ナタリー PowerPush - 神聖かまってちゃん

俺は光ファイバー! の子単独インタビュー

曲が書ける健康的なリア充になりたい

の子

──個人的にはの子さんには楽しい日々を過ごしていてほしいと思うんですが、その一方で、の子さんが悩んで、つらい思いをしてるおかげでいい曲ができるという面もあるかと思うんです。の子さんの苦悩がバンドにとっての原動力になっている部分はありますか?

なってます。確実になってますね。やっぱり、そういう人間だからこそバンドやろう、曲作ろうってなったんだと思います。つらい気持ちをどう吐き出すかってことで。子守唄じゃないですけど、自分のために歌ってるっていう。

──じゃあもし今、の子さんがリア充になって、健康的な悩みのない生活を送れるとしたらどうします? それを望みますか?

健康的で悩みのない生活ですか? 望みますね。

──でもそうしたら曲が作れなくなるかもしれない。

そうですね。作れなくなると思います。「曲を書こう」という感情がなくなると思います。そんときはそれでショックを受けると思います。うーん、そうですね。やっぱ曲書けなくなったらイヤですわ。曲が書ける健康的なリア充になりたいです(笑)。

──難しそうですね(笑)。そもそも、の子さんを悩ませているものってなんなんでしょうか?

パッと浮かぶのは、……真面目さ?

──どういうことですか?

ライブの前とか配信するときとか「ぐわー!」ってなっちゃって。monoくん(Key)にはよく「真面目だからだ」「バカになれよ」って言われる。

──何も考えてなければ悩む必要もないですからね。

だから僕はmonoくんみたいなバカが近くにいて、すごく良かったと思ってます。「そっか、俺もバカになっていいんだ」って思えるから。でもそうなってしまったら曲書けないんですけど。配信中にペラペラしゃべってる自分なんて正直バカだとしか思いません。僕は逃げてるんですね、本当の自分を見せることから。

学校生活への憎悪はある程度吐き出してしまった

──の子さんが抱えている苦悩の質は、かまってちゃんを始めてから変わりましたか?

そうですね。そこは多分曲に表れてると思います。初期は学校に対する恨みつらみがものすごく自分にとってリアルだったんで、それをまず吐き出そうって思ってました。自分の人生で学校生活というものに勝る憎悪はなかったです。

──確かに、学校生活に対する憎悪はインディーズ時代の2枚、「友だちを殺してまで。」と「夕方のピアノ」に色濃く出ていましたよね。その憎悪を「つまんね」と「みんな死ね」である程度吐き出しきって、それ以降、の子さんの歌のテーマや世界観はだんだんと変化してきているような気がするんですが。

の子

そうなんですよ。まあ端的に言ったら変わってきてると思います。世界観は変わってないと僕は思うんですけど、テーマは確かに変わってきてます。やっぱり昔はもっとドロドロしてたんで。

──今回のアルバムはあんまりドロドロしていない?

そうですね、全体的に。

──それは今回このアルバムがたまたまポップな作品になったということですか? それともの子さん自身の本質的な変化なんでしょうか?

うーん、変わったって言い切りたくはないですね、僕は。なぜかというとやはりドロドロしてたいという気持ちがあるんで。だけど現実問題、変わってしまった部分は確かにあるかもしれません。僕としてはドロドロとポップさを混ぜ合わせた感じがいいんですけど。それをいい塩梅で残したいです。

──ドロドロした面もかまってちゃんの魅力のひとつだから、そこが失われてしまったんだとしたら惜しいという気持ちはありますけどね。

あ、マジですか。でもそれはあるでしょうね。実際僕も自分が好きだったバンドが、メジャーに行ってしまってからドロドロしなくなったみたいなことありますし。だからそういう見方されるのはわかりますわ。

──実際のところはどうなんですか? ドロドロした部分はもう失われてしまった?

確かに、そこまでドロドロする機会が少なくなったっていうのはありますね。メジャー活動で、ツアーとかでそんなドロドロしたライブできないんで。でもドロドロしてたいですね。ドロドロしなくちゃな。リストカットでもしようかな(笑)。まあ、そういうふうに思われるのはわかります。でも俺は俺の進むべき道を歩んでるし、俺は俺なんだ、って感じです。

──いつまでも“非リア充の代弁者”みたいに言われ続けるのはイヤだと。

そんなんハナから思ってないですから(笑)。俺は自分のために歌ってるんだ。知るか馬鹿野郎!ってことです。変化しないのが一番嫌いだし、みんなが思ってるとおりになるのは気持ち悪い。だからそういったもんは裏切ってやりたい。ひねくれてるだけなのかもしれないですけど。

ニューアルバム「8月32日へ」 / 2011年8月31日発売 / 2800円(税込) / Warner Music Japan / WPCL-10988

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CD収録曲
  1. グロい花
  2. 22才の夏休み
  3. 夕暮れメモライザ
  4. コタツから眺める世界地図
  5. 映画
  6. 僕は頑張るよっ
  7. 制服b少年
  8. 死にたい季節
  9. バグったのーみそ
  10. 23才の夏休み
  11. 26才の夏休み(ボーナストラック)
神聖かまってちゃん(しんせいかまってちゃん)

の子(Vo, G)、mono(Key)、ちばぎん(B)、みさこ(Dr)の千葉県在住メンバーからなるロックバンド。の子による2ちゃんねるバンド板での宣伝書き込み活動を経て、自宅でのトークや路上ゲリラライブなどの生中継、自作ビデオクリップの公開といったインターネットでの動画配信で注目を集める。

2009年には1600組の応募バンドの中から選ばれ、一般公募枠で「SUMMER SONIC 09」に出演。2010年3月に初のCD作品となるミニアルバム「友だちを殺してまで。」を発表した後、ワーナーミュージック・ジャパンと契約し、2010年12月にメジャーレーベルのワーナーから「つまんね」、インディーズレーベルのPERFECT MUSICから「みんな死ね」という2枚のアルバムを同時リリースした。

2011年4月にはバンド史上最大規模の会場となる国技館ワンマンライブを行う予定だったが、東日本大震災の影響により中止に。これを受け、4月から6月にかけて全国8都市を回るフリーライブツアーを敢行した。同年8月31日に4thアルバム「8月32日へ」を発表。子供の頃の暗い記憶やニートの抱える不安な感情などを美しいメロディに乗せた楽曲、予測のできない破滅的なライブパフォーマンスでファンを増やし続けている。