ナタリー PowerPush - ジェニファー

80年代ポップスに息吹を与えるハワイの歌姫

昨年7月にシングル「25時のエアポート」でデビュー。昭和歌謡のテイストを取り入れた楽曲と情緒豊かなボーカルが注目を集めたジェニファーが、1980年代のヒット曲をカバーした「COVER 80's」をリリースする。ライブ活動と並行してテレビ朝日系「関ジャニの仕分け∞」、テレビ東京「カラオケ☆バトル」などに出演、歌のうまさと開放的なキャラクターをアピールしてきた彼女。1960~70年代の歌謡曲をテーマにした「COVER 60's-70's」に続く本作でも、ミュージカル仕込みの表現力、楽曲に対する深い理解というシンガーとしての奥深い才能をたっぷりと披露している。

今回ナタリーではジェニファーにインタビュー。この1年の状況の変化、日本のポップスの魅力などについて語ってもらった。

取材・文 / 森朋之 撮影 / 小坂茂雄

「関ジャニの仕分け∞」「カラオケ☆バトル」に出演して

──ナタリーに登場してもらうのは、デビュー曲「25時のエアポート」のリリースタイミング以来(参照:ジェニファー「25時のエアポート」インタビュー)ですね。

ちょうど1年ぶりですね。この1年すごく早かったけど、すごく長かった感じもします。リリースもたくさんさせてもらったし、3年くらい経った気もする(笑)。

ジェニファー

──2ndシングル「あの日のHoly Night」、1960~70年代の歌謡曲をテーマにした「COVER 60's-70's」をリリースし、ライブ活動もさらに本格化。「関ジャニの仕分け∞」「カラオケ☆バトル」など、テレビへの出演も話題を集めました。

「関ジャニの仕分け∞」には3回出させてもらったんですけど、2回目のときは3曲歌うことができて。最後にMISIAさんの「逢いたくていま」を歌ったんですが、アーティストとしての自分がわかった気がしたんですよね。歌ってるときもすごく気持ちよかったし、お客さんも泣いてくれて。「これが私のやるべきことだな」というのが、1つ見つかったというか。

──出演後の反響はどうでした?

すごかった! Twitterとかブログのアクセス数もすごいことになっていて、エンドレスでコメントが届いたんですよ。しかも、私にとってうれしいコメントばかりで。「え、ホントに? 何かの間違いじゃない?」と思うくらいの反響でしたね。そのときに「私にもチャンスがあるかも」と思えたし、そのあとのキャンペーンでもお客さんから「ジェニファーさん、テレビ観ました!」って言ってもらえて。あの経験はとても大きかったですね。

──「関ジャニの仕分け∞」では、平井堅さんの「瞳をとじて」、八神純子さんの「みずいろの雨」なども歌唱していましたし、カバーアルバムのリリースも含めて日本のポップスにかなり詳しくなったのでは?

そうですね。日本の曲、大好きです! 4年前にアメリカから日本に来たときは、ミュージカルの舞台がメインだったんですよ。日本の音楽のことはあまり知らなかったから、まず歌謡曲の勉強から始めたんですよね。50年代から始めて、60年代、70年代と進んでいって、いろんな曲を聴いて。本当にいい曲がたくさんあるんですけど、特に80年代はすごいですね。Too much いい曲(笑)。個人的にはバラードにグッときちゃうことが多いです。

YouTubeで日本のヒット曲を研究

──今回のミニアルバム「COVER 80's」はタイトル通り、80年代の楽曲をテーマにした作品ですね。選曲はどんなふうに進めていったんですか?

ディレクターさん、プロデューサーさん、宣伝の方、私とマネージャーさんがそれぞれリストを出して、30曲くらいに絞ったあと、ワンコーラスずつ歌ってみて「どの曲が合うだろう?」ってミーティングを重ねて。その間もずっとYouTubeで研究してたんですよ。当時のベストテン番組をチェックして、どんなアーティストが活躍していたのか、どんな曲がヒットしたのかを調べて……。だから私、同世代の日本人よりも詳しいと思いますよ(笑)。

ジェニファー

──確かに(笑)。

制作も本当に楽しかった。チームの雰囲気もいいし、レコーディング中もずっとニコニコしてましたねえ。もちろん大変なこともあったけど、周りは明るい人ばかりだから「どうしようか?」って笑いながら話してるんですよ(笑)。音楽的な部分では、ストレスはまったくなかったです。

──きっとジェニファーさんの明るいキャラクターが伝わってるんだと思います。では「COVER 80's」の収録曲について聞かせてください。まずリード曲の「ガラス越しに消えた夏」(鈴木雅之)。

この曲、本当に素敵! 初めて聴いたときからものすごく惹かれたんですよ。鈴木さんが歌い出した瞬間に「あ、この曲だな」ってすぐにわかったの。どうしてかわからないんだけど、ディープなつながりを感じたというか……。この曲って、86年のリリースなんですね。私も86年生まれだから、何か関係があるのかも。

──運命的ですね(笑)。鈴木雅之さん、作曲者の大澤誉志幸さんはソウルミュージック、R&Bをルーツに持っているので、そこも共感できるポイントなのかも。

うん、そうですね。私の声にもすごく合ってると思うんですよ。レコーディングも3テイクくらいでOKだったし、ライブで初めて歌ったときもすごく気持ちよくて。あと、「懐かしい」って言われることも多いですね。私としては“懐かしい”っていう感じはまったくないんだけど。

ミニアルバム「COVER 80's」 / 2014年8月27日発売 / 1944円 / 日本コロムビア / COCP-38566
「COVER 80's」
収録曲(カッコ内はオリジナルアーティスト)
  1. ガラス越しに消えた夏(鈴木雅之)
  2. パープルタウン ~You Ought Know By Now~(八神純子)
  3. シルエット・ロマンス(大橋純子)
  4. Friend(安全地帯)
  5. 駅(竹内まりや)
  6. 悲しみがとまらない(杏里)
  7. いっそ セレナーデ(井上陽水)
ジェニファー
ジェニファー

アメリカ人の父と日本人の母を持つハワイ出身のシンガー。1児の母。小学生の頃から地元ハワイにてテレビやミュージカルに出演、14歳でアルバムリリースなど着々と歌手としてのキャリアを築く。2004年にニューヨークに移住し、R&Bシンガー・シャギーのヨーロッパツアーにコーラスとして同行。2006年公開の映画「フラガール」ではジェイク・シマブクロがプロデュースを手がけたメインテーマのボーカリストを務めた。2008年には「レ・ミゼラブル」「レント」といったミュージカルへ出演。欧陽菲菲「雨の御堂筋」を聴いたことをきっかけに昭和歌謡に傾倒するようになり、2013年7月、歌謡テイストを取り入れた1stシングル「25時のエアポート」をリリースした。その後「関ジャニの仕分け∞」「カラオケ☆バトル」などの人気番組にて歌声を披露したことをきっかけに幅広い層から話題を集める。2014年2月発売の「COVER 60's-70's」に続き、8月にはJ-POPのヒット曲の年代別カバー集「COVER 80's」を発表する。