ナタリー SuperPowerPush - 神聖かまってちゃん
ニューアルバム「楽しいね」総力特集
ライブレポート
試聴会の間ずっと楽屋で待機しつつライブ開始を待ちわびていたというメンバーは、1曲目「肉魔法」から力の入ったハイテンションな演奏を披露。近年は大きな会場でのライブが多いかまってちゃんだが、この日は彼らのホームが渋谷屋根裏であることを改めてファンに伝えるかのような伸び伸びとしたパフォーマンスで会場の熱気を急上昇させる。その後も、みさこがメインボーカルを務めるライブ初披露のナンバー「熱いハートがそうさせないよ」や、ライブでは数年ぶりの演奏となった「神様それではひどいなり」、そしてニューアルバムからの新曲「友達なんていらない死ね」といった珍しい選曲でライブを進行させていく。
ちばぎんとみさこはMCで、渋谷屋根裏でライブをしていたバンド初期の頃のことを振り返り、30分の持ち時間が与えられた同会場のライブでの子がひたすら1時間「アラレちゃん音頭」を踊り続けていた件について回想。ちなみにこの日の入場SEは、このエピソードにちなんでいつものB.B.クイーンズ「夢のENDはいつも目覚まし!」ではなく「アラレちゃん音頭」が使われていた。
いつも通りの自由なトークを交えつつも、この日はテンポよく楽曲が披露されライブはスムーズに展開。バイオリンをサポートに迎えての「笛吹き花ちゃん」や、「死にたい季節」といった初期曲で観客をどんどん盛り上げていく。「おっさんの夢」で「まだ まだ 夢があるから」と声の限りに叫んだの子は、歌い終えた直後に「あたりめえだ! まだまだ夢があるんだよ。これからもずっとずっとかまってちゃんやってくよ!」と力強く宣言。ちなみに彼はこの演奏が会心の出来だったようで「スティーブン・スピルバーグの感動作をTSUTAYAさんで3本借りたくらいの感動があったな。でも向こうはフィクションで、こっちはノンフィクション。俺はスピルバーグよりすげえぜ」と自画自賛していた。
渋谷屋根裏でこの曲を演奏できるのは感慨深いという話から始まった「Os-宇宙人」では、押し寄せるような音の波に揉まれながら観客も楽しそうに踊り続ける。そして本編最後の曲に選ばれたのは「美ちなる方へ」。の子の煽りに促されるまま満員の会場が一斉に手拍子をし、の子がギターを弾きながらフロアにダイブしてライブは終了した。
アンコールが始まると、ちばぎんはなぜか「犬神家の一族」の犬神佐清を思わせる白マスクをかぶって登場。そしての子は全裸になって、ギターで股間を隠した状態でステージに現れた。自分が全裸であることについて、の子は「渋谷屋根裏は、うっそぴょんやびばるげばる書店の頃から出ていた思い入れのある場所。あの頃は流血ライブとかいろんなことがあったけど、でも一番の思い出は全裸で『ちりとり』を歌ったことなんです。この場所でライブをやる機会があったら、もう一度これをやろうと心に決めてたんです」と説明。「ステージで裸になるのはもうこれが最後だ。俺だって脱ぎたくてやってるわけじゃない。でも過去にそういう時代があったのは確か。こうすれば客が5~6人しかいなかったあのときの気持ちに戻れる」と全裸のまま熱く語った。
そこから披露された「ちりとり」は、さまざまな感情が一気に吹き出した迫真のパフォーマンスに。の子は今にも泣き出しそうな感極まった表情で初恋の人への思いを叫び、歌い終えると「かおりちゃん、僕は今でも変わんないぜ」とつぶやいた。そのままラストの楽曲「スピード」になだれ込むと会場の熱気はますます上昇。の子は全裸のまま再びダイブしたが床に落下して姿を消し、「股間はやめてください!」と繰り返し叫ぶ声が会場に響き渡った。ライブ終了後、無事ステージに戻ったの子は来場者たちに向かって「この選ばれしメンツで集まってまたライブをやろう!」と語りかけ、充実感に満ちた顔でステージから去っていった。
セットリスト
- 肉魔法
- 熱いハートがそうさせないよ
- 神様それではひどいなり
- 友達なんていらない死ね
- 笛吹き花ちゃん
- 死にたい季節
- おっさんの夢
- Os-宇宙人
- 美ちなる方へ
アンコール
- ちりとり
- スピード
» の子インタビュー
CD収録曲
- 知恵ちゃんの聖書
- 仲間を探したい
- 友達なんていらない死ね
- コンクリートの向こう側へ
- ベルセウスの空
- 雨宮せつな
- 2年
- らんっ!
- 鳥みたくあるいてこっ
- 花ちゃんはリスかっ!
神聖かまってちゃん(しんせいかまってちゃん)
の子(Vo, G)、mono(Key)、ちばぎん(B)、みさこ(Dr)の千葉県在住メンバーからなるロックバンド。の子による2ちゃんねるバンド板での宣伝書き込み活動を経て、自宅でのトークや路上ゲリラライブなどの生中継、自作ビデオクリップの公開といったインターネットでの動画配信で注目を集める。
2009年には1600組の応募バンドの中から選ばれ、一般公募枠で「SUMMER SONIC 09」に出演。2010年3月に初のCD作品となるミニアルバム「友だちを殺してまで。」を発表した後、ワーナーミュージック・ジャパンと契約し、2010年12月にメジャーレーベルのワーナーから「つまんね」、インディーズレーベルのPERFECT MUSICから「みんな死ね」という2枚のアルバムを同時リリースした。
2011年4月にはバンド史上最大規模の会場となる両国国技館ワンマンライブを行う予定だったが、東日本大震災の影響により中止に。これを受け、4月から6月にかけて全国8都市を回るフリーライブツアーを敢行した。2012年 11月にはメジャー3作目となるアルバム「楽しいね」をリリース。子供の頃の暗い記憶やニートの抱える不安な感情などを美しいメロディに乗せた楽曲、予測のできない破滅的なライブパフォーマンスでファンを増やし続け ている。
2012年11月21日更新