ナタリー PowerPush - カフカ×高山都×森川裕之(organic stereo)
座談会で紐解く「進化」と「再生」
「この人、ヤバイ人だ」って(笑)
──森川さんは、どんなアプローチから今回のサウンドを仕上げていったんでしょうか。
森川 単純にキレイな音とか迫力がある音とか、シンプルなことだったら僕じゃなくていいと思ったんです。自分がやっているorganic stereoの「Let Go」の音の感じが好きだとも言ってくれていたので、力強いけれど透き通る部分を意識しました。そういうところがカフカのサウンドに入っていたら面白いと思って。だから最初は振りきれるくらいのポイントを提示してみて、そこから調整していくような作業でした。
フジイダイシ(Dr) 最初は渡したものとまったく違うものが返ってきたんですよ。
カネコ 「この人、ヤバイ人だ」って思いました(笑)。穏やかそうに見えて、かなり攻撃的だった。俺らを驚かそうとしてくれたと思うんですよね。好きにやってくださいってお願いしたら、予想を大幅に裏切って戻ってきたんですよ。
森川 最初にミーティングしたときに「Rebirth」という言葉がすでにあったし、大きく変わりたいという強い意志を伺っていたので。まずは極端に提示して、そこからどういう反応が来るかを探るようなやり取りでしたね。
──高山さんとしては、エレクトロを導入した今作のサウンドの肌触りはどう感じました?
高山 身体はひんやりするけど血が通っているというか、そういう感覚がありますね。例えば家から外に出て、冷たい空気に触れて「朝だなあ」って思うときの感覚に似てる。私、お風呂に入りながらとか洗濯物を干しながらとか、生活の中で音楽を聴くことが多いんですけど、そこに合うんですよね。
カネコ エレクトロな要素を足したことで、冷たいものになるのはイヤだったんです。音は透き通っているんだけどアナログな質感、体温がちゃんとあって、生活の美しさを感じる音楽にしたくて。そういうイメージを、森川さんだったら表現してくれるだろうと思ってお願いしたというのはありますね。
結局カフカはカフカなんだ
──先ほどから、カフカの音楽の魅力として「透明感」というキーワードが出てきていますが、これってどうやったら出せるものなんでしょうね。
高山 でもこれは今回のアルバムだけじゃなくて、もともとバンドの音にあったよね。
カネコ 音というか、人なんだと思います。
森川 確かに。狙おうとすると透明じゃなくなるってのはありますね。
高山 その世界観がずっとブレないまま、今回新しい扉が開いたっていうのを感じて。
──高山さんから見たカフカの変わらなさってどういうところにあるんでしょう?
高山 まずコウタくんの歌声が少年的でイノセントというところが大きいですね。あと、歌詞に物事を俯瞰で見ているところがある。で、透明度は高いのに、ギターとかリズムは重厚なんですよ。そこに絶妙なバランス感がある。
カネコ 今回、途中で「結局カフカはカフカなんだ」って気付いたんです。そこでまたすごく自信がついた。最初は不安が半分以上のまま、見切り発車で、勢いだけで「やるぞ」って作り始めて。でもいざこの4人でやってみたら、“カフカらしさ” っていうのはどうやっても生まれてくる。それがわかったのは大きかったです。
高山 でも、今回のアルバムで輪郭がハッキリした気がするよ。カフカが持ってる個性の輪郭がくっきり見えるようになった。
カネコ 歌詞にしても、今まで「あまり何を言ってるのかわからない」と言われることがすごく多くて。そこは口惜しかったんですよね。ファンタジーっぽい話ではあったけど、それはやっぱり自分に実際に起きたことを置き換えて書いたことだったので。今回はもう一歩踏み込んで、自分が生活の中で感じたことをダイレクトに歌いました。そこも「再生」への挑戦でした。
高山 主人公がいるのがちゃんと見えましたね。1曲目「2036 -introduction-」のポエトリーリーディングも、すごく衝撃的で。「なんで今までやらなかったんだろう! もっと早くからやればよかったのに!」って思っちゃったくらい(笑)。
カネコ もともとヒップホップも好きで、こういうことをやってみたい気持ちはあったんです。今まではやれなかったけど、今回は「再生」だからやってみようと思って。1人でiPhoneを持ってスタジオに入って録音したテイクをそのまま使いました。
高山 そうなんだ! これ、すごく生身な感じがする。思ったまんまをそのままつぶやいてる感じがすごく生々しい。
フジイ ちゃんと録音し直したんだけど、最初のテイクのほうがよかったんだよね。
収録曲
- 2036 -introduction-
- Inside of Snowdome
- addicted to xxx
- Identity
- 還る空
- 彼女は海で
- 水瓶とラクダ
- Night is fade to blue -interlude-
- 電気羊は夢を見ない
- ai
- dramatic irony
- annular torus
- Rebirth
ライブ情報
東名阪ワンマン「Rebirth」Release Tour「2036年宇宙の旅」
- 2014年4月19日(土)大阪府 LIVE SQUARE 2nd LINE
- 2014年4月20日(日)愛知県 ell. SIZE
- 2014年4月26日(土)東京都 UNIT
イープラスにて先行受付中(2月5日~14日)
※東京・渋谷スクランブル交差点イープラスビジョンにて、2月5日から14日までワンマン公演の先行スポット放映!
「Rebirth」Release Tour「2036年宇宙の旅」~出発編~
2014年2月15日(土)東京都 TSUTAYA O-Crest
<出演者>
カフカ / ヒトリエ / Halo at 四畳半
カフカ
2008年東京にて結成。現在はカネココウタ(Vo, G)、ヨシミナオヤ(B)、フジイダイシ(Dr)、ミウラウチュウ(G)の4人編成で活動中。2008年に1stアルバム「Memento.」、2010年に2ndアルバム「cinema」、2011年に3rdアルバム「fantasy」をリリースし、“どこにも存在しない世界の物語”をテーマにした3部作を完成させる。2013年にミウラが加入し「呼吸 -inhale-」「呼吸 -exhale-」という対になる2枚のミニアルバムを発表する。2014年2月に4thアルバム「Rebirth」をリリース。同作はこれまで提示してきたギターロックにエレクトロサウンドを大胆に導入した意欲作で、ミックスは森川裕之(organic stereo)、マスタリングは益子樹(ROVO、DUB SQUAD、ASLN)が手がけている。
高山都(たかやまみやこ)
大阪府出身のモデル、女優。スカウトをきっかけにモデル活動をスタートさせ、数々のテレビドラマやCM、映画にも出演する。2010年からはTOKYO FM「RADIO DRAGON」のレギュラーパーソナリティとしても活躍中。
organic stereo(おーがにっくすてれお)
森川裕之によるソロプロジェクト。小学校6年間でマリンバを習い、中学生からギターと作曲を始める。2008年に1stアルバム「The Stories Linger in My Mind」、2012年に2ndアルバム「Let Go」をリリース。そのほか「ブラタモリ」「世界の車窓から」といったテレビ番組のBGMを担当したり、映画やCMへ楽曲提供したりと幅広い活動を行っている。またスリーピースバンド・euphoriaのメンバーでもあり、The Album Leafなどの海外アーティストと競演している。