海蔵亮太×aoiro|それぞれが歌う理由

誰かのために歌いながら自分も楽しむ

──今作の資料に掲載されているセルフライナーノーツには、「Believe in you」のレコーディングで「自分の頭の中で架空の人物を作ってそれぞれのパートを歌っている感覚で録ったのがすごく楽しかった」と書いていますね。

海蔵 そうなんです。歌を聴かせられる人、アイドルっぽくちょっと鼻声で歌う人、リズム感が抜群な人……みたいに1人ひとりイメージして、登場人物を出したり引いたりしながら妄想で歌いました。

織田 聴きたい!

──表題曲では海蔵さんが作詞に参加されていますね。

海蔵 最初に「僕が歌う理由(わけ)」というアルバムタイトルが決まったんです。このタイトルで僕が作詞に参加しないわけにはいかないので、自分が歌い続けることになった理由を考えていくうちにたどり着いた原点が、幼少期の家庭環境でした。決していつも明るい家庭だったわけではないんですけど、そういうときに両親が知ってる曲を僕が歌ったりするとすごく喜んでくれて、それこそ場が和んで家庭が明るくなったんです。なので自分が歌いたい曲というよりは、「お願いだからケンカしないで」みたいな感じで、両親が聴いて喜びそうな曲を覚えて歌ってました。

──雰囲気作りの才能は幼少期から培ってきたものなんですね。

海蔵 中学校ぐらいのときに初めて友達とカラオケに行ったんですけど、僕が「まだ最初だし、同級生だからこの曲かな」とか考えながら選んでたら、友達はお構いなしに1曲目からどバラードとか入れるんですよ(笑)。すごく不思議でしたけど、考えてみたらそれが普通だし、大事なのは一緒に楽しむことですよね。誰かのために歌いながら自分も楽しむ、その両方が絶対に必要なんだなってそこで学んだんです。今は大人になってフィールドはうんと広がりましたけど、相手が家族でも友達でもファンの方たちでも、向けるべきベクトルは全部一緒だなと感じたので、作詞家の鮎川めぐみさんにお話しして詞を書いていただいて、さらに「ここのフレーズはそういうのじゃなくてこっちがいいです」みたいなやりとりを何度かしたうえで完成しました。

──このお話にはaoiroの皆さんも感じるものがあるのではないですか? よかったらそれぞれの“歌う理由”を教えてください。

松浦 僕が歌う理由は「好きだから」ですけど、歌を仕事にしていきたいと思ったのは、もともと自己肯定感が低くて、歌ってるとき以外の自分を肯定してあげられなかったからなんですよ。歌うこと自体が僕の幸せになるのかなっていう思いがあります。

オノ 僕は母親がSMAPの大ファンで、小さい頃からコンサートに連れて行かれてたんですよ。そこで何かしらの刺激を受けたのか、カラオケに行くと母親にSMAPの曲をずっとリクエストしてた記憶があります。僕自身が決して目立つタイプではなかったからこそ、SMAPの姿に憧れたのかもな、と最近は思います。歌手を意識し始めたのは、高校生ぐらいのときに友達と学校帰りにカラオケに行ったりするようになって、「歌うまいね」って言われてからかもしれません。

織田 僕も好きで歌っていたんですけど、高校卒業してすぐ石川県から上京して、aoiroを結成して、ファンの方たちのお話を聞いたりお手紙をいただく機会ができたんです。不登校だった子に「aoiroのおかげで行けるようになりました」と言われたり、介護の仕事をしてる人に「わたしの夢は看護師だったんです。目指す勇気が出なかったけど、働きながら看護専門学校に通うことにしました。もう一度夢を追いたいって思えたのはaoiroのおかげです」と聞いたりして、人の人生を変えてしまったからにはやめられない、これが自分の使命なのかなと思いました。

ムチャぶりに応える松浦、全然応えない海蔵

──“aoiroが歌う理由”について、海蔵さんはどう思いましたか?

海蔵 3人とはわりとポップな会話しかしてこなかったので(笑)、そういうきっかけ、そういう気持ちで歌い続けてあの素晴らしいコーラスを生み出してるんだなという核の部分を知れて、よりいっそう好きになりました!

織田 僕も海蔵さんがいっそう好きになりました!

海蔵 そうですか?(笑)

松浦 僕もです!

海蔵 怪しい!

──人を喜ばせることと自分が楽しむことの2つを同時に実現させるのが海蔵さんの“歌う理由”ということでしたが、矛盾に悩むことはありませんか?

海蔵亮太

海蔵 「自分はこれを歌いたいけど、聴いている人はそんなに楽しくないよな」みたいな局面で、どっちを選択するべきか悩むことはもちろんありました。でも今は「自分が楽しんで歌うことで、聴いてる人も楽しんでもらえる」という、すごくシンプルな答えに落ち着いています。「この曲を歌いたい」「この曲を伝えたいんだ」って自由な気持ちで歌ったほうがより伝わるものがあるんだと思うようになってからは、その2つがケンカすることは少なくなりましたね。

──確かに、楽しそうにしている人を見ると楽しくなったりしますもんね。

海蔵 そうですね。楽しく……はい、生きていきたいと……(吹き出す)。

──海蔵さんはまじめな話をしたあと律儀に照れますね。

全員 (笑)。

海蔵 照れますねー。ホント無理なんです、僕。すいません……(笑)。

松浦 そのギャップって歌をやってる人みんな直面すると思うんですけど、僕はどっちかというと「求められてないと意味がない」と思うタイプなんで、好きなことばっかりだと……かといって自分の嫌いなこともやれないんですけど。

海蔵 悩んでる悩んでる(笑)。

織田 だってさ、仮にめちゃめちゃバラードを歌いたかったときにラップを求められたらさ、それは嫌じゃない?

松浦 でも俺はやっちゃうかもしれない。ラップをやってみんなが沸いて、ファンがどんどん増えて上り調子になったら、たぶんラップ大好きになると思う。

海蔵 優しいんだね。

織田 ムチャぶりにもめちゃめちゃ応えてくれるんですよ。

海蔵 僕、ぜんっぜん応えないよ。

オノ そこがよさなんだろうな、それぞれの。

aoiro

松浦 優しいんじゃないんですよ。本当に自信がないから、人に求められることに価値を見出してしまうんです。社会的価値だったら求められてる数が多いものが絶対に高いじゃないですか。だから求められてることをやらないと仕事をしてる意味ないって思っちゃうし、求められてるものなら、好きじゃなくてもやってるうちに好きになれるし。

──どっちが間違っているという話ではなさそうですね。

海蔵 結局、楽しけりゃいいってことですよ(笑)。音楽は自由なので。

織田 海蔵さんってこういう感じで、物事の捉え方にもこだわりがなくてポップじゃないですか。でも資料を見せてもらうと1曲ごとにライナーノーツがあったりして、実はすごく誠実な方なんだなってわかるんですよね。

オノ 絶対に真面目ですよ。

海蔵 ぜーんぜんです!

松浦 「THEカラオケ★バトル」でAI採点になる前に使われていた「精密採点DX-G」って、なかなか高得点が出ませんけど、ちゃんと研究と対策をしきった人にはご褒美みたいに点数が出るようになっているんです。海蔵さんはそれを攻略してるわけだから、物事の1つひとつに真剣に向き合ってますね。

海蔵 いえいえいえ。みんな真面目ですよ。毎日ツイキャスやってるんですよ、この人たち。

松浦 毎日ツイキャスは別に真面目じゃないですよ(笑)。

──照れ臭くてついふざけてしまうけれど、決めるときはしっかり決める派ですね。

海蔵 そうですね。真面目な話をしますと、こうして普段しゃべるときはポップというかカジュアルな感じですけど、歌うときだけは楽曲と真剣に向き合いたいなっていうのがすごくあるかなーなんて思います(徐々にニヤニヤしながら)。

オノ 真面目に最後までしゃべれないんですね(笑)。

海蔵 あーっ、ごめんなさい!

松浦 惜しかったね。

織田 うん、もうちょっとだった。

海蔵 年下に弄ばれた!