JUJUインタビュー|スナックJUJUのママが歌う“みんなにも出会ってほしい昭和歌謡の名曲”

JUJUのカバーアルバム「スナックJUJU ~夜のRequest~『帰ってきたママ』」がリリースされた。

47都道府県での「スナックJUJU 2023」ツアーを経て完成した本作は、2016年発表の「スナックJUJU ~夜のRequest~」の続編となるカバーアルバム。「あゝ無情」「異邦人」「魅せられて(エーゲ海のテーマ)」「なごり雪」といった昭和の名曲のカバー15曲が収録されており、プロデューサーとして亀田誠治、川口大輔、小林武史、島田昌典、武部聡志、蔦谷好位置、松浦晃久といった豪華な面々が参加している。音楽ナタリーはJUJUにインタビューを行い、このアルバムに込めた思いや、来年2月に開催を控える「スナックJUJU 東京ドーム店」について話を聞いた。

取材・文 / もりひでゆき

一番自由な「スナックJUJU」ツアー

──今年5月にスタートした全国ツアー(「ジュジュ苑スペシャル『スナックJUJU 2023』~47都道府県出店!! “あのママ”がJUJU20周年を勝手に前祝い全国ツアー~」)の神奈川県民ホール公演(参照:JUJUがスナックのママになりきり昭和の名曲続々披露、「スナックJUJU」ツアーが53公演をもって閉幕)を拝見しましたが、もう最高に面白かったです。

本当ですか? そう言っていただけてよかった。「面白かった」と言われるのが一番うれしいんですよ(笑)。

──この取材のタイミングでは残り2公演となっていますが、「スナックJUJU」として全国各地を巡ってみていかがでしたか?(取材は10月中旬に実施)

「スナックJUJU」は私ではなく“ママ”がやってるツアーだからちょっとややこしいんですけど(笑)、私が思うに、やっぱりスナックはみんなが心を解放できる場所なんだなってことを改めて感じました。バーだとちょっとカッコつけながら「ウイスキー、ロックで」みたいな感じだけど、スナックだとどこにも力が入らないというか。その場の空気をママに全部持っていかれて、ママの言うがままにされているうちになんかスッキリして帰る、みたいな感じがあるじゃないですか。今、51公演終わってみて感じるのは、どの会場であっても最終的にそんなスナックの空気感でちゃんと終わっているなということで。そういう意味では本当に幸せなツアーだなって思いますね。

「ジュジュ苑スペシャル『スナックJUJU 2023』~47都道府県出店!! “あのママ”がJUJU20周年を勝手に前祝い全国ツアー~」の様子。

「ジュジュ苑スペシャル『スナックJUJU 2023』~47都道府県出店!! “あのママ”がJUJU20周年を勝手に前祝い全国ツアー~」の様子。

──「スナックJUJU」の初開催は2016年ですが、そこから時間が経つ中で、ご自身にとってどんな意味を持つライブになっているんでしょうか?

一番自由なライブですね。っていうのも、結局は“ママ”という人がやっているので、本当に好き勝手なことを言えるんですよ(笑)。お客さんから何か声をかけられたときに、「バカね」だけで終わらせたりもできる。それって多分、JUJUではできないことで。そういう意味でやっぱり一番自由なライブだなと思いますね。今回のアルバムに参加してくださったアレンジャーの方々もライブを観に来てくださったんですけど、一番言われたのは「やりたい放題だね」という感想でしたから(笑)。やりたい放題にやって、みんなと笑って泣いて面白い時間を過ごせるのが「スナックJUJU」なんだと思います。

──「スナックJUJU」で歌われるのは、ほぼすべてが1970年代から80年代の日本の名曲です。JUJUさんのオリジナル曲で構成する普段のライブとは気持ち的にも大きく違う部分がありそうですよね。

そこは全然違いますね。やっぱり偉大な曲たちをカバーさせていただくほうが圧倒的に緊張します。とはいえ、「スナックJUJU」だからこその楽しさもあって。皆さんがご存知の曲を、皆さんからリクエストをいただいたうえでセットリストに並べているので、客席の方々も歌ってくださるんですよ。その光景を眺めながら一緒に歌えるのはものすごく楽しいことで。もちろんね、普段のライブでJUJUの曲を「私より詳しいんじゃない?」ってくらい歌ってらっしゃる方々を見るのもすごくうれしいんですけど、「スナックJUJU」ではまた違った楽しさがあるんですよね。

「なごり雪」をスナックで?

──そんなツアーを経て、今回届けられたのが最新カバーアルバム「スナックJUJU ~夜のRequest~ 『帰ってきたママ』」です。本作は2016年リリースの「スナックJUJU ~夜のRequest~」の第2弾という位置付けですね。

ずっと出したかったんです。本当のことを言えば、ここからあと20枚くらい出したい気持ちなんですけど(笑)。

──あははは。日本を代表する名曲はまだまだありますからね。

そうそう。曲は無尽蔵にあるわけですから。でも今回、第2弾が出せたことは純粋にすごくうれしいです。前作では実際にスナックのママをされている方々からリクエストを募ってカバーする曲を決めたんですけど、今回はファンの方々にリクエストしてもらうことができたんですよ。「“あのママ”が帰ってきます。何が聴きたいですか?」って。そこから選んだ15曲はどれも私自身、好きな曲ばかりです。

「ジュジュ苑スペシャル『スナックJUJU 2023』~47都道府県出店!! “あのママ”がJUJU20周年を勝手に前祝い全国ツアー~」の様子。

──リクエストの中にはJUJUさん的に意外な曲もありました?

本当にいろんな曲をリクエストしていただけたので、中には意外な曲もありましたね。先行シングルになり、アルバムにも入っている「なごり雪」はすごくリクエストが多くて、上位に入っていた曲だったんですよ。でも私としてはちょっと意外なところもあって。もちろん昭和の大名曲として君臨している曲ではありますけど、教科書にも載っているような曲じゃないですか。「それをスナックで⁉」という印象でしたね。

──なるほど。でもまったく違和感なくアルバムに収まっていますよね。

そうなんですよ! 私が「なごり雪」を最後に歌ったのは中学生のときのお別れパーティだったので、実に何十年かぶりに今回歌ったわけですけど、当時の自分に見えていたのとはまったく違う景色が見えてきたんです。それに驚きつつ、「なるほど。だからみんなスナックでも『なごり雪』が聴きたいんだな」って合点がいきました。

──時を経ても色褪せず、なおかつその時ごとに違った景色を見せてくれる。それこそ名曲の名曲たる所以なのかもしれないですよね。

うん、本当にそう思いました。

選曲基準は“みんなにも出会ってほしい”

──アルバム収録曲の中でご自身的に、特に思い入れの強かった楽曲はありますか?

どの曲も思い入れが強いし、自分自身にしっかりリンクするものばかりではあるんですけど、特に1曲ということで言えば「酔っぱらっちゃった」ですね。

──内海美幸さんが1982年にリリースした楽曲ですね。実はこの曲だけ存じ上げなかったんですよ。

あ、やっぱりそうですか。リクエストの投票数自体はそこまで多くはなかったんです。私の周りの大人たちはこの曲が大好きでカラオケでは絶対に歌っていたので、子供の頃に自然と覚えちゃったんですよ。で、大人になってからもことあるごとに口ずさんでいて。「ちょっと飲みすぎだよ」とか言われたら、「飲めるわよ 酒ぐらい」ってこの曲のフレーズで返したり(笑)、道を歩きながら「ここまで女に惚れられる 男はめったに居ないから」と歌ってみたり。そのたびに「何それ? そんな曲ないでしょ?」っていつも言われていたんですよね。だから今回、フルバージョンで正式にカバーさせていただけたのは本当にうれしかったです。

「ジュジュ苑スペシャル『スナックJUJU 2023』~47都道府県出店!! “あのママ”がJUJU20周年を勝手に前祝い全国ツアー~」の様子。

──JUJUさんのカバーをきっかけに、いろんな場所で歌われるようになったらいいですね。めちゃくちゃいい曲ですから。

あとはね、別れ話を切り出されたときに、この曲を知っているとやり過ごすのが楽になるような気がするんです。ひどい振られ方をしたら、「あなたひとこと言わせてよ」「罪つくり 罪つくり」で終わらせるっていう(笑)。まあ実際はそんな簡単にはいかないでしょうけど、世の中の男性も女性も、この曲を知ったことによって、いろんなことがちょっだけ楽になったらいいですね。あはははは。

──僕にとっての「酔っぱらっちゃった」のように、知らない名曲との出会いがあるのもカバー作品の醍醐味ですよね。若い世代はどの曲にも新鮮な衝撃があるでしょうし。

そうですね。カバーアルバムに関しては、“知る人ぞ知る”的な名曲を1、2曲盛り込むようにしていて。「酔っぱらっちゃった」はその枠の1つ。基本的には知名度にかかわらず、私が大好きで、みんなにも出会ってほしい曲という基準で選んでいます。