ナタリー PowerPush - ジェニファー

80年代ポップスに息吹を与えるハワイの歌姫

歌の背景を知ることはとても大事

──2曲目は八神純子さんの代表曲「パープルタウン」。

「COVER 60's-70's」でも「みずいろの雨」をカバーさせてもらって、八神さんのラジオ番組にも呼んでいただいたんですよ。すぐに仲良くなって、まるで10年間くらい知ってるような雰囲気になりました(笑)。「みずいろの雨」もそうでしたけど、「パープルタウン」もめちゃくちゃ難しかったですねー。八神さんはどちらの曲もラクに歌ってるんですよね。私はどうしても厳しい顔になっちゃうんですけど(笑)。これからライブでも歌っていくので、少しずつ慣れてくると思うんですけどね。

ジェニファー

──サビの開放感が気持ちいいですよね、この曲。

キャッチーですよね。私の娘もサビのコーラスを口ずさんでますよ(笑)。

──続いては大橋純子さんの歌唱で知られる「シルエット・ロマンス」。

この曲は2、3年前から大好きで、カラオケとかでもずっと歌ってたんですよ。こだわったのは、アレンジ。原曲とはかなりイメージが違っていて、最初は「なんの曲だろう?」という感じだと思うんですけど、すごく気に入ってますね。

──こういう情熱的なラブソングも、ジェニファーさんにぴったりだと思います。

ありがとうございます。レコーディングで歌ってるときも、すごく熱い気持ちになりました(笑)。

──日本語の歌詞の解釈も、さらに深まっているのでは?

まだまだ勉強中ですけどね。日本語は得意ではないから、すぐに100%は理解できないですよね。だから、歌詞の意味を全部調べるようにしてるんです。そうしないと、細かいニュアンスがつかめないので……。例えば「COVER 60's-70's」で歌わせてもらった「ビューティフル・ヨコハマ」(平山三紀)に「あなたのために この髪だって 黒く染めたの 安心してね」という歌詞があるんですけど、どうして黒く染めるのか全然わからなかったんですね。

──たぶん「これからはしっかりした大人になる」みたいな意味ですよね?

そういうふうに教えてもらったんですけど、まだ100%理解できてないかも(笑)。頭ではわかっていても、感覚としてはわからないというか。でも、歌の背景を知ることはとても大事。そうじゃないと、歌っているときもずっと“?”になっちゃうからね。歌の内容がしっかり理解できれば、どういうふうに声を出せばいいかが決まってくるんですよ。「ここはウイスパーで歌ったほうがいいな」とか。日本語が得意じゃないからこそしっかり考えようとするし、自分にとっては逆にプラスになってるかもしれないですね。

──特にJ-POPの場合、歌詞の意味だったり、そこに込められた思いが重要ですからね。

私も普段から歌詞を重視してるんですよね。ミュージカルをやっているときも、ストーリーや歌詞の意味をすごく考えるし。ミュージカルというのは、舞台が終わった瞬間にお客さんが「人生が変わった!」と感じるくらいの感動を与えなくちゃいけないと思っていて。そこで培ったことは、アーティストとしての活動にも生かされてますね。

安全地帯を抱き締めてあげたくなる「Friend」

──4曲目は安全地帯の「Friend」。

ジェニファー

最初に聴いた安全地帯の曲は「ワインレッドの心」だったんですけど、あえてほかの曲を選んでみようと思って。「Friend」はとてもシンプルで、余計なものがいらない曲だと思うんですよね。だからこそチャレンジしたかったし、私らしく歌えるんじゃないかなって。実際に歌うと、さらに曲のよさがわかりましたね。この曲の主人公は本当にかわいそうで、安全地帯の皆さんを抱き締めてあげたくなるんだけど(笑)、同じような状況の人はいっぱいいると思うんです。そういう人はぜひ私の「Friend」を聴いて、泣いてほしいですね。

──竹内まりやさんの「駅」も女性からの支持が高い曲ですね。

ホントに皆さん、この曲が大好きですよね。「駅」をカバーするんだって言うと、皆さんに「いいねー!」って言ってもらえるんです。それだけたくさんの人の思い出になってるんだなって。

──「別れた恋人を駅で見かける」というシチュエーションの歌ですが、カバーするにあたってジェニファーさんが意識したことは?

そうですね……。私はダンナさんと16歳のときから付き合っていて、「元カレを思い出す」みたいなことはほとんど経験したことがないんです。でも今は日本での活動が増えていて、離れ離れでいることも多くて。missing(会えなくて寂しい)な気持ちのときって、ふと「今、彼が近くにいたようが気がする」って思うこともあるんですよ。そういう感情を膨らませて、ミュージカルのキャラクターを作っていくような感覚で歌いましたね。そうすると、普段とは違う声が出てくるんです。ニコニコしながら歌うことで、逆に切なさが感じられることもあるし。

──すごく表情が豊かですからね、ジェニファーさんのボーカルは。

曲によって全然声が違うんですよ。それは自分でも面白いなって思いますね。

ミニアルバム「COVER 80's」 / 2014年8月27日発売 / 1944円 / 日本コロムビア / COCP-38566
「COVER 80's」
収録曲(カッコ内はオリジナルアーティスト)
  1. ガラス越しに消えた夏(鈴木雅之)
  2. パープルタウン ~You Ought Know By Now~(八神純子)
  3. シルエット・ロマンス(大橋純子)
  4. Friend(安全地帯)
  5. 駅(竹内まりや)
  6. 悲しみがとまらない(杏里)
  7. いっそ セレナーデ(井上陽水)
ジェニファー
ジェニファー

アメリカ人の父と日本人の母を持つハワイ出身のシンガー。1児の母。小学生の頃から地元ハワイにてテレビやミュージカルに出演、14歳でアルバムリリースなど着々と歌手としてのキャリアを築く。2004年にニューヨークに移住し、R&Bシンガー・シャギーのヨーロッパツアーにコーラスとして同行。2006年公開の映画「フラガール」ではジェイク・シマブクロがプロデュースを手がけたメインテーマのボーカリストを務めた。2008年には「レ・ミゼラブル」「レント」といったミュージカルへ出演。欧陽菲菲「雨の御堂筋」を聴いたことをきっかけに昭和歌謡に傾倒するようになり、2013年7月、歌謡テイストを取り入れた1stシングル「25時のエアポート」をリリースした。その後「関ジャニの仕分け∞」「カラオケ☆バトル」などの人気番組にて歌声を披露したことをきっかけに幅広い層から話題を集める。2014年2月発売の「COVER 60's-70's」に続き、8月にはJ-POPのヒット曲の年代別カバー集「COVER 80's」を発表する。