JUJU|16年分の愛、願い、トキメキ、祈りを詰め込んだオールタイムベスト

あなたの物語ここにあります

──今回リリースされた4枚組のベストアルバム「YOUR STORY」は、JUJUさんの歴史を振り返るのに最適な作品になっていますね。

シングル曲はもちろん、アルバムからも満遍なく曲を選んでいるので、これまでJUJUを知らなかった方にも知っていただくいいきっかけになるんじゃないかなと。

──CDにはそれぞれ「Theater RED」「Theater PURPLE」「Theater PINK」「Theater BLUE」と色にちなんだ名前が付けられていますね。今回のベストを編むにあたって、どんなコンセプトを思い描いていたのでしょう?

私が語り部として歌ってきた曲たちは、ある意味、短編映画のようなものだと思ったんです。だったら私が“Theater JUJU”というシネマコンプレックスとなり、そこに4つの劇場があるっていう形にしようと思ったんですよね。

──各劇場にはちゃんとテーマが設けられていて、そこにマッチした楽曲が収録されていますよね。

はい。普遍的な無償の大きな愛を描いた物語を集めたのが「Theater RED」。「Theater PURPLE」ではままならない思いの物語を13本ご用意してます。大きな愛にたどり着くのか、それともままならない恋になるのかはわからないけれども、誰かを好きになるキュンキュンした感情、うっとりする感情を描いた物語は「Theater PINK」に。そして「Theater BLUE」には日々の生活をがんばっているすべての人たちを応援する物語をまとめました。

──聴き手は、その時どきの自分の感情に合わせて、1つの劇場に入り浸るのもよし、はたまた4つの劇場を渡り歩いて楽しんでもいいわけですね。

そうそう。自分が主人公になれる物語をそれぞれの劇場で日々、探していただけたらなと思いますね。私も含め、誰もがこの52話の物語を自分の中に持っていると思うので。「過去、現在、未来のあなたの物語がきっとここには存在しているはず。主人公はあなたです」という意味を込めて、ベストのタイトルを「YOUR STORY」にしました。

大きな愛の“RED”

──「Theater RED」には、JUJUさんの活動において外すことのできない壮大なバラード曲が多数収録されています。特に思い入れの強い曲というと?

このディスクで一番のキーになっている曲は「やさしさで溢れるように」ですね。このタイトル自体が人間としてのすべての思いを象徴しているような気もしますし、JUJUというアーティストを形作ってくれた礎の1つだと思うので。この曲で初めて亀田誠治さんとお仕事させていただいたんですけど、そのときに「この曲は、みんながJUJUちゃんを知る大きなきっかけになるよ」って言ってくださったんですよ。「そうなったらいいんですけどねえ」って私は答えたんですけど、結果的にそれが本当のことになったんですよね。たくさんの方々に浸透したおかげで、今でもいろんな場面で歌わせていただけるのがすごくうれしいです。あと、JAY'EDくんと歌った「明日がくるなら」も印象深いかな。

──これもまたJUJUさんの代名詞とも言える曲ですよね。

これは映画「余命1ヶ月の花嫁」の主題歌だったんですけど、実は「明日がくるなら」の前にできあがっていた曲がすでにあったんですよ。でも、もっといいものができるはずだということで急きょ作り直すことになって。その時点で締め切りまで3日しかなかったんだけど、全然歌詞が書けなくて(笑)。みんなで作業してるんだけど煮詰まっちゃったから、気分を変えるために家まで歩いて帰ったら、「なんで帰るんだ!」ってプロデューサーが怒り出すし(笑)。結局、「今日できなかったら土下座して謝ろう」ってことになって迎えた3日目に、映画の中の千恵さんと太郎の思いがそうさせてくれたのだと思うのですが、なぜだかスルスルーっと歌詞が書けて、レコーディングにも間に合ったっていう。結果として、たくさんの方に届いた曲になりましたけど、制作は本当にしんどかった。

──「Theater RED」のラストには「あざみ」という新曲も収録されていますね。

これは人生そのものを歌っているとも言える、大きな愛の曲。「Theater RED」の世界観をもっとも大きな意味でまとめてくれる曲だと思います。生きていると恋をするウキウキを味わったり、ときにはままならない思いをすることもあるんだけど、世の中には絶対出会うべき相手が存在しているということを信じたいんです、私は。そういった人と出会えればそれは無上の喜びだし、その人に注ぐのは無償の愛だと思うんです。とはいえ、それまでに出会った人への愛というものも、確実に心の中には消えずに存在しているものなんですよね。それは未練とかそういった意味ではなく。

──恋愛に限らず、出会った人すべてと交わした愛ということですよね。

そうそう。自分のおばあちゃんとの間にあった愛なんかもそうだと思うし。要は、愛というものは脈々と受け継がれていくものだから、いろんな紆余曲折があろうとも最後はこの“RED”の世界に帰ってくる。そんな希望が私にはあるんです。

──その思いを代弁してくれるような曲に、このタイミングで出会えたと。

はい。私は既存曲だけでベストを作るのが嫌だったから、「どうしても新曲を入れたい」と言わせてもらいました。そうしたら、「いつかJUJUに歌ってほしいと思っていた曲があるんだ」って、「あざみ」を聴かせてもらって。その瞬間、「うわ! 歌いたい」って心から思えたんです。16年活動してきて、ある程度年齢を重ねた今のタイミングだからこそ歌えた曲でもあると思います。