ナタリー PowerPush - ジェニファー

歌謡曲に私のフレイバーを野心と情熱に満ちたスピリッツ

音楽活動を続けることへの疑問、そして

──17歳のときにニューヨークに渡って、シャギーのツアーに参加したり、映画「フラガール」の挿入歌を歌ったりと確実にキャリアを重ねていたにも関わらず、一度音楽活動から離れた時期もあったとか。

ジェニファー

19歳のときですね。その頃は日本に来ていて、とても忙しくしてたんです。ただ、子供のときからずっと歌ってきたわけじゃない? 20歳が近付いてきて、「私は本当に音楽がやりたいのかな?」って考えたんですよね。で、そのときは「やっぱりイヤだ。辞めよう」って思ったの。子供時代にできなかったこともいっぱいあったし、「学校に行きたい」とか「メイクアーティストになりたい」っていう気持ちもあって。ずっと歌だけだったからね。やっぱり一度は来るよ、そういうときが。

──自分の人生は歌だけではないはずだ、と。

そう。で、ハワイでレストランのウエイトレスをしてたんです。すごく普通の生活なんだけど、それが本当に楽しくて。例えば友達から「映画に行かない?」って誘われても、すぐに行けるわけじゃないですか。それまでは「今日本にいるんだ」って断る感じだったから(笑)。でも、そんなときに「レント」というミュージカルの出演オファーをもらって。10歳のときに初めて観たときから、「いつか絶対に“ミミ”の役をやりたい」って思ってたんですよね。実際に何度もオーディションを受けたし。

──念願のヒロイン役のオファーですが、すぐに「エンタテインメントの世界に戻ろう」と思いました?

最初は「これ1回だけ。終わったらハワイに戻って、普通の仕事をしよう」と思ってたんですよ。でも実際に舞台に立ったら、「やっぱりこれが一番いいな」って。「レント」のあとも何本かオファーをもらったし、音楽の世界に戻ろうと。そのときには日本が大好きになっていたし、日本語で歌うことにもすごく興味を持ってたんですよね。それは私にとって、新しさがあるんです。英語の歌は、聴けばすべて意味がわかる。でも、日本語の場合は1つひとつのフレーズの意味を調べないとわからないんです。私、漢字が読めないからね。

──え、そうなんですか? 話すのはほぼ完璧なのに。

「品川」くらいならわかるけど(笑)。日本語の歌を歌うときは、まず、歌詞を全部ローマ字に直して、事務所の人たちやプロデューサー、ママに聞いたりしながらわからない言葉を調べていくんです。「25時のエアポート」もそうでした。すべての歌詞を自分で調べて、意味を理解してからじゃないと、気持ちを込めて歌えないので。大変だけど、日本語で歌うのは本当に好きですね。

──難しさはないですか? 例えば発音とか。

こうやってしゃべるほうが難しいです。歌ってるときは、あんまり外人発音にならないみたいで。顔は外人だけどね(笑)。

私は自分の人生をコントロールできる

ジェニファー

──「25時のエアポート」以外の収録曲についても聴かせてください。まず「Song For Your Love」。とても情熱的なラブソングですね。

「Song For Your Love」は(ソロシンガーとして)最初にいただいた曲なんです。これはまさに私のライフストーリー、私の人生をそのまま歌ってるんですよね。歌詞を書いてくれた吉元由美さんは、3歳の頃から“東京のママ”みたいな存在なんです。私のママと親友同士だったから、小さいときからすごく親しくしてもらっていて。

──ジェニファーさんの人生をすぐ近くで見ていた方なんですね。

この曲については何も話してなかったんだけど、初めて歌詞をもらったときに涙が出てきて。例えばセカンドバースの最初の歌詞……歌わないとわかんないな。(実際にメロディを歌いながら)「劇場の鏡の前に あなたの写真を立てかけるわ」というところも、本当のことなの。舞台に立つとき、楽屋の鏡の周りに家族の写真をバーッと飾ってたから。

──ジェニファーさんにとってこの曲は、家族に対する愛なんですね。

家族がいなかったら、今私はここにいないですからね。私にとっては、一番大事な曲。自分の心とつながってる曲ですね。

──3曲目の「You Can Change Your Destiny」も、ジェニファーさんの人生と重なってるのでは? まさに自分の運命を自分で変えてきたわけだから。

そうですね。音楽活動を再開して妊娠したとき、「音楽活動を続けることと子供を育てることの両立は無理」って何度も言われたんです。でも、私は自分の人生をコントロールできると思っていたし、無理って言われても絶対にできると思っていたので。本当にピッタリかもしれないですね、このタイトルは。

夢は東京ドーム3DAYS満席!

──このシングルによって、ソロシンガーとしての活動も本格的にスタート。「やっと始まる」という感じですか?

時間はかかりましたけどね(笑)。やっと“Ready”な感じかな。

──準備が整った、と。

でも、このタイミングがベストだったと思うんですよ。例えば16歳のときにデビューしてたら、子供すぎてうまくいってなかったかもしれないなって。昭和歌謡にしても、今の年齢だからよさがわかるようになったんだと思うし。うん、よかったですね!

──本当にポジティブですね。過去にはまったく後悔がない?

よくないこともあったけど、それも経験だしね。それがなかったら、私はこういう人間になってなかったと思うんですよ。だから“No Regrets”です。なんていうか、やっとピッタリ来るものを見つけたっていう感じなんですよね、「25時のエアポート」は。ずっと探してましたからね、自分に一番合うものを。20年かかっちゃったけど、今はすごく楽しいです。自分のライブも、こういう取材も、本当にうれしくてしょうがない(笑)。

──ソロシンガーとしての音楽性は今後、広がっていきそうですか?

どうだろう? 今はジェニファーバージョンの歌謡曲がすごく気に入っているから、しばらくはこういう感じかな。もちろん「このジャンルだけ」っていうことではないので、いつも気持ちはオープンですけどね。いろいろなことを見て、考えながら、自分に合ったものを歌っていけたらいいなって思ってます。

──最後にソロシンガーとしての将来的なビジョンを教えてもらえますか?

将来の夢は、東京ドームでライブ! 3DAYS、全部満席!

──すごい!

小さいときから、ずっと「東京ドームでコンサートやりたい」って思ってたんですよ。東京ドームでライブをやるときは、絶対に来てね。「ほら、自分の運命は変えられるでしょ?」って言うから(笑)。

ジェニファー
1stシングル「25時のエアポート」/ 2013年7月24日発売 / 日本コロムビア
初回限定盤 [CD+DVD] 1600円 / COCZ-774~5
通常盤 [CD] 1300円 / COCA-16739
初回限定盤CD収録曲
  1. 25時のエアポート
  2. Song For Your Love
  3. 25時のエアポート(instrumental)
  4. Song For Your Love(instrumental)
初回限定盤DVD収録内容
  • 「25時のエアポート」ミュージックビデオ
  • ジェニファーデビューまでの軌跡(ショートドキュメンタリー映像)
通常盤CD収録曲
  1. 25時のエアポート
  2. Song For Your Love
  3. You Can Change Your Destiny
  4. 25時のエアポート(instrumental)
  5. Song For Your Love(instrumental)
ジェニファー
ジェニファー

アメリカ人の父と日本人の母を持つハワイ出身のシンガー。1児の母。小学生の頃から地元ハワイにてテレビやミュージカルに出演、14歳でアルバムリリースなど着々と歌手としてのキャリアを築く。2004年にニューヨークに移住し、R&Bシンガー・シャギーのヨーロッパツアーにコーラスとして同行。2006年公開の映画「フラガール」ではジェイク・シマブクロがプロデュースを手がけたメインテーマのボーカリストを務めた。2008年には「レ・ミゼラブル」「レント」といったミュージカルへ出演。欧陽菲菲「雨の御堂筋」を聴いたことをきっかけに昭和歌謡に傾倒するようになり、2013年7月24日、満を持して歌謡テイストを取り入れた1stシングル「25時のエアポート」をリリースした。