ナタリー PowerPush - ジェニファー
80年代ポップスに息吹を与えるハワイの歌姫
「悲しみがとまらない」のストーリーに1日怒ってた
──「悲しみがとまらない」(杏里)も、ジェニファーさんのボーカルの魅力を引き出す楽曲だと思います。アッパーで開放的なサウンドと“友達に彼氏を奪われる”という歌が1つになっている曲で、高い表現力が必要なので。
切ない曲が得意なのかもしれないですね。性格は明るいんだけど、ミュージカルでも死んじゃう役ばかりだし(笑)。一度死んで、生き返ったことはあるけどね。
──(笑)。
でも、「悲しみがとまらない」を初めて聴いたときは本当にイライラしました。この歌のストーリー、おかしくない? だって、友達が「あの人と別れて」って電話してくるんだよ? そんなことって、絶対よくない!って1日くらい怒ってましたから(笑)。
──ものすごい共感力ですね! EDMのテイストを取り入れたアレンジも新鮮でした。
原曲もアップビートで明るいサウンドなんだけど、せっかくカバーするんだから、新しいバージョンを作りたかったんですよね。杏里さんもきっと喜んでくれるんじゃないかな……。実は杏里さんとは、私が2~3歳くらいの頃から知り合いなんですよ。私の母と杏里さん、作詞家の吉元由美さんが友達で、すごく仲良しだったので。私は“アンディー”って呼んでたんですけど(笑)、彼女の曲を歌えたこともすごくうれしいですね。
日本には本当にいい曲がたくさんあることを知ってほしい
──そして最後は井上陽水さんの名曲「いっそ セレナーデ」。
これも素晴らしい曲です。最初は「いっそ」の意味がよくわからなかったんですけど。
──「いっそ」と「セレナーデ」の組み合わせは、日本人にとっても衝撃的でしたからね。意味というよりも、言葉の響きが斬新で。
そう、ホントに独特ですよね。歌うとすごく気持ちいいんですよ、この曲。赤ちゃんが眠るときみたいにウトウトしてきちゃう(笑)。きっと聴いてくれる人も、同じような感覚になってくれるんじゃないかなって。お酒を飲みながら聴くのもいいかも。
──本当に名曲ばかりだし、ジェニファーさんのシンガーとしてのセンスもしっかり感じられて。質の高いカバーアルバムになりましたね。
ありがとう! ぜひ、若い人たちにも聴いてほしいですね。アメリカの若い人は、意外と古い曲も知ってるんですよ。それはビヨンセ、クリスティーナ・アギレラ、マイケル・ブーブレみたいなトップアーティストが40年代、50年代の曲を取り上げて、新しい形にリメイクしてヒットさせてるからなんですよ。10代の子が彼らの曲を「カッコいい!」と思って聴いてると、お父さんお母さんが「その曲はね……」って教えてくれるっていう。そうやって音楽のヒストリーを知ることができるんですよね。
──そういう現象って、日本ではそれほど多くないかも。
それはもったいないですよねえ。だって、日本には本当にいい曲がたくさんあるから。このアルバムを聴いてもらって、「こんなにいい曲があったんだ」って知ってほしいですね。
──これからも日本のポップスのカバーは続けていきますか?
そうですね! 日本語の曲をもっともっと得意になりたいし、私自身も楽しみたいので。もちろんオリジナル曲も増やしていきたいですけど、カバーも並行して歌っていきたいと思ってます。
収録曲(カッコ内はオリジナルアーティスト)
- ガラス越しに消えた夏(鈴木雅之)
- パープルタウン ~You Ought Know By Now~(八神純子)
- シルエット・ロマンス(大橋純子)
- Friend(安全地帯)
- 駅(竹内まりや)
- 悲しみがとまらない(杏里)
- いっそ セレナーデ(井上陽水)
ジェニファー
アメリカ人の父と日本人の母を持つハワイ出身のシンガー。1児の母。小学生の頃から地元ハワイにてテレビやミュージカルに出演、14歳でアルバムリリースなど着々と歌手としてのキャリアを築く。2004年にニューヨークに移住し、R&Bシンガー・シャギーのヨーロッパツアーにコーラスとして同行。2006年公開の映画「フラガール」ではジェイク・シマブクロがプロデュースを手がけたメインテーマのボーカリストを務めた。2008年には「レ・ミゼラブル」「レント」といったミュージカルへ出演。欧陽菲菲「雨の御堂筋」を聴いたことをきっかけに昭和歌謡に傾倒するようになり、2013年7月、歌謡テイストを取り入れた1stシングル「25時のエアポート」をリリースした。その後「関ジャニの仕分け∞」「カラオケ☆バトル」などの人気番組にて歌声を披露したことをきっかけに幅広い層から話題を集める。2014年2月発売の「COVER 60's-70's」に続き、8月にはJ-POPのヒット曲の年代別カバー集「COVER 80's」を発表する。