フルアルバムの魅力とは
──今作はKALMAにとって初めてのフルアルバムですよね。畑山さん、フルアルバムを作ってみていかがでしたか?
畑山 僕、フルアルバムだと伝えたいことが伝わらないと思っていたんですよ。言葉が長すぎると伝わらないのと同じように、7、8曲までじゃないとうまく伝えられないと思っていたから、フルアルバムを作るのを避けてきたところもあって。だけど、いろいろなバンドや先輩たちが出す音源を聴いてフルアルバムのよさに気付けたんですよね。それで自分たちも今回作ってみました。
石原 フルアルバムのどういうところがいいと思ったの?
畑山 いろいろな種類のジェットコースターに乗れる感じですかね。サウシーはフルアルバム出してないですよね。それはどういう思いで?
石原 俺の考えも悠月と近いんだけど、等身大で無理せず、自分たちで「いいものだな」と思えるものを作るには7曲ぐらいがちょうどいいんじゃないかと思っていたんだよね。特に事務所に入る前は、活動について一緒に考えてくれるスタッフがいなくて余裕がなかったからそういうふうに考えていたんだけど、今となっては「別にミニアルバムじゃなくてもいいかも」「リード曲にできる曲を十何曲も作れたらそれってすごく強いし」とも思っていて。だからサウシーは「もうそろそろ1stフルアルバムを出してもいいんじゃないか」という気持ちが年々強くなっているかもしれない。それに、デビューから何年も経ったあとに“1st”と付く作品が出せるのも貴重な気がして。
畑山 確かに。「何枚もCD出してるのに“1st”なんてズルい」と思っちゃうかも(笑)。
石原 だからいつかやろうと思っているよ。
畑山 やっぱりそうなんですね。ファン目線で言うと、サウシーはそろそろ1stフルアルバムを出すんじゃないかと思ってたんですよ。
石原 あ、そうなんだ? そしたらもうちょっとあとにしようかな(笑)。
畑山 えー!?
スリーピースだからこそ感じるコードの大切さ
──先ほど石原さんがKALMAとSaucy Dogの共通点は「できるだけ3人の音で表現する」こととおっしゃっていましたが、「ミレニアムヒーロー」からもKALMAのそういったこだわりが感じられました。また、鳴っている音がシンプルでも多彩に聞こえる1つの理由として、コード進行の幅広さが挙げられるように思ったのですが、いかがでしょうか?
石原 確かにそうですね。悠月はコードをたくさん知っているし、そもそもコードが好きだよね。
畑山 好きですね。僕は普段“新しい音楽をディグる”とか“売れている曲を聴いて勉強する”ということをほぼしないんですけど、ミスチルのコード譜だけは3冊ぐらい持っているんですよ。それを見ながら「どういうコードを使っているんだろう」という感じでミスチルの曲をコピーすることも多いし、そこで知ったコードを自分たちの曲にもけっこう取り入れているので、コード進行に関しては、桜井(和寿)さんからの影響が大きいと思います。あと、この前慎也さんの家に行ったときに「このコードはどうやって弾いてるんですか?」と解説してもらったりして。
石原 「こっちは開放なんだよね」って言いながらね。やっぱりスリーピースだからこそ、世界観を広く見せるためにもコードをいっぱい頭に入れておきたいよね。
畑山 わかります。「C、D、Gだけの曲は絶対に作りたくない」「ちょっと変なコードを入れたい」みたいな気持ちがあって。慎也さんもよくやると思うんですけど、Gを鳴らすにしても普通に押さえるんじゃなくて、2弦3フレットも押さえたりして。
石原 うんうん。あとはナインスっぽい音を入れたりね。
──コード進行に関しては「親友」が印象的でした。この曲は転調を重ねながら展開していきますよね。
畑山 そうですね。イントロがCから始まって、AメロでG♭に行って、サビでCに戻って。「これからも いつまでも」のところでDになって、ラスサビでEになって、アウトロにG♭に戻るという。
石原 どうして最初いきなり転調しようと思ったの?
畑山 親友とはケンカをすることもあるじゃないですか。情緒に波がある感じを表現したくて転調を入れました。
石原 なるほどね。スリーピースってバンドの人数としては最小限で。最小限の人数の中でどれだけ自分たちの世界を見せられるかっていうのがすごく楽しくない?
畑山 はい、楽しいですよね。それで言うと、僕は転調したりコード進行を工夫したりすることで1曲の中での変化、世界の広がりみたいなものを表現しているタイプで。
石原 うん、転調を自在にこなせるのは悠月の武器だと思う。
畑山 だけど慎也さんはギターのスキルも持っているので、それがすごくうらやましいんです。
石原 いやいや、持ってないから!
畑山 だって俺、昔のサウシーの曲はコピーできたけど、最近の曲はアルペジオばかりだからコピーできないですよ。ムズくて。
石原 確かに最近の曲は俺も練習しないと弾けないけど(笑)。
畑山 でもそう言ったってライブでも弾けてるし、ギターソロもうまいじゃないですか。それはスリーピースバンドのギターボーカルとしては超正解だなと思います。本当は僕もアルペジオが弾きたいしギターソロも弾きたいんですよ。だけど今はまだギターを弾くのが苦手だし、ライブ中「次、ギターソロが来る!」という不安を抱えるのも嫌なので、できるだけストロークしていたい気持ちもあって……。
石原 めっちゃわかるわー(笑)。
──スポットライトを浴びられるチャンスというか、おいしい場面な気がしますが。
石原 気恥ずかしさというか、「俺たちの見せ場はここじゃないんだけど」みたいな気持ちもどこかにあるんですよ。
畑山 「自分は歌があるので大丈夫ですから……」みたいな。
石原 そんなことを言いながらも、ギターソロを入れているのは曲を書く自分たちなんですけどね(笑)。
もうただの“好き”ではいられない
──そろそろお時間ですが、畑山さん、最後に石原さんへ伝えたいことはありますか?
畑山 (少し考えてから、改めて石原のほうを向き)すごく好きです。
石原 (笑)。
畑山 大好きな人とこうして対談できるのは本当にすごいことで……だけど、いつまでもこんな気持ちでいちゃダメだなと思うことがあります。
石原 えー。いつまでもその気持ちでいてよー。
畑山 (笑)。サウシーもそうだし、Hump BackやKOTORIもそうなんですけど、バンドを始めたての頃からずっと聴いていた人たちと対バンをしたら……もうただの“好き”ではいられなくなってしまって。僕、慎也さんに対しても“好き”より“悔しい”と思うことのほうが多くなってきちゃいました。サウシーのことは一生好きだけど、「レイジーサンデー」を聴いたとき、「めっちゃ好きだけど、もう名曲を出さないでくれ」と思っちゃったくらいで。
石原 それはめっちゃわかるわ。俺、曲ができたらだいたい悠月に送ってるけどさ。
畑山 はい。家に行ったときもデモを聴かせてくれましたもんね。
石原 どうして悠月に聴いてもらっているのかというと、俺の書いた曲に対して悠月がどう言うのかが気になるからなんだよ。それは、曲を書く人間同士同じ目線で話せているということで。だから俺も悠月のことを“自分たちのことを好きでいてくれる人”や“後輩”というふうには思っていないんだと思う。
畑山 うれしいです。
石原 まあ、ちょっと生意気なところはあるけどな(笑)。
畑山 あはは。これからもよろしくお願いします!
──数年後にまたツーマンをしたら、過去3回のツーマンとは違う感じになりそうですね。
畑山 そうですね。今年の4月にもツーマンをしましたけど、正直「もっといいライブできたな」と思っちゃったので。次また機会があれば、そのときはサウシーよりもいいライブをします!
石原 うん。俺らもがんばるよ!
KALMAツアー情報
- KALMA ワンマンツアー 2021 秋~冬 「ミノ焼いて!レバー焼いて!ニンニクも焼いちゃって!アミ替えたら!無になって!火を見つめて!今しかない!ロックバンド!生まれてきてくれてありがとう!」
-
- 2021年10月22日(金)大阪府 なんばHatch
- 2021年10月24日(日)愛知県 DIAMOND HALL
- 2021年10月27日(水)福岡県 DRUM LOGOS
- 2021年11月1日(月)東京都 LIQUIDROOM
- 2021年11月2日(火)東京都 LIQUIDROOM
- 2021年12月26日(日)北海道 道新ホール
- KALMA(カルマ)
- 2000年生まれ、北海道在住の畑山悠月(Vo, G)、斉藤陸斗(B)、金田竜也(Dr)からなるロックバンド。2016年4月に結成し、2018年5月に北海道・タワーレコード札幌ピヴォ店のみで販売した自主制作CD「少年から」が注目される。高校在学中の2018年7月にはライブイベント「JOIN ALIVE」に出演、11月には初の全国流通盤「イノセント・デイズ」を発表した。2019年12月にバンド名を「-KARMA-」から「KALMA」に改名。2020年3月にミニアルバム「TEEN TEEN TEEN」でメジャーデビューを果たす。2021年10月に初のフルアルバム「ミレニアム・ヒーロー」をリリースした。
- Saucy Dog(サウシードッグ)
- 石原慎也(Vo, G)、秋澤和貴(B)、せとゆいか(Dr, Cho)からなるスリーピースバンド。2013年11月に結成され、2016年8月より現在の体制で活動をスタートさせる。「MASH FIGHT!vol.5」でグランプリを受賞。2017年5月に初の全国流通作品となる1stミニアルバム「カントリーロード」をリリース。平成最後の春となる2019年4月に大阪・大阪城音楽堂、東京・日比谷野外大音楽堂でワンマンライブ「YAON de WAOOON」を行った。2021年2月には初の東京・日本武道館単独公演「Saucy Dog one man live『send for you』」を開催し成功に収めた。8月25日にこの公演の模様を収録したライブBlu-ray / DVD「『send for you』2021.2.5日本武道館」と5thミニアルバム「レイジーサンデー」を同時リリース。9月から初のホールツアー「Saucy Dog ワンマンライブ 全国ドックラン!!“今度こそ、はじめてのホールツアー!”」を開催中。