ロックアイドルグループ・カイジューバイミーが1stアルバム「純白BY ME」発売、バラバラな4人がぶつける剥き出しのマインド (2/2)

線路で撮影することばっか考えてた

──昨年末のプレデビューライブから約1年が経ち、初のアルバム「純白BY ME」が完成しました。本作にはそのときからライブで披露されている楽曲「スタンドバイミー」も収録されていますが、今のグループ名やメンバー名に関する話を聞く限り、かなりストレートな曲名ですよね。

 曲を作ってるときに、映画のように線路でミュージックビデオを撮りたいなと思って。それからは路線での撮影を実現させることばっか考えてました。ただただ線路で撮影したかったんです。しかも、理想のロケーションが海外にしかないから、最初は海外に行くつもりでした。あと、この4人が歌わないと成立しない楽曲にするのが絶対的な大前提で。去年のプレデビューまでに5曲書いたんですけど、その5曲は「今この子たちが歌っても、もしかしたら説得力が出ないかもしれない」と思いつつ、「この先やっていくうえで、この楽曲を自分の言葉で歌えるようになればいいな」という願いも込めて作りました。「スタンドバイミー」もカイジューバイミーが成長した先をイメージして書きました。

華希 正直「スタンドバイミー」は最初、歌詞の意味がわからなかったんですけど、この半年くらいで歌うときの気持ちが変わってきました。「これがプレデビューのときに祐さんが言っていたことなのかな」と感じた瞬間があったんです。曲と一緒に育っているというか。各メンバーのパートもその子が歌うから聴いていて情景が浮かぶし、カッコよさや切なさが出るんです。

菜月 ホントにその通りです。歌っていくうちに、アイドルとして成長していく自分を見透かされてるかのように、曲が自分の感情と共鳴していくのがわかってうれしかったです。

──ほかにもアルバムからは「純白少女」「無人島カルテット」のMVが公開されました。

 「純白少女」はメンバーみんなの個性がより強く出る曲にしたいなと思って書きました。4人の個性がバチバチに弾けて、それぞれ世界観がまったく違うフレーズを歌っているのに、1つの楽曲として成立してるっていう。結成当初からこういう2ビートの曲を作りたかったんですよ。感情をぶち撒けるような荒々しい曲。でもプレデビューの頃にこの曲を書いても、みんなただカラオケのように歌うだけだったと思うので、メンバーが「今の曲じゃ物足りない! もっと感情を吐き出せる曲が欲しい」と思うまで待っていたんです。

ミーア この曲を歌っていると“純白少女”に乗っ取られるんです。憑依されたままパフォーマンスしていて、お客さんに対して「今、私が歌ってるぞ。見とけ!」という気持ちになります。

アンコール前に急に抱き合った4人

──「無人島カルテット」はどういったコンセプトで作った曲なんですか?

 プレデビューライブが終わったときに、無人島をテーマにした曲を書こうと思ったんです。さっきも話が出た通り、メンバーはまったく違うところから集まった4人で、私服で街を歩いているのを見てもいまだに違和感を感じます。

華希 あははは。

 ホントにこのグループじゃなかったら集まらなかった、違うタイプの4人。でも、ステージ上での我の強さだけが唯一の共通点で。4人とも最初はアイドル活動に対してプロ意識も持てなかったと思うんですけど、その我の強さだけはずっとあって、「どうにかしてこの場を生き抜いてやるぞ」というエネルギーをすごく感じていたんですよ。で、プレデビューのアンコール前に急にメンバー同士で抱き合い始めて。

菜月 あー、思い出した。

華希 それでタイトルに“カルテット”って付けたってこと? 鳥肌立ってきた……!

 20秒くらい抱き合っていたんです。ライブが始まる前に円陣を組むのは演出としてはよくあることかもしれませんが、そのときは打ち合わせして決めていたわけでなかったのでびっくりしました。僕にはそのステージの光景が無人島に見えたんですよね。バラバラなところから無人島に流れ着いて、全然違う人種だけど、どうにかして力を合わせて生きて帰ろうとしている4人。そのときに無人島をテーマにした曲を書こうと思いつきました。振り付けにも抱き合う動きを入れてもらって、MVも無人島を貸し切って撮ろうと考えて(笑)。

──メンバーはアンコール前に抱き合ったときのことをはっきりと覚えていますか?

華希 覚えてます!

菜月 今の話で記憶が鮮明にフラッシュバックしました。

ミーア なんで抱き合ったんだろうね。

エレナ その瞬間に自然と気持ちが動いたんだと思う。私、アンコールって「ライブが盛り上がったから、最後にもう1曲やって楽しく終わりましょう」という温度感のものだったと思ってたんですけど、実際はそうじゃなかったんですよ。ライブが始まるときより、アンコール前のほうが怖くなっちゃって。ホントに初めて味わう気持ち。でもメンバーの顔を見たときに、「みんなと一緒ならステージに出られる」と感じて、その衝動が生まれたんだと思います。

菜月 ホントにその瞬間だけはっきりと覚えてます。4人の気持ちが真ん中にあって、合体したような感覚になりました。

スタンド・バイ・菜月

スタンド・バイ・菜月

 そのときのメンバーはカッコよかったですね。「めちゃくちゃロックなグループを生み出してしまった」と思いました。

武道館に行くより、音楽の素晴らしさを知ってほしい

──MVが作られた3曲はライブで披露済みの楽曲ですが、アルバムには新曲も収められます。この取材の時点ではまだレコーディングが終わってないとのことで、「ブラックホール」という曲のデモ音源だけ聞かせてもらったんですが、これはどういうテーマで書いたんでしょうか?

 この曲を聴いてこういう気持ちになってほしいみたいな思いは特にないんですけど、結成当初と比べて、メンバーがつらいことがあってもそのこととしっかりと向き合えるようになったんです。僕もバンドをやっていた頃、うまくいかないことのほうが多かったし、このまま消えてなくなりたいと思うほどつらいことだってありました。そんな夜にも寄り添えるような曲が欲しくて書いたのが「ブラックホール」です。

──カイジューバイミーはまだ走り始めて1年ですが、グループとして目指すところはどこにあるんでしょうか?

 例えば武道館とかを目標にしているアーティストはいっぱいいますが、メンバーが自分の言葉で「ここを目指したい」と言うまで、僕としては目標を提示したくないんです。極論を言うと、最初アイドルやロックをやりたくないと言っていた4人に、音楽をやっていてよかったなと思ってもらえたらそれでいいと考えていて。インタビューの冒頭に話した母は、病気で話せなくなって僕が誰なのか判別できなくなってしまっても、ずっと僕の曲を歌っていたんですよ。音楽の力ってホントにすごいと思ったし、これまで何度も救われてきた。自分を愛せるようになったのも音楽があったからなんです。そんな音楽の素晴らしさをメンバーにも知ってほしいという気持ちが強いですね。それぞれが音楽の愛し方を見つけて発信することで、また音楽に救われる人が出てきてほしいなって。音楽を続けるためにちゃんと道は作ってあげないといけないですが、それ以上にみんながカイジューバイミーという居場所を、音楽を好きになれる環境を作りたいという思いが一番にあります。それが実現できたらみんな自然とがんばれるし、目標もできてくると思うんです。

──メンバー同士も、具体的な目標を話し合ったことはないんですか?

華希 そうですね。「ここを最終目標にしよう」という話をしたことはこれまでないです。上を目指すには目標を持ったほうがいいのかもしれないですけど、体がボロボロになろうともとにかく目の前のことにすべてを懸けるのが一番きれいだなと思っていて。自分で自分のことが恥ずかしくならないよう、すべての魂を込めるくらいの気持ちで目の前のことに立ち向かってます。

スタンド・バイ・華希

スタンド・バイ・華希

──ここまでの1年間でのパフォーマンスの成長についてはどう感じていますか? 菜月さんは一聴して惹きつけられるハスキーな歌声の持ち主で、先日Twitterで「アイドルになる前の歌声を聴いてみたのですが全然違いました 普段分かりづらい変化ですけど、半年の間に急成長しておりました。凄いな~嬉しいですね~」と語っていました。

菜月 私は昔、歌うのが嫌いだったんです。友だちに歌声を褒められたのがきっかけでその子とよくカラオケに行くようになって。それでアイドルを始める前もそこそこ歌が上手なほうだと思っていたんですけど、試しに当時の音源を聴き返してみたら全然聴いてられなくて、自分が成長したことを感じました。

 最初に比べたらみんなホントにうまくなったなと思いますね。ただ、マインド的なことはいろいろと伝えているけど、技術的なことはメンバーに教えすぎないようにしてるんですよ。ずっと下手でいてほしいというか、手を加えすぎると作り物になっちゃう気がして。ボイトレに関しても、どうやったら上達するかホントにわからなくなったり、本人たちが先生に教えてほしいと心の底から思うようになったりしたときに初めて必要だと考えています。なんとなくボイトレしても意味がないし、ピッチばかり気にしてつまらない歌を歌われたらカイジューバイミーじゃなくていいじゃんって思っちゃうので。

華希 カイジューバイミーは気持ちがすべてと言っても過言じゃないかもしれないです。

エレナ カイジューバイミーで活動していて、気持ちがパフォーマンスに直結するということがよくわかりました。ステージに立ってほかのメンバーを見ていても、それはすごく感じます。

 パフォーマンスのためにライブをしてほしくないんですよ。パフォーマンスとは何かを伝えるためのメガホンみたいなもの、という捉え方でいいのかなと思っています。そこにその人にしか出せない生き様が乗っかってくるようなアーティストに成長していってくれたらうれしいですね。

カイジューバイミー

カイジューバイミー

ライブ情報

カイジューバイミー「純白少女センセーション」

2021年11月27日(土)東京都 SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

プロフィール

カイジューバイミー

スタンド・バイ・エレナ、スタンド・バイ・菜月、スタンド・バイ・華希、スタンド・バイ・ミーアの4人からなるロックアイドルグループ。「見上げた空は青くなかった」というキャッチコピーを掲げて活動している。2020年12月に東京・TSUTAYA O-Crestにてプレデビューのお披露目ライブ、2021年7月に東京・ヒューリックホール東京で正式なデビューライブを行い、熱量の高いライブパフォーマンスで徐々に話題を集めている。2021年11月に1stフルアルバム「純白BY ME」をリリースした。