ナタリー PowerPush - 神聖かまってちゃん
「つまんね」「みんな死ね」全曲解説
「美ちなる方へ」
──じゃあ次「美ちなる方へ」なんですが。
はい。これはサッとできました。サッとできたし、できたときに「やった!」みたいな感がありましたね、この曲は。
──「友だちを殺してまで。」のリリース直後にサイトにPVをアップしてましたよね。
そうですね。あの頃とか何やってたんだろ。とりあえず俺があんとき思い出せんのが「踊ってみた」ってやつ。あれ投稿したのと「美ちなる方へ」あたりは同時期あたりだったの覚えてる。そこらへんは結構強烈に。
──この「美ちなる方へ」はすごくいい仕上がりですよね。
でもこれはデモのがいいですよ。
──そうですか?
もともとの映像ありきのほうが断然いいですね。まあとりあえず曲としていいんで。まずメロディがいいんで。
──きれいだし、ちょっと神聖な感じもありますよね。
うん。っていうか、ふふふ(笑)。キャッチーです、いろんな意味で。
──それに「出かけるようになりました」っていう歌詞も前向きですよね。の子さんが自分の気持ちを歌った曲で、こんなポジティブな曲はほかにない気がして。
なんかバランス取れたんじゃないですかね。その前に「黒いたまご」作ったときは完全に落ちたんですよ。そのあと「美ちなる方へ」作ったんで、ちょっと落ちてたときに作り始めて途中で上がったんじゃないですか。たぶんそれの組み合わせじゃないですかね、これは。だって上がんなきゃ治んねえもん。俺、思い出せるのがまずイントロの部分の♪ペーペーっていうとこ。あれは頭狂ってたときに作った。とりあえず原型はあれだったんですよ。けど途中最後とかキラキラキラキラキラーなんていう部分は、むしろちょっと上がってましたね。だからその落ちたときと上がったときが見事に組み合わさって(笑)。ただ単に落ちてたら、キラキラんとこはなかった。くっくっく(笑)。いや、ホントに俺がまずこれで思い出すのはイントロ。やっぱあれがいいんすよね。
──でもここまで希望のある歌詞は例えば2年前とか3年前には出てこなかったんじゃないですか? やっぱり今のの子さん自身の変化や状況の変化が関係しているように思うんですが。
うーん、そう言われるとわかんない。わかんないとはぐらかしてしまう。
──個人的にはこの「美ちなる方へ」は「つまんね」の中でも特に感動的な楽曲だと思います。
マジすか。まあ、そうなのかもしれません。僕はやっぱ個人的にはアルバム単位で言ったら違いますけどね。
──でもの子さん自身にとってもやっぱり大事な曲?
曲は全部大事です。全部自分のために歌ってるんで。
「芋虫さん」
──で、4曲目「芋虫さん」。これはなんというか不思議な曲ですよね。
うん、自分でもなんとも言えない。どうやって作ったかとか言われても、作ったのは去年よりずっと前。昔だし。
──曲調やアレンジの面で何かの影響を受けたりインスパイアされたりっていうことはあったりしますか?
えっ、いや、インスパイアされたりっつうのはあるとは思うんですけど、全部そのときの感覚なんで。
──この曲はちょっとシューゲイザーっぽいところもある気がして。
シューゲイザーっていっつも言われますもん、なんか。どこがシューゲイザーなのかよくわかんないすけど、それは「23才の夏休み」でも言われましたし。ふふふ、全然わかんないっす(笑)。
──ちょっとサイケな感じもありますし。
まあサイケな感じってのはわかりますけど。あと結構僕が言われんのが童謡的とか言われんですけど、まあ、そういった部分もありますよ。なんか教育テレビで流れてきそうな、そういったのはたぶんあると思いますわ。かわいい感じの。
──そういう曲の場合は、最初から「かわいい感じの曲を作ろう」と思って作るんですか?
かわいい感じの曲を作ろうと思って作るんじゃなくて、もともとかわいさは必要であると思ってるので。やっぱ僕が自分の曲を「ポップロック」って言いたいのは、やっぱかわいさがあるからなんで。やっぱポップスはかわいさで、キャッチーさで、それはバンド全体として言えることです。それを言ったら「芋虫さん」だけの話じゃなくなっちゃいますけど(笑)。
──バンドの姿勢としてかわいさを重視しているということ?
はい、キュートでキャンディキャンディであることは大事だと思いますね。
「黒いたまご」
──次に「黒いたまご」ですね。
もう曲順忘れてました。はい。これは確実にデモのが良いです。そのPVが。あの、うん、「美ちなる方へ」と「黒いたまご」はやっぱりPVありきなんですよね、いやホントに。
──確かにあの「黒いたまご」のPVは強烈ですもんね。
あれは僕もなんつうか、なんか、うん、あれは本当に良い感じだな。
──曲自体は、さっき言ってたかわいさとかポップロックみたいな感じよりは、もう少しシリアスな印象が強いですね。
ああ、まあそうかもしれませんね、全体として見たら。
──ちょっと救いがないというか。
実際、ない状態でしたから、僕も。いや、ヤバかったんですよ。そういうのは曲に全部表れてると思いますけど。
「笛吹き花ちゃん」
──「笛吹き花ちゃん」はポップで気持ちのいい曲ですね。
そうですね。だから「花ちゃん」をレコーディングしたとき、覚えてんのが、レコーディング中に僕が頭おかしくなってきて、嫌な音を、困らせてやろうっていう音を入れてた。2時間か3時間かわかんないけど、時間覚えてないわ、もう。でもなんか嫌な音を、使わねえだろって音をめっちゃ入れて嫌がらせしてたんですよ。
──嫌がらせ?
憂鬱な音みたいなものをたぶん入れてて、その音はかすかに残ってます。イントロとかはそうですね。イントロ部分はシンセギターから入るんすけど、なんかフワーッみたいな。あれはそのときの名残りです。でもあれは良い名残りです。
──良い名残り(笑)。
そういう、困らせてやろうっていうか。まあそんな感じですね(笑)。
──「花ちゃん」に実在のモデルはいるんですか?
実在のモデルはいません。
──の子くんの想像から生まれた物語ということ?
想像というか、やっぱりなんだかんだで照らし合わせる部分はあります。自分に照らし合わせた感じというか。
──じゃあ「花ちゃん」は自分の分身みたいなものなんですかね。
うん、たぶんそうだと思いますよ。ほかの曲でもそういうのはあります。
──この曲を聴いていて、筋肉少女帯の世界観に近い部分をちょっと感じたんですが。影響は受けてると思います?
あるんですかね。筋肉少女帯は好きですよ。ただ筋肉少女帯の影響をこれが受けてるかといえばわかんないです。歌詞の世界観とかそういうものは。うん、いや別に影響はどこかで受けてると思うんで、その影響下にはあるのかもしれませんけど、直接的にはないですね。
──じゃあこの曲じゃなくても、何かの音楽を聴いて「こういう感じの曲を作りたい」というふうに、直接影響を受けて曲を作ることってあります?
うーん、ないこともないと思うんですけど。ただ、この曲はボーカロイドが主流なときに作った曲で、僕が使いこなせてたら歌わせてたかもです(笑)。
CD収録曲
- ねこラジ
- あるてぃめっとレイザー!
- ベイビーレイニーデイリー
- 自分らしく
- 怒鳴るゆめ
- 最悪な少女の将来
- スピード
- 男はロマンだぜ!たけだ君っ
- 神様それではひどいなり
- 僕のブルース
- ぽろりろりんなぼくもぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃーん
- いくつになったら
- 口ずさめる様に
神聖かまってちゃん(しんせいかまってちゃん)
の子(Vo,G)、mono(Key)、ちばぎん(B)、みさこ(Dr)の千葉県在住メンバーからなるロックバンド。の子による2ちゃんねるバンド板での宣伝書き込み活動を経て、自宅でのトークや路上ゲリラライブなどの生中継、自作ビデオクリップの公開といったインターネットでの動画配信で注目を集める。2009年には1600組の応募バンドの中から選ばれ、一般公募枠で「SUMMER SONIC 09」に出演。2010年3月に初のCD作品となるミニアルバム「友だちを殺してまで。」を発表した後、ワーナーミュージック・ジャパンと契約し、2010年12月にメジャーレーベルのワーナーから「つまんね」、インディーズレーベルのPERFECT MUSICから「みんな死ね」という2枚のアルバムを同時リリース。子供の頃の暗い記憶やニートの抱える不安な感情などを美しいメロディに乗せた楽曲、予測のできない破滅的なライブパフォーマンスでファンを増やし続けている。