ナタリー PowerPush - 神聖かまってちゃん
「つまんね」「みんな死ね」全曲解説
神聖かまってちゃんが待望のフルアルバム2枚を同時リリース。「つまんね」がメジャーレーベルのワーナーミュージック・ジャパンから、「みんな死ね」がインディーズレーベルのPERFECT MUSICからという変則的な形で発表されるこの2作は、このバンドの持つ衝動と繊細さを余すところなく詰め込んだ、紛うことなき傑作だ。
2010年音楽シーンの台風の目として、あらゆる層を巻き込み、かき回し続けてきた神聖かまってちゃん。だが、このアルバムを聴けば、このバンドが戦略や話題性だけでなく、その音楽の素晴らしさ故に多くの人を引きつけているのだということが、誰の耳にもはっきりとわかるはずだ。
今回のインタビューでは、全曲の作詞作曲を手がけるの子(Vo, G)に、アルバム2枚全24曲について1曲ずつ語ってもらった。約20000字に及ぶその言葉のひとつひとつを、アルバムを聴きつつじっくりと味わってもらいたい。
取材・文/大山卓也 撮影/平沼久奈
CDっていう形を入口として自分の作品を伝えたい
──今回のインタビューは全曲解説という形で、アルバム収録曲それぞれについて話してもらいたいと思ってるんですが。
ああ、そこっすか。うん、たぶん長くなりますけど。長くなるか簡単になるか、どっちかです。わかんないです。訊いてみてください。つうかどんな話すればいいですか。
──曲ができたときの状況や、生まれたきっかけ、レコーディングのエピソードなどですかね。
レコーディングのエピソードっつうと、なんかイヤなことしか思い出さないんですけど。
──例えば?
そこらへん強烈なんで。レコーディングの最初の頃とか、特にスランプというかパニックになって、わけわかんない音を詰め込もうとしたり。嫌がらせしようとしたり。
──やっぱりずっとスタジオにこもっていると精神状態がおかしくなりますか。
そういう日はありますね、僕は。だからかなり面倒くさいです。終わった後に罪悪感を感じたりします。毎回そうなんすよね。何回反省してんだお前、みたいな。でもやっぱり調子悪いときメンバーが笑ってたりすると、もう「死ね!」とか思ったりしてました。
──メンバーが笑ってるのは別にいいんじゃないですか(笑)。
いや、なんかそれが憎悪になるときっていうのはやっぱあるんですよ。そのときの精神状態で「死ね!クソが!」ってなりますよ。レコーディングで思い出すこととか訊かれても、それしか出てこないんで。いつからレコーディング始めたかとか、そんなんまるっきりどうでもいいし覚えてないし。
──でも憎悪を感じつつも、音楽を作っていくのは基本的に好きなんですよね?
いや、そりゃ初めは楽しいですよ、元のデモ作ってるときは。でもCDになるときにもう一度外に向けたものを作る。げんなりしますよ。作ってるとき、ハマってガーってやってる間はたぶん楽しいです。でも基本的にはげんなりしてます。やっぱ意欲が湧きませんわ。でもやっぱりこのCDっていう形を入口として、自分の作品をやっぱ伝えたいっていうのはあるんじゃないですか。売名というかそういった一環として。だから初心者入門編としていいかなみたいな、そういう認識はありますけど。
「白いたまご」
──じゃあまずアルバム「つまんね」の1曲目に収録されている「白いたまご」について聞かせてください。この曲を1曲目に持ってこようと思ったのはなぜですか?
1曲目っぽいからじゃないですか、出だしとか。もう1曲目しかないだろみたいな。
──これはいつ頃どんなきっかけで作った曲?
それは思い出せねえな……、ふふふ(笑)。
──思い出せる曲もありますよね?
ありますあります。「白いたまご」は思い出せない(笑)。
──作ったときの気持ちみたいなものは覚えてます?
……え、いや思い出せない。
──ライブでは演奏してないですよね。
やれるもんならやりたいです。ただ単にできないだけで。
──できないっていうのはどうして?
ん、できないっていうのはやっぱバンドの力量とか表現力が足りないっていう。それはもう昔からあるので。
──このアルバムのバージョンはバンドで録音してるんですよね?
バンドで録音してます、はい。けど音は僕がやっぱり宅録と同じように詰め込んでますね。昔からうちのバンドは曲を再現するのが難しいってことでいつもどうしようかみたいな感じで、いろいろ考えてやってたんですけど。
──じゃあベーシックの部分をバンドで録って、の子さんがそこに自分の音を付け加えてこの形になってるっていうこと?
そうです。全部が全部そうじゃないですけど(笑)。いや、これもわかんないです。意識したことないんで、ぶっちゃけ言うと、こんなもん。
──これは質問としては答えづらいかもしれないですけど、「白いたまご」ってなんなんでしょうか?
えっ?
──何の象徴であるとか、何のことを歌っているっていうことを、言葉で説明できたりしますか?
えっ、あー、いや、ちょっと待ってください……。
──歌詞の意味について訊くのは野暮といえば野暮なんですけど。
野暮ですよそれ! いいからそんなもん曲を聴けよ!っていう感じなんで(笑)。
──まあ、それはそのとおりだとは思うんですけど。
いや、こんなふうにインタビュー受けといてこう言うのもなんなんですけど。けどこの曲は難しい。曲によっては話せるやつもあるんですけど、この曲に関しては、ある意味何も触れられないまま自分の中でもう終わったんで。でもまあ自分でこうやって歌詞見てればだいたいわかってきますけどね。あははは! 歌詞見てると何を言いたいのかっていうのはだんだんわかってきますけど。ただそれを自分で説明すんのがなんか恥ずかしいっていう(笑)。
「天使じゃ地上じゃちっそく死」
──じゃあ説明しやすい曲があったらそのときはお願いします。で、2曲目「天使じゃ地上じゃちっそく死」なんですけど、このタイトルは日本語として非常に面白いですよね。
はい、僕も気に入ってます。
──このタイトルはどういう意味なんですか?
まんまです。もうそのまんま。「天使じゃ地上じゃちっそく死」っていう。
──「天使じゃ」っていうのは「天使だったら」っていう意味ですよね?
はい。
──つまり自分は天使じゃないということ?
いや、まあ、いや、そうでもないですよ。そういった深い意味があるわけじゃなくて言葉遊び的な部分もあったりするんで、たぶん。ふふふ(笑)。ぶっちゃけ、こんなん訊かれてもそんときの自分じゃないとわかんない。今の自分が答えるのは薄情だなって感じしますね。
──薄情?
今結構リラックスしてる気分なんで(笑)、リラックスしてる自分がそうじゃないときの自分について言うのは、うん、なんか薄情ですね。って思いますね、やっぱり。
──曲調はダークな感じですが、これはこういう精神状態の中で作ったんですか?
はい、そのまんまです。
──「死にたい」「嫌だ」っていうときに。
はい。もう、うん、そのままっすね。
──タイトルだけじゃなく、曲自体も気に入ってる?
すごい気に入ってますね。俺このアルバムの中で結構、一番気に入ってるんじゃないかな。いや、うん。このレコーディングのバージョンも悪くないですし。
CD収録曲
- ねこラジ
- あるてぃめっとレイザー!
- ベイビーレイニーデイリー
- 自分らしく
- 怒鳴るゆめ
- 最悪な少女の将来
- スピード
- 男はロマンだぜ!たけだ君っ
- 神様それではひどいなり
- 僕のブルース
- ぽろりろりんなぼくもぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃーん
- いくつになったら
- 口ずさめる様に
神聖かまってちゃん(しんせいかまってちゃん)
の子(Vo,G)、mono(Key)、ちばぎん(B)、みさこ(Dr)の千葉県在住メンバーからなるロックバンド。の子による2ちゃんねるバンド板での宣伝書き込み活動を経て、自宅でのトークや路上ゲリラライブなどの生中継、自作ビデオクリップの公開といったインターネットでの動画配信で注目を集める。2009年には1600組の応募バンドの中から選ばれ、一般公募枠で「SUMMER SONIC 09」に出演。2010年3月に初のCD作品となるミニアルバム「友だちを殺してまで。」を発表した後、ワーナーミュージック・ジャパンと契約し、2010年12月にメジャーレーベルのワーナーから「つまんね」、インディーズレーベルのPERFECT MUSICから「みんな死ね」という2枚のアルバムを同時リリース。子供の頃の暗い記憶やニートの抱える不安な感情などを美しいメロディに乗せた楽曲、予測のできない破滅的なライブパフォーマンスでファンを増やし続けている。