投げるから!」とか、なんとか僕を辞めさせないようにしたいファンの方からのコメントが飛んで来るんですけど、今一時的になんとかなったとしても、2人の子供が高校に入って大学に入って、というところまで父親として家庭を安定させ続けなければならないことを考えると、さすがにちょっとかまってちゃんでは未来が見えないと思ったんです。そんな状態で子育てしていいのかと。
の子(Vo, G) 俺ら来年売れますけどね(笑)。
mono(Key) ちばぎんがいなくなった途端、ドカッといきなりね。
の子 まあ、きっと俺も子供を持ったりしたら、父親としての責任感がつきまとうものなんだろうなとは思うんですよ。でも子供いないからわかんないし、今の自分にとっては別の世界みたいな話ですけどね。
──の子さんには想像がつかない?
の子 この年齢までバンドをやってきて、いきなり辞めて社会人になって子供育てるとか考えられん。自分に当てはめて考えたらそれはすごい変化だし、簡単なことじゃないと思うな。「がんばって!」って感じ。いやホントに。
みさこ(Dr) これは私の勝手な解釈なんですけど、ちばぎんにとって「新しい家族ができたから」というのはきっかけであって、理由ではないんじゃないかなと思ってるんです。「子供が産まれたから辞める」じゃなくて、きっと「自分の中でバンド人生みたいなものがひと区切り付いたと感じた」なんだろうなって。
の子 うん、きっといろんな要素はあるんだと思う。俺はそれについて根掘り葉掘り聞いたりしないけど。
──monoさんは、ちばぎんさんが脱退するという話を聞いたとき、どう思いました?
mono いやー、単純に、裏切られた気分でしたね。
の子 お前が一番怒ってたよな(笑)。
mono そのときは怒りの感情しかなかった。「おいマジかよふざけんな」って。だからもう、今後かまってちゃんがものすごく売れたときに、ちばぎんに「やっぱりまた入れて」って言われても絶対に入れさせない。
ちばぎん ははは(笑)。
みさこ 売れるとか売れないとか関係なく、私も心配はしたよ。「本当にまたやりたくなったりしないのかな?」って。
mono それはないでしょ?
の子 別に神聖かまってちゃんじゃなくてもバンドはできるからね。もともと別のバンドでフロントマンとして曲書いてたわけだし。
ちばぎん そうそうそう。柏のライブハウスでもブッキングしてライブをやるとか、全然できない話ではないし。
──「生活の中心をかまってちゃんにするのが難しい」というだけの話であって、音楽ができなくなるわけじゃないですもんね。
ちばぎん もちろん。いずれ生活が落ち着いたらやりたいな、くらいには漠然と思ってます。
自分はなんのために神聖かまってちゃんをやってるのか
──の子さんはちばぎんさんから脱退の話を聞いたときにどう感じましたか?
の子 俺はほかのメンバーのあれこれに、あんまり踏み込まないようにしてるんです。そういうところは自分でも冷たいと思う。ただ、物事にはいろいろな見方があって。ちばぎんを同じバンドのメンバーとして見たらそんな感じだけど、友達という立場で見たときにいろいろ考えさせられたんですよね。「じゃあ自分はなんのために神聖かまってちゃんをやってるんだろう」とか……。
──あくまで例えばの話、の子さんが「神聖かまってちゃんを脱退します」と言ったら、monoさんとみさこさんで神聖かまってちゃんを背負って続けていこうとは、たぶん思わないと思うんですが……。
の子 わはは(笑)。monoくんとみさこさんで曲を作って? すごい話ですねそれ。
みさこ やるとしても、絶対にかまってちゃんではなく別ユニットにする(笑)。
──もし将来、monoさんやみさこさんがなんらかの事情でいなくなったり、音楽活動が続けられなくなったとして、の子さんは神聖かまってちゃんを続けていくでしょうか?
の子 どうだろう……ちょっとわからないな、そのときになんないと(笑)。
ちばぎん でも、神聖かまってちゃんが続くか続かないかに関係なく、の子が音楽を辞めるっていうことは、きっとないだろうと思います。
の子 俺もそんな気がする。それこそ俺だって、将来もしかしたら結婚したり子供作ったりするかもしれない。そうなったらペースは今より落ちるのかもだけど、それでも曲は作り続けてると思います。つうか、今はあんまりそういうこと考えたくないですけどね(笑)。俺はずっと自由でいたいから。やっぱり子供ができたら子供が自分の人生の主人公になっちゃうし、結婚するとしたら50歳とか60歳でいいかな。それで言ったらみさこさんはどうなの? 女の人は子供ができたらバンドを休まないといけない時期ができるわけでしょ。
みさこ いやー、どうだろう? それは子供を産むか産まないかで変わることだと思うから。私は仮に結婚したとしても、相手と一緒に住まないと思うし、子供を作ろうという気持ちもないし。
mono え? 一緒に住まないの?
みさこ 「私と家族になってもいい」って認めてくれた人がこの世に1人いる、という事実が大事かなって(笑)。それに私は自分の遺伝子を残したい欲があんまりなくて。子供は好きだから、養子をもらって子供を育てることはあるかもだけど、自分で産むっていうのは授かり婚でもしない限りないんじゃないかな。
──結婚に関して言えばmonoさんも経験者なわけですが。
mono いやもうね、まったくアレですよ。今のところ本当になんにもないんで……まあいいや。あはは(笑)。
ちばぎん 再婚したいかしたくないかで言えば、したいの?
mono したいんだけど……どうなんだろうな。1回失敗してるから、今度こそ慎重になんなきゃなっていうのが……。
みさこ いや、逆だと思う! 慎重になりすぎてもよくないと思うよ? 勢いで行かないと結婚なんてできないんじゃないのかな。
の子 そもそもこの3人、恋人がいないですからね。結婚とかそれ以前の話。
mono 結婚するかしないかの前に彼女作らなきゃね。